そりゃ日本が嫌いになるわ: 韓国の歴史教育で教えないコト

 

人が歴史をつくり、歴史が人をつくる。
現在の韓国人の歴史や日本に対する認識を形成したのは、何と言っても歴史教育が大きい。
ということで高校用の歴史教科書「韓国の歴史 (明石書店)」に載っている日本統治時代(1910年~1945年)の記述をチラリと見てみよう。

「韓民族に対する政治的弾圧と経済的搾取をほしいままに行った。」

「日帝の憲兵警察による武断植民統治は世界にその類例のないものだった(中略)全国各地に憲兵警察が配置され、わが民族は武力によって生存までも脅威にさらされた。」

「わが民族はこのような日帝の憲兵警察統治によって言論、集会、出版、結社の自由を剥奪され、民族指導者は逮捕、投獄、虐殺された。」

これは本当にチラリ、タイタニック号を沈めた氷山の一角に過ぎない。
統治時代の朝鮮半島について説明する文章を読むと、強大な力で弾圧していた日本と、一方的に苦しめられていた韓国の姿が「これでもかっ」と書いてある。

もし自分が韓国に生まれて小中高校でこんな歴史教育を受けていたら、そりゃ日本が嫌いになるわ。
そしてこの時代に生きた韓国人の恨みを晴らすことが、現代の自分たちの義務のように感じるはずだ。
韓国の歴史教科書は特に思春期の子どもが読んだら、そう思うような内容になっているから、その感情を基準にすると、いまの日本政府の主張する「韓国の国際法違反」がかすんで見える。
「もっと大事で、実現しなければいいけない正義がある!」なんて思うようになる。

 

釜山で海水浴を楽しむ人たち
「生存までも脅威にさらされた」?

 

国際政治学者の舛添要一氏が戦後最悪といわれるほど悪化した日韓関係の背景に、歴史解釈についての大きな認識のギャップがあると「JB press」の記事で指摘する。(2021.10.30)

【舛添直言】日本と韓国、関係悪化状態を放置したままでよいのか 

関係悪化の最大原因である徴用工訴訟問題では、いまの様子だと日韓ともに歩み寄りは期待できないから、国際司法裁判所(ICJ)で決着させようと舛添氏は主張。
ICJで判断してもらえば日本が勝訴する確率は高いから、これは政府が考えていたオプションでもある。
ただ最終的な結果が出るまで時間とエネルギーが必要になるし、そもそも韓国がICJに応じる可能性は低い(つまり負ける)ということで、この案は保留になっていた。
国際司法裁判所でケリを着けるのもいいけど、韓国政府が応じないから無理だと思う。

まあそれはいいとして、舛添氏がなんど韓国側に伝えても、いつも無視されることがあると苦言を呈している。
それは統治時代の在日朝鮮人に、日本人と同じような選挙権や被選挙権があったことだ。

いろんな機会に論文を発表し、韓国の大学でも講義をしてきたが、日本研究に携わっている韓国の学者ですら無視し続けている。つまり、「日本は朝鮮半島で過酷な植民地支配を実行した」という歴史観と少しでも外れるものは排除するという姿勢である。

 

「韓民族に対する政治的弾圧と経済的搾取をほしいままに行った。」
「全国各地に憲兵警察が配置され、わが民族は武力によって生存までも脅威にさらされた。」

こうしたことに加えて日本は韓民族を逮捕、投獄、虐殺したという歴史が、韓国では完全に正しい事実になっている。
そんな暗黒と、選挙で投票できたり立候補できたという光は矛盾するから、都合の悪い後者は無視・排除するしかない。
異民族による支配は屈辱的だから、日本の統治を苦々しく思うのは当然だとしても、あったことをなかったことにしてはいけない。
国民が政治に参加する権利はとても重要で、たとえばインドを支配していたイギリスはそんな権利を認めなかった。
日本は「世界にその類例のない」ような残酷なことをしていたと繰り返し教えていて、それが基本的な歴史観や日本への認識になっているから、それと少しでも外れるものは認めないし排除する。
でも事実を否定することはできないから、なんど指摘されても無視する。

 

光を隠す一方的な歴史教育によって、「日本=加害者、韓国=被害者」という認識が形成されると、「あの時代の恨みを晴らしたい」という人の願いに、無条件で共感してしまう気持ちもわかないでもない。

だから中央日報のこういう記事が支持される。(2021.11.02)

李容洙さん「慰安婦被害者の恨を解きたい」

慰安婦問題は日韓の間で「最終的な解決」をすでに確認していて、いまから合意内容を動かすことは絶対にできない。
だから、その範囲内で恨を解いてくれたらいい。
…という意見が「冷たい。間違っている」と、韓国の歴史教育を受けると思ってしまうのだろう。

 

 

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5 件のコメント

  • とても共感しています.
    私は、いわゆる軍事独裁時代に高校を卒業しましたが、その頃も教科書は反日性向でした。
    ところがその時代から数十年が経った今日、むしろ韓国の歴史教科書はその時代よりずっとひどい反日教科書になったというのが逆説的です。昔は歴史教科書に慰安婦問題はなかったのですが、今は慰安婦問題が大変な話題になっていて、歴史教科書で日帝時代に対する部分がはるかに大きくなりました。これは韓国が歴史に逆行しているという明らかな証拠です。自由な貿易と協力関係で、世界はお互いにもっと近くなっているのに、韓国だけは唯一に民族主義的性向で固まっているような状況です。
    特に日本とはもっと緊密に関係を維持することが韓国の発展のためにも望ましいが、韓国社会は、韓国人に日本を付き合えない悪党だという認識を植え付けています。韓国人たちはすでに76年前に敗亡した帝国主義日本と自由民主主義国家として世界の先進国となった現在の日本を区別できず混同しています。
    歴史教科書が常に日帝時代の誤った記憶を教えるため、韓国人は今もその時代(1910-1945)を生きています。

  • 私としては、あんな教育を受けても日本を好きな韓国人が多いということがちょっと不思議です。
    政治と文化を切り離して考える人が韓国にはたくさんいるのでしょう。

  • かつて1980年代以降の日本では、日教組と共産党を中心とした「左翼思想教育」がはびこっていました。そのような偏向教育から日本人の目が冷めたのは、ソビエト連邦の失敗・崩壊を目の当たりにしたことが大きい。そのことで、国民の半分は目を覚ましました。(外国の大失敗を間近で目撃できたことは日本にとって運がよかったと思います。当時の中国ではまだ日本ほどには情報がオープンになっていなかった、その違いは大きいです。)
    左翼思想に対する失望感は、その後の民主党政権の樹立と失敗によって確立しました。

    そんな教育をしている国が、今どき、先進国で他にありますか? でも、その国の体制と現状に対する否定的な評価を冷静に下して、自ら反省するのでない限り、平時には、政治・社会と教育のあり方が抜本的に変わることはないでしょう。
    現状を続けることが韓国の選択であるなら、それ相応に日本は対処するだけのことです。

  • 理性で考える韓国人も多いのです。しかし基本的に幼い頃から注入式の反日教育を受けた人たちが多いので、日本を正しく知り日本を友好的に考える理性的な韓国人が住むには韓国は危険な所です。
    今日も全羅北道のあるゴルフ場では、来年から日本製の自動車は立ち入りを禁止するとのニュースが報道されました。全羅道は韓国の代表的な左派地域です。笑わせるのは、このゴルフ場で使うカートが日本産だということです。自分たちは日本製のカートでゴルフ場を運営してお金を稼ぎながら、日本車は出入りするなというばかげたまねをするのが恥ずかしいです。

  • 知人の韓国人は、日本のネットで見る韓国人とまったく違います。
    「日本のものは何でもダメ!」ではなくて、良いものは良い、悪いものは悪いと理性的に考え判断しています。
    そういう人は、一部の愛国主義者を「彼らは病気です」と非難しますね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。