季節が変わって、秋になると見かけるようになるのが松ぼっくり。
まえに知人のアメリカ人の部屋でこれが置いてあったから、話を聞くと、「アメリカで松ぼっくりはクリスマスの飾りでよく使うから、ボクにはそのイメージがあるんだ」てなことをいう。
それでまだ11月だけど、落ちてた松ぼっくりを何となく拾って、それとなく部屋に飾っているらしい。
クリスマスリース
画像:Jonathunder
松ぼっくりで聖夜を連想するところが違うな~、と思いつつ話をしていると、彼からこんな質問を受けた。
「“松ぼっくり”ってどんな意味かしってる?松は「pine」(パイン)だろうけど、“ぼっくり”が分からない」
松ぼっくりは松ぼっくり、以上。
日本に生まれてから今まで、そんなことには1ミリの疑問も感じたことがなかったし、それが分からなくて困ったこともない。あえて言えばナウ。
日本語を学んでいる外国人はときどき細かいことに気づく。
栗と関係あるかも、と思ってスマホで松ぼっくりの由来を調べてみたら、ビックリしたでござる。
ではここでクエスチョン。
インドネシアにある「キンタマーニ村(Desa Kintamani)」をヒントに、「ぼっくり」の意味を考えてくれたまえ。
キンタマーニ村にあるキンタマーニ湖
画像:松岡明芳
松ぼっくりは、実は「松ふぐり」が転じてできた言葉だった。
「ふぐり」とは睾丸や陰嚢、小学生のレベルで言うなら「キン〇マ袋」のこと。
ビジュアルが「キン〇マ袋」のようだったから、昔の日本人は「松ふぐり」と呼んでいて、それが現在の「松ぼっくり」という言葉に変化した。
松の木にぶら下がってる様子が、タ〇袋のように見えたのだろう。
それで松ぼっくりを漢字で「松陰嚢」(松ふぐり)と書くこともある。
関東圏で「松ぼっくり」と呼ばれていたのが江戸時代に共通語となって、全国でも一般的にそう呼ばれるようになったらしい。
松ぼっくりは秋の季語になっているから、正岡子規はこんな句を詠んだ。
「涼しさや ほたりほたりと 松ふぐり」
そんな話を聞いたアメリカ人も、「中にタネ(種子)が入っているからそうなったんだな!」と笑って納得。
でもそのあと、「これからクリスマス・デコレーションで松ぼっくりを見たら、きっとその話が頭に浮かんでくる。なんかイヤなことを聞いたな」とか言いやがるけど誰がしるかと。
つってもボクも、クリスマス・リースのロマンティックさが壊滅するかも。
で、日本人が「パイン」と聞いたなら、コレを思い浮かべるのでは?
画像:Fir0002
パイナップルは「pine(松)」と「apple」をくっつけてできた言葉だ。
この場合のアップルは、リンゴではなくて果実全般を指す。
順序としては、ヨーロッパにはフルーツよりも先に松の木があって、英語で松ぼっくりを「pineapple」(松の果実)と呼んでいた。
それで15世紀から始まる大航海時代に、新大陸のおそらくブラジルで、松ぼっくりによく似たフルーツを見つけ、それを「パイナップル」と呼ぶようになった。
そして名前を乗っ取られた、人間ならキレて訴訟必至の松ぼっくりさんは「pinecone」と呼ばれるようになる。
ちなみに pineapple には「手榴弾」という意味もある。
パイナップルもパインコーンも、松ぼっくりの英語にシモの意味はないから、安心してクリスマス飾りに使うことができそう。
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> そして名前を乗っ取られた、人間ならキレて訴訟必至の松ぼっくりさんは「pinecone」と呼ばれるようになる。
あれ?おかしいな。確か、自分が北米に滞在していた時は「cone-pine」って呼んでいたような記憶が・・・。
と思ってネットで調べてみたところ、conifer(針葉樹)pine(松の実) のことを略して「cone-pine」と呼ぶこともあるらしいですね。