後楽園の語源でトップに必要な心掛け、「先憂後楽」の意味

 

前回、「フラグ」を立てまくって、国民を疲れさせている韓国・文大統領の”困った活躍”について書いた。
新型コロナウイルスの感染拡大について、「近く終息するだろう」と文大統領が言ったあとから患者は激増。
また文大統領が「韓国は防疫の模範事例として(海外から)評価される」とのたまった次の日、首都ソウルで過去最大の感染者が確認されて、いま韓国社会はパニック状態だ。

韓国では首都圏に人が集中していて、人口のおよそ半分(2600万人)が暮らしている。
そんな密集地帯で、この3日間で100人の感染者がでたことから、多くの国民が不吉な未来を感じている。

朝鮮日報の記事(2020/03/12)

首都圏全域で第3次衝撃(third wave)が本格化するのではないかという懸念が出ている。(中略)今度は首都圏を中心に大流行が始まるのでは、という不安が高まっているものだ。

韓国の首都圏感染者数が十日間で2倍に…「第3次衝撃に先制対応すべき時」

トップが逆神だと国民は辛い。

 

それにしても、文大統領の「近く終息するだろう」という”勝利宣言”は本当にまずかった。
大きな失敗は良い反面教師になるから、今回はこれを参考にさせてもらう。
この発言で国民や医療関係者、行政の役人など国全体が安心してしまい、現状を正しく把握することができなくなって、そのあとの爆発的な感染拡大につながった。
これは韓国の各メディアが指摘していることだ。

 

リーダーならこの逆をするべき。
国民が安心したあとでも、大統領や政府の人間は緊張感を持ち続けて、根念入りに観察をつづけて「最後の最後に安心する人」になるべきだったのだ。

そのあたりのことが朝鮮日報の社説(2020/03/11)に書いてある。

大統領と防疫のコントロールセンターが軽々しく楽観論を口にすれば、防疫戦線の緊張感はたちまち崩壊してしまう。一般国民が警戒を緩めたとしても、政府は「そのようなときではない」として手綱を締めなければならない。

文大統領「韓国は防疫の模範」と語った翌日にソウルで集団感染、少しの間でも自制を

范 仲淹

 

「安心するのは国民のあと」という政治家やリーダーの心掛けを中国では「先憂後楽」という。

これは北宋の政治家・范 仲淹(はん ちゅうえん:989年 – 1052年)の言葉で、彼は「士先二天下之憂一而憂、後二天下之楽一而楽」(天下の憂えに先んじて憂え、天下の楽しみに後(おく)れて楽しむ)という言葉を残す。

国の危機や安危については誰よりも先に心配して、自分はみんなのあとで楽しむといった意味になる。
政治家はいつも国民の安全を考えていないといけないし、社長なら会社や社員に対してこういう態度が必要だ。
日本の野球場や日本庭園、ホテルの名称で使われる「後楽園」は先憂後楽が語源になっている。

 

文大統領がしたのはこの反対だった。
現実を無視したか把握できていなかったのか、希望的観測にもとづいて楽観論を軽々しく口にするから、「少しの間でも自制を」と国民の側から言われてしまう。
「近く終息するだろう」と言ったあとにカオスがはじまった。
トップが安心するのは最後でいい。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。