【日本のマザーテレサ】 光明皇后の慈悲「心千人施浴伝説」

 

きょう11月11日は言わず最上もがの、ポッキー&プリッツの日。

で世界に目を向けると、第一次世界大戦の終わりを記念する日。
1918年11月11日にこの大戦が終結したことにちなんで、ヨーロッパ各国で記念式典が行われる。
アメリカでこの日は「退役軍人の日 (Veteran’s Day)」という。

そして「世界の中の日本」に注目してみると、コミュニケーション・ストラテジストの岡本 純子氏が「PRESIDENT Online」の記事で日本をこんな国だと指摘。(2019/04/16)

東大祝辞の核心「日本は世界一冷たい国」

「“弱者を見殺しにする日本”の冷酷すぎるデータ」(ひどい表現だな)として、記事ではイギリスのチャリティー団体(Charities Aid Foundation)が、人助け、寄付、ボランティアの3項目について世界中の国を評価しランキング化したデータを示している。
2018年の調査で日本は144カ国中、なんと128位で、「Helping a stranger(他人を助けたか)」の項目は142位だった。
ほかにも「Donating money(寄付をしたか)」は99位、「Volunteering time(ボランティアをしたか)」が56位という結果。
それで岡本氏は「恐ろしいぐらいに他人に無関心で、冷淡な国民ということになる」と書く。

日本が「世界一冷たい国」、「弱者を見殺しにする」という指摘には到底賛成できないんだが、でもそういう見方があるようだ。
きょう11月11日は「いい日・いい日」で介護の日なので、それと真逆の日本人を紹介しようと思うのだ。
あえて言おう、彼女は日本のマザーテレサであると。

 

 

この女性は奈良の大仏を建てた聖武天皇の皇后で、光明皇后(こうみょうこうごう:701年 – 760年)という。夫の聖武天皇と同じく、仏教を深く信仰していた光明皇后には圧倒的な慈悲の心があって、貧しい人や孤児を救うための「悲田院」(ひでんいん)や、病人や貧民に無料で薬草を提供する「施薬院」(やくいん)を設置した。
光明皇后が貧民の看護を行ったという話もある。
日本の社会福祉はここから始まったと言っていい。

おさらいとして、高校日本史での押さえを確認しましょ。

藤原不比等の子。聖武天皇の皇后。長屋王の変の直後、人臣で初めて皇后となる。749年、聖武天皇退位後は皇太后。仏教の信仰が厚く、悲田院・施薬院を設け、孤児や病人を救った。

「日本史用語集 (山川出版社)」

光明皇后の署名

 

光明皇后がおこなった善行の中でも有名なのが「千人施浴伝説」だ。

ある日、施薬院で千人の垢(あか)を洗い落とそうと誓いを立てた光明皇后は、物乞いや病人の体を一生懸命に洗っていく。
そして最後の千人目に、ヤツがやってきた。
髪は抜け落ちて、見るからに重症のライ病(ハンセン病)患者の老人が現れる。
その外見や体から放たれる臭気に驚いたかもしれないが、皇后は老人の体を洗うことにした。
するとソイツは「膿(うみ)をあなたの口で吸い取ってほしい」と皇后に対して、空前絶後の無茶ぶりをする。
でもそれに応じた光明皇后が言われたとおりにすると、あらビックリ、病人は光り輝く仏に変わって本来の阿閦(あしゅく)如来の姿を見せたのだ。
自分の願いがかなったことを知った光明皇后は、心からよろこんだという。
国立ハンセン病療養所である「邑久光明園」はこの千人施浴伝説から名付けられた。
貧民や子どもなどの弱者に徹底的に寄り添った光明皇后を、「日本のマザーテレサ」と呼んでも違和感はないのでは。

 

「ラスボス」の老人と光明皇后
体から発する光は阿閦如来であることを意味している。

 

悲田院や施薬院については歴史の事実で、千人の体を洗ったというのは物語でしかない。
でもそれは「あの光明皇后ならあり得る」と、人々に思わせるほどの信仰や慈悲の心を皇后が持っていたことを示している。
それに日本で最も高貴とされる人物が物乞いの体を洗い、ライ病患者に唇で触れるという話が伝えられているところにも、日本人の平等や博愛の精神を感じる。
「日本は世界一冷たい国」というワケではない。
ちなみに光明皇后には、貧しい人が飢えないようモモとナシの木を植えさせたという話もある。

 

 

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2 件のコメント

  • > 2018年の調査で日本は144カ国中、なんと128位で、「Helping a stranger(他人を助けたか)」の項目は142位だった。
    > ほかにも「Donating money(寄付をしたか)」は99位、「Volunteering time(ボランティアをしたか)」が56位という結果。
    > それで岡本氏は「恐ろしいぐらいに他人に無関心で、冷淡な国民ということになる」と書く。

    あはははは。
    コミュニケーション・ストラテジストですって? またそりゃ舌を噛みそうな仰々しい肩書を。ま、カタカナやアルファベットが肩書についていればありがたがる「オジサン」は、日本には多いですからね。

    そういう方面で欧米社会と日本を比較するのであれば、寄付行為・ボランティアを「行った/された」人々の「所属している社会階層」を明らかにするデータを併行して提示しなければ、分析に意味がないと思います。
    欧米諸国だって中間層はさほど寄付なんかしませんよ。自分の懐を心配する必要のない超大金持ちであってこそ、巨額の寄付ができるんです。(そういえば最近、イーロン・マスクが手持ちの株式を10%売却したとか。)
    また、ボランティアだってそんな単純な話じゃない。一般に、巨額の寄付をできるようなVIPにはボランティアなんかやってる暇はありません。ボランティア活動を担っているのは、VIPの専業主婦(金と時間がある)か、特定政治団体の所属者か、入試の突破を狙う受験生か、あるいはボランティアを強制される犯罪者です。
    つまり、他国の寄付行為やボランティアは、社会の大きな不平等を前提としているからこそ可能なんです。
    一億総中流社会ではあり得ませんよ。

    その程度のデータ分析力で、よくもまあ、MITの客員研究員に採用されたものだ。
    米国MITで、いったい米国の何を観察していたんですかね。ま、MITのエリート研究員には関係ない話か。

  • 三島由紀夫「日本人には威張り、外国人にはヘイコラするというのが、建国から、戦後占領時代の一部日本人にいたる伝統的な精神態度でありました。 これが一ぺん裏返しになると、外国人を野獣視し、米鬼撃滅のごとき、ヒステリックな症状を呈し、日本を世界の中心、絶対不敗の神の国と考える妄想に発展します。
     外国人と自然な態度で付き合うということが、日本人にはもっともむつかしいものらしい。 これが(日教組や野党などに代表される)都市のインテリほどむつかしいので、農村や漁村では、かえって気楽にめづらしがって、外国人を迎え入れます。」
    出典:「不道徳教育講座」(1960年)

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