【韓国の歴史教育】文化的優越感がつくる、日本の“嫌韓”

 

中央日報日本語版の記事によると、弥生時代の文化は朝鮮半島(韓半島)に起源があるらしい。(2021.11.15)

「日本の弥生文化、韓半島が本流…干ばつ難民が移動して作った」

でもこれは、ソウル大学地理学科のパク・ジョンジェ教授の立てた「突然の気候変化の衝撃で韓半島の農耕民が南に移住し、その一部は日本に渡って行った」という仮説でしかない。
パク教授は約3000年前、朝鮮半島の松菊里(ソングンニ)文化があったところにひどい干ばつが発生し、米作りをしていた人びとは南下して日本へ渡り、「日本の弥生文化を築いた」と主張する。
なるほどナルホド。
でも残念無念ながら、最も重要なその根拠になると教授の話はかなりアイマイになる。

「その後、松菊里文化は韓半島南部を経て日本に渡って行ったと考えられる。」
「松菊里の住民たちも日本に移動するというドミノ現象が起きた。おそらく韓半島初めての気候難民ではないかと考えられる。」

現時点ではパクさんがそう考えている段階だから、これは客観的な根拠に裏付けられた事実ではなくて、空白部分を想像で埋めた仮説だ。
だから当然、日本のネットでは「タージマハル」、じゃなくて「マータハジマッタ」とあきれる人ばかり。

・「日本の起源は韓国シリーズ」を一覧にして並べたら、それぞれが対立して矛盾しまくってそう
・縄文文化、弥生文化、古墳文化、飛鳥文化、奈良文化・・
それらの起源は全て、1948 年建国の大韓民国なんだろうさ。
・稲作が朝鮮半島経由で日本に伝来したってのは完全に否定されてるのに
懲りないな
・だから当時の古代朝鮮半島南部は倭の国だと
・なろう系国家

 

「日本の弥生文化、韓半島が本流」というのなら、まずはその弥生文化と松菊里文化の共通点を明らかにして、その2つを結びつける根拠を示すことが必要だ。
でもこの記事でそれはなし。
弥生文化の起源(本流)が朝鮮半島にあって南へ移動したというのはいいとして、その具体的な中身や根拠が不明ではお話にならない。
しかも日本についての記述は記事のおよそ3分の1で、ほとんどは地球温暖化などの気候変化について書いてある。

この人は地理学科の教授だから歴史はおそらく専門外で、「日本の弥生文化を築いた」は韓国人読者の注目を集めるための宣伝ワードだろう。
韓国では一般的に古代史においては、自国は日本より先進的な文明国だったという優越感があるから、こういうコトバはその気持ちを心地よくくすぐり、それが売上に直結する。

日本では相手にされないけど、万葉集が古代の韓国語で書かれていたという説が韓国で支持されるのもそういうワケだ。

万葉集は韓国語?日本人と韓国人を遠ざける『劣等優越感』

 

日本への優越感を育てているのは、もちろん学校での歴史教育。
たとえば韓国の小学生用の歴史教科書(国定)を開くと、こんな人物が大々的に取り上げられている。

 

 

この教科書によると、右の法隆寺には世界的にも高く評価されている金堂壁画があり、これは朝鮮半島出身の僧・曇徴(どんちょう)が描いたものだ。
*オリジナルの壁画は火事で焼失して、いまはそれを書き写したものがある。

「高句麗文化を日本に伝えてあげた曇徴」と書く教科書は彼の功績をこう紹介している。

曇徴は日本に行って漢文を教えたし、紙、筆、墨、絵具、石臼などのつくり方も教えてあげた。

「わかりやすい韓国の歴史 (明石書店)」

 

そして、「新羅から日本に伝わった文化を調べ、発表してみよう」という課題を設定する。

ではこれを日本から見てみよう。
まず百科事典マイペディアの解説には、曇徴についてのこんな説明がアリ。

推古天皇18年(610年)に来朝した高句麗(こうくり)の仏僧。生没年不詳。儒教の五経,絵画の彩色の法,紙・墨の製法,農具まで伝えたとされるが,確証はない。

 

曇徴が来日したという話はたしかに『日本書紀』にある。
でもそれが事実かどうか、そもそも彼が実在したかどうかの根拠は何もないのが現状。
ウィキペディアにこう書いてあるように、日本と韓国では古代史に対する見方がまるで違うのだ。

近年韓国では、法隆寺金堂壁画は曇徴の手によるものと主張されることがあり、国定の歴史教科書にも記述されている。しかし、それを支持する史料は一切なく(また現在の法隆寺は7世紀後半に再建されたものである)、俗説である。

曇徴 

 

文化的優越感があると「俗説」が「歴史的事実」になってしまう。
そんな韓国の価値観や考え方がよく表れているのが「(日本人に)~してあげた」という表現で、この歴史教科書を翻訳した日本人がそれについて「あとがき」でこう書く。

韓国文化の日本伝来については、王仁や曇徴を挙げて、わが国はすぐれた文化を日本に「教えてあげた」とする記述になっている。韓国語にも「教える」「伝える」という言い方は、親が子どもに、先生が生徒にといった目上の人が目下の人に使う表現である。こうした表現が日本に対する文化記述に使われているのは、韓国の歴史教育が古代史において文化的優越感を堅持することを目標にしているからである。

「わかりやすい韓国の歴史 (明石書店)」

 

韓国で行われている歴史教育を日本人に正しく理解してもらうように、「ここはあえて原書に忠実な翻訳にした」という。

今回の記事もつまりはこの延長だ。
ただ、「築いてあげた」と書かないだけ丁寧さはある。
それにしても、「文化的優越感を堅持すること」を歴史教育の目標にするのはやめてくれないかな。

日本の弥生文化は韓半島に本流があり、古代の韓国人が移動して作ったという話は、こうした自尊心を刺激して韓国人読者をよろこばせる。
この説が事実かどうかしらんけど、そんな優越感が日本に南下したことで、いらん「嫌韓」を作ってしまったことは間違いない。
ネットが発達したおかげで、「マータハジマッタ」という残念な声をよく聞くようになった。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。