日本とドイツ、“祝日”の違い:宗教と社会の関係が強すぎ面倒

 

ドイツ人の友人がグリム童話の「音楽隊」で有名なブレーメンにいて、このまえ彼とスカイプで話をしていたら、「それは日本じゃあり得ない」というモノを知った。
それはドイツの祝日

最近でいえば、1990年に東西ドイツが統一(再統一)された10月3日が祝日だから、国民は仕事から解放されて、好きなことをして過ごすことができる。
「ドイツ統一の日」を日本で例えるなら、国の誕生ということで建国記念の日といったところだ。
まあこの祝日ならわかるのだよ。

でもドイツの10月31日、「宗教改革記念日」のような祝日は日本では考えられない。
1517年のこの日、マルティン・ルターによるカトリック(旧教)に対する宗教改革が始まって、のちに新しいキリスト教の教派であるプロテスタントが誕生する。
それを記念して、ドイツでつくられたのがこの祝日だ。
だからこの日の性質上、休みになるのはブレーメンやハンブルク州など、伝統的にプロテスタントの影響が強かった地域で、カトリックの州には関係ないから、そこのレストランや商店はいつもと同じように営業している。
(細かい例外はあると思われ)

ただ2017年は宗教改革が始まって500年になる記念の年だったから、この年の10月31日だけはカトリックの壁を取っ払ってドイツ全土で祝日となった。

これが、翌日11月1日になると立場は逆転する。
この日はカトリックの聖人を祝福する「諸聖人の日(万聖節)」だから、今度はバイエルンやヘッセン州などのカトリックの影響の強い州では休みになって、プロテスタントの州では平日だから店や会社は平常運転。

 

宗教と公共の祝日がここまで深くつながっていることは、現代の日本ではありえないけど、戦前まではそれが常識だった。
天皇が穀物を神に供える「新嘗祭」(にいなめさい)という神道の祭が11月23日に行われていたから、その日はそのまま国の祝日となっていた。
それが戦後、「勤労感謝の日」と名称が変えられて現在までつづく。
だから戦前までの、宗教と祝日がリンクしていたころの日本なら、いまのドイツの祝日と感覚としては同じでも、宗派によって県が祝日を定めるという状況はない。
たとえば静岡県では浄土宗の影響が強いから、開祖・法然の誕生日の5月13日を祝日にして、となりの愛知県では、道元(曹洞宗の開祖)が生まれた1月19日を祝日に指定するという発想は日本にはない。

ドイツと比べれば日本では歴史的・伝統的に、特定の宗教が地域社会に大きな影響を与えていたことがなかったから、21世紀のいまこんな違いとなって表れている。
その点で価値観や文化が違うから、日本人がドイツで生活を始めるとイロイロ面倒なことがあるようだ。
ドイツ在住の日本人が、ほかの在独日本人にSNSでこんなメッセージをしているのを見た。

「カトリック地区の方は11月1日が日曜日なので、またしても祝日がチャラになってがっかり。10月31日が休みの地区の方は、土曜日が祝日なので、お買い物、郵便局その他の所用も金曜日までに。」

自宅と勤務先などがカトリック・プロテスタントの2つの地域にまたがっていると、二連休になったり休みが全然なかったりすることがあるらしい。
やっぱり日本は宗教と社会の結びつきが薄い。

 

おまけ

日本のお坊さんがSNSにこんな投稿をしていたのを発見。

「他宗でも日蓮上人、親鸞上人、法然上人、弘法大師、空也上人、栄西禅師など・・呼び捨てには出来ません。」

違う宗派であっても、相手に一定の敬意を払うのは日本人らしい発想や宗教観だ。
欧米のカトリックとプロテスタントの間では、こんな見方は少ないと思う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。