【日中友好】日本人なら見るべき、大連の“小京都と日露戦争”

 

日本のネットでこんな言葉が乱舞するなんてめずらしい。

・中国に初めて感謝するわ
・中国さん
ありがとう
・俺たちの中国
・神風吹いてるじゃん。
その風に乗れるかは知らんが。
・サンキュー中華人民共和国

さいきん発表された世論調査で、中国に「良くない」印象を持つ日本人はなんと90.9%。
ちなみに、日本に「良くない」印象をもつ中国人は66.1%という結果。

そんな雰囲気のなかで中国への感謝が気持ちがさく裂したのは、W杯予選でサッカー中国代表が格上のオーストラリアに引き分けてくれたからだ。
この結果とオマーンに勝利したことで、日本はW杯出場圏内の2位に浮上したのだから、いつもは中国にめちゃ厳しいネットもこのときばかりは温かった。
こんなことはメッタにないから、この波には乗るしかない。

いまの国内では、冷めた見方がほとんどなのは十分承知。でも、中国の文化や歴史を知るとそのまま日本についての理解が深まるし、好き嫌いの感情は抜きにして、損得で考えれば中国の経済力や生産力はいまの日本に必要だ。
なのでここでは90%の分厚い氷の壁が、ちょっとでも溶けることを願って記事を書いていこうと思う。
まえにネットで見つけて驚いたのだけど、街中でこんな広告がある国なんて中国以外に考えられない。

 

 

中国の東北部、むかしは「満州」と呼ばれていたところに、日本と深いつながりのある大連という港湾都市がある。
1895年に日清戦争で勝利して、日本がここを含む遼東半島(下図)を手に入れた。と思って喜んでいたら、ロシアやフランスからクレームがついて、泣く泣く手放すことになり、大連はロシアのものとなった。
これが歴史の授業でならう三国干渉ってやつ。

 

画像:Croquant

 

その後、日露戦争でロシアに勝ったことで、日本の大連統治が始まる。
ここにはロシア語で「遠い都市」を意味する「DALNY」という名前が付けられていて、近くにある「大連湾」と「ダルニー」の発音が似ていることから、日本が「DALNY」から漢字表記の「大連」に改めた。
以来、その名前は変更されることなく、現在まで続いている。
1940年代に大連の人口は60万人を超え、そのうち日本人は約20万人いたという。
大連で会った日本語ガイドは、「清朝政府は大連に関心はありませんでした。だから昔は貧しい漁村で、本格的な都市が建設されたのは日本がきてからです」という。

戦後になって司馬遼太郎が『坂の上の雲』を発表すると、これがドラマ化されたこともあって、日露戦争の舞台となった大連や旅順に注目が集まり、多くの日本人がここを旅行するようになる。
となると、需要に応じて観光業も発展していくしかない。
日本人をメイン・ターゲットに環境が整備されていき、博物館には日露戦争に興味のある人や、『坂の上の雲』のファンにはたまたない展示物であふれている。
中国の他の博物館と違って、15年ぐらい前に大連現代博物館を訪れた時は、日本が“悪者”になってなく、「奮戦」を伝えるような展示になっていたから驚いたぜ。

 

 

 

大連の日本語ガイドは日露戦争に精通していて、「この砲弾は『坂の上の雲』の〇〇の場面で出てきたもので~」と、誰が知るかというレベルの詳しい説明をしてくれた。
ガイドはこの本を何回も何回も何回も読んだし、日本人客の質問に答えているうちにエキスパートになったらしい。
下のデカい砲弾は日本軍が二◯三高地の攻略で使った切り札的なもので、ロシア軍を驚かせ、局面を変えるほどの威力があった。(とガイドが言ってた気がする)

 

 

この大連に最近、日本人なら行かざるを得ないような巨大観光スポットが誕生した。

遣唐使の時代、日本人が中国で学んだ重要なことが都市設計。
おそらく当時は世界最高の文明を誇っていた唐の都・長安を訪れた日本人は、そのにぎやかさや国際性、繁栄っぷりに圧倒されたはず。
京都の平安京はそんな長安をモデルにしてつくられたから、詩文では平安京を長安や洛陽(古代中国の都)と表現することもあったのだ。

でも、国破れて山河あり。
そんな長安は滅亡してもうこの世にはなく(跡地に西安はある)、代わりに中国東北部・大連に登場したのが「小京都」だ。
ここは京都をアピールしているけど、同時に「盛唐」とも書いてあって、唐の都・長安を再現したというカタチにはなっている。

ただし、1週間しかもたなかったようだ。

 

 

国内の反日感情に配慮して、「ここは唐の最盛期の長安をイメージした小京都ですよ~」とアピールしたのだろうが、結果は批判殺到からのわずか一週間で営業停止。

日本人の建築家や庭師などを呼んで、徹底した本物志向で京都を再現したのがかえってアダになって、SNSを中心にぶったたかれたらしい。

でもこのほとんどは、大連の外にいる中国人からのクレームだという。
大連の日本語ガイドも、時代が変わってもう『坂の上の雲』だけでは日本人にアピールすることができなくなってきたから、新しい観光の目玉をつくらないといけないと話していた。
「小京都」の計画は数年前から大々的に進められていたから、いまになって急に大連の住民が怒り出すはずもなし。
日本人が住んでいた大連は親日的だし、日本人客を呼べるような観光スポットも必要だったから、大連市民の多くはこれを支持していたはずだ。が、残念ながら「愛国砲」による容赦ない攻撃を受けて、セミの一生のような早さで営業停止となってしまった。

でも、上の動画に寄せられた日本人のコメントを見ると、わりと好意的なものばかりだ。

・このクオリティの街並みを再現出来たのは素直にすごいと思う。
・日本人から見ても違和感のない街並み凄い
日本で言う中華街みたいな感じかな?
たくさん日本の良さを広めてほしい。
・理不尽なクレームに屈してしまうところまで日本再現してるのすき
・営業停止にはなったけど、日本文化に好意的な人が少しでも居るのは驚いた
素直に嬉しい
・鮮明に日本を再現しているのに、オープンの演出はバチバチ中国で笑う

 

でも、1000億円かけた大プロジェクトがこのまま消滅するとは思えない。
カタチややり方を変えて、そのうちまた復活すると思われ。
だからそのときには、たくさんの日本人が大連を旅行して日露戦争について学び、中国にある本格的な京都を歩いて撮って、味わってほしいと思う。
日本にとって重要な歴史と、楽しい文化を同時に経験できる場所は大連しかない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。