【日本人と梨の話】その語源や歴史、忌み言葉の文化とか

 

近所のスーパーに行ったらアイスの半額セールをやっていたから、とりあえず「爽」を買ってきた。
梨は食べた時のシャリシャリした感じが特徴なんだけど、もともと「爽」自体がそんな食感だから相殺された感がある。
ということでスーパーの半額キャンペーンを記念して、今回は日本における梨の歴史や文化を中心に書いていこう。

さて日本人が言う「」は和ナシ(日本ナシ)のことで、西洋のものなら「洋ナシ」と言って区別する。

梨と日本人との付き合いはオソロシク長く、わが静岡にある登呂遺跡(弥生時代)からは食用にされたとみられる梨の種子が見つかった。
21世紀のいまでも梨さんの人気は不動でそのまま果物として食べられたり、ジュースやアイスになったりといろんな利用法が開発されている。

さて梨はなんで「ナシ」と呼ばれるのか?
この語源にはこんな説がアリ。

・新井白石は江戸時代、梨の中心部は酸味が強いことから「中酸(なす)」が転じたという。
・果肉が白いから「中白(なかしろ)」「色なし」でナシになった。
・風があると果実が育たないから「風なし」からのナシ。

アメリカに住んでいた日本人の記憶では、店で和梨は「Asian pear」と書かれていて、英語圏ではほかに呼び名があるという。

・産地からChinese pear, Korean pear, Japanese pear
・リンゴのような形をしてるから Apple pear
・砂のようなシャリシャリした食感から Sand pear
・日本語のナシから Nashi pear

 

日本人にとってナシという響きは「無し」を連想させるから、これを使ったダジャレや言葉あそびがたまにあるう。
むかし見たマンガで、付き合っていた彼女から洋ナシをプレゼントされた男が喜んでいたら、実は「用無し」の意味だったというオチがあった。
いまならベタ過ぎて編集者から、「オマエもう少しひねれよ。これはナシ」と却下されそうなレベル。
言霊の信仰や考え方を重んじる(または恐れる)日本人は「無し」という言葉に敏感で、めでたい場では縁起が悪いという理由から「有りの実」と呼ぶことがあった。
そんなことが千葉県の梨農家「高愛梨園」のHPに書いてある。

まったく同じ物でも、縁起の悪い言葉(忌み言葉)をポジティブな表現に置き換えることで、気持ちが何だか明るくハッピーになるのが日本文化の特徴だ。
ちなみに、梨の収穫量で全国一位を誇る千葉県から、生まれるべくして生まれたのが「ふなっしー」。

ちなみに歌舞伎の世界を「梨園」というのは、中国の皇帝が梨を植えた庭で弟子たちに音楽や脚本を教えたことが由来といわれる。
詳しくはこの記事をプリーズだ。

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付き合いはなんせ弥生時代には始まっているから、いまではジュース、アイス、ジャムにゆるキャラ、さらに歌舞伎界と日本で梨は本当に多岐にわたって有効利用されている。
「無し」だなんてトンデモナイ。あり過ぎるわ。

 

 

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1 個のコメント

  • > めでたい場では縁起が悪いという理由から「有りの実」と呼ぶことがあった。
    あーこれ、確かにありましたよ。愛知県に住んでいた子供の頃の話です。

    > ちなみに歌舞伎の世界を「梨園」というのは、中国の皇帝が梨を植えた庭で弟子たちに音楽や脚本を教えたことが由来といわれる。
    それだけじゃありません。おそらく、韓国の朝鮮王朝時代に「梨」が高級な甘い料理の代表格として扱われていた(NHK韓国ドラマ「チャングムの誓い」に何度も出てきます)のは、その辺りが起源に関わっているのだと思われます。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。