【白い地獄】八甲田山・死の行軍で、将兵を発狂させた言葉

 

満場一致で「いやいや、それは絶対やめるべき」というような、すれば必ず失敗するような無茶・無理・無謀な行為をネットで、「インパール作戦」とか「冬の八甲田山」と表現する人がいる。
この2つは、かつての日本軍が犯した歴史的大失敗だ。

ビルマ(ミャンマー)のイギリス軍を攻略しようとしたら、牟田口廉也の超ズサンな計画によって、ジャングルの中で3万を超える友軍の餓死者や病死者を出してしまった。
日本兵が日本軍に殺されたも同然の、1944年のインパール作戦についてはこちらをどうぞ。

【史上最悪の作戦】インパール作戦で、イギリス兵が見た光景

 

同じく計画性と準備が不足したままで決行し、210人中199人の死者を出した「八甲田山 死の行軍」(八甲田山雪中行軍遭難事件)が起きたのが1902(明治35)年の今日だ。
(救出された11人のうち6名はその後死亡した。)
日本の山岳遭難では史上最悪といわれていて、世界史的にもあまり類例のないような悲劇が起きた1月23日は、「八甲田山の日」として不幸な出来事を振り返る日になっている。

120年前の日本はロシアとの戦争(2年後に現実となる)を予期して、厳寒地で戦闘を行う訓練を行っていた。
青森にある八甲田山での雪中行軍もそんな冬季訓練の一つ。
このとき靴下を3枚重ねて、さらにその上に唐辛子をまぶして凍傷予防とした彼ら歩兵連隊は、「白い地獄」と呼ばれる冬の八甲田の恐ろしさをまだ分かっていなかった。
1月23日の朝、「今日はやめたほうがいい」という地元村民のアドバイスに背を向けて、歩兵第5連隊は青森市を出発して八甲田山へ向かう。

午前中はノープロブレム、視界良好だったけど、昼ごろに天候が一変。
暴風雪の到来を感じさせる天候に、駐屯地へ戻ることも検討されたが、まだ行軍の目的は達成されてないということで進軍を続行することにする。
フラグは立った。
これがその日の夜(1月24日午前1時ごろ)のようす。

将兵は壕の側壁に寄り掛かるなどして仮眠を取ったが、気温零下20℃以下に達しており、眠ると凍傷になるとして軍歌の斉唱や足踏が命じられた。このため長くても1時間半程度しか眠れなかった

八甲田山雪中行軍遭難事件

 

この状況になってようやく、「行軍の目的は達成された」と判断されて帰営が決定。
隊は午前2時半に出発した。
(このときの隊員の絶望感を想像するとツライ)

 

3ヶ月後に遭難するとはまだ知らない歩兵連隊

 

すぐに一行は「白い地獄」で道を失う。
猛吹雪と体感温度がマイナス50℃近くになるなか、不眠・不休・絶食という最悪の状態から多くの将兵が凍死していく。

視界と方向感覚を失ってリングワンダリング(円形に彷徨い歩くこと)の状態におちいり、前進もままならない。
遠くに将兵の隊列が見えたから「救助隊が来た!」と大喜びをするも、まったく動かないから「おかしいナ」と思ったら、それは雪の積もった樹列だった。
1月25日、神成大尉が「天は我らを見捨てた」といった言葉をもらす。
するとそのひと言で何とか保っていた正気を失って、服を脱ぎ始める者、川に飛び込む者、「いかだを作って川下りをして帰るぞ」と叫んで木に銃剣で切りつける者など何人もの将兵が発狂して死亡者も続出した。

本当の救助隊が生存者を見つけるまで、彼らは次々と死者を出しながら八甲田山をさまよっていた。

この「死の行軍」の原因には悪天候もあったけど、人災の面が大きい。
ほぼ全滅した青森隊と違って、同じ時期に別ルートで行軍訓練を行った弘前の歩兵連隊はみんな帰還できたのだから。

毎日新聞のコラム「余禄」(2022年1月23日)

綿密な事前計画や地元案内人の重視、寒さに慣れることができる日程を組むなど「データ収集と準備」が青森隊との明暗を分けたと分析している

今から120年前の…

 

「緑の地獄」のインパール作戦では十分な補給、「白い地獄」では将兵の休息を計画していなかったことが未曾有の大惨事につながった。
この悲劇は今は教訓になっている。

 

 

 

ジンギスカン作戦で飢餓地獄。牟田口廉也とインパール作戦。

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。