「韓国の反中 vs 中国の嫌韓」の現状に、日本人も注目すべき

 

日本と、それ以外の東アジアの国には1か月ほどの「時差」があって、中国・韓国・ベトナムでは今日2月1日から正月が始まるのだ。
海外では一般的に、「Chinese New Year(中国正月)」と表記されることに気に食わない韓国人の教授がいて、「Lunar New Year」(太陰暦の正月)に変えるべきだと主張する。

「君子危うきに近寄らず」を国是とする日本は一切関わらないから、韓・中で好きなだけ殴り合えばいい。
ただ、「Chinese」を削除しようとする韓国人の反中感情には関心を持った方がいい。
このところ韓国人を対象にアンケート調査を行うと、中国に対する悪感情がいつも高い。「キライ度」では中国が日本を上回るから、これはかなり深刻だ。

朝鮮日報にそんな現状を憂う記事がある。(2022/01/30)

韓国と中国のMZ世代(満20歳から39歳までの世代)や10代の間で、相手国に対する憎悪感情が次第に高まりつつある。中国の一部では韓国を「南朝鮮」と、韓国では中国を「中共」とさげすんで呼ぶ例も少なくない。

「米国のイヌ」「中共は大嫌い」…溝が深まる韓中の青年たち

 

これはどこの国でも同じなんだが、相手国への「嫌悪」を高めている原因はネットにある。
きょねんアメリカの要求で韓国企業がアメリカに半導体についての情報を提供すると、640万人のフォロワーを持つ中国の有力インフルエンサーさんは「(米国の)イヌとしての役割を務めてきた結果」とコメント。
サムスンを「三喪」と表現して「米国に服従するほかない」と書くと、山のようなフォロワーもそれに同調する。

中国では韓国を侮辱する時には「イヌ」を使うらしい。
韓国政府が北京オリンピックに政府の代表団を派遣するかどうか迷っていると、このインフルエンサーは「イヌ(韓国)は主人(米国)の言うことを聞きたくないが、主人はやはり怖いんだな」と投稿する。
すぐに無数の「いいね」が押され、「あれら(韓国)はイヌになるのが好き」といったコメントが出てくる状態が、中国では日常化しているのだろう。

ネットで相手国への嫌悪をあおるのは韓国でもまったく同じ。
ユーチューブでは中国の劣悪な衛生状態や、中国人の行動をバカにする動画がいま大人気。
数万~数百万回もの再生数をかせぐことができるから、「中国の観光客の史上最悪級迷惑事件」といった刺激的な見出しの動画がいくらでもあるという。
そして視聴者からは「中国大嫌い」、「中共は永遠に下層民族」といったコメントが書き込まれる。
不快な映像と一緒に「最悪」、「大嫌い」といったコメントを山ほど見れば、反中感情はどんどん増加していくしかない。

 

でも、相手に反論することと、憎悪をぶつけることはまったく違う。
いまの負の連鎖は韓国にとってマイナスになるから、専門家は「両国の若い世代が互いを嫌悪する状況が続いたら、両国の未来にとって大きなリスクになりかねない」と現状を不安そうに見ている。
ちなみに朝鮮日報が20代のソウル大学外交学科の在校生・卒業生を対象に、好感度に関するアンケート調査を行ったところ、アメリカ・日本・中国・台湾の中で、最も高かったのがアメリカ(10点中7.57点)で日本は(5.73点)、中国は最低(3.83点)となった。(台湾は書いてない)

2020年に中国で行った調査でも、10代の間では韓国への好感度はかなり低かった。もっとハッキリ言えば、韓国嫌いの人がかなり多い。
この理由はいくつかあるけど、中国の若者の「愛国主義的傾向が嫌韓感情を強く表出させる」という見方が韓国にある。
一方、韓国ではTHAAD(高高度防衛ミサイル)を配備した後に中国がしたことを「経済報復」と考えたり、大気汚染物質が中国からきて韓国の空を汚していると考える人が多く、これが反中感情を加速している。

それに韓国の若い世代では、中国の歴史や文化に触れる機会が減っていることもマズい。
40代の韓国人なら三国志や香港映画などで中華圏の文化に親しみを感じていたけど、いまの若い韓国人にはそういう接点がないという。
中国に対する親近感が「嫌悪」を押しとどめていないから、若者世代では負の感情が一方的に高まってしまう。
6・25戦争(朝鮮戦争)を「正義の戦争」と呼ぶとか、中国の「自国中心の文化と歴史を強調する」ことにも、韓国人は拒否感を感じるとか。
こういう状況からすると、「Chinese New Year」を変えようする運動も若者には支持されるかも。

 

海で一線を隔てている日本から見ると、「愛国主義的傾向」や「自国中心の文化と歴史を強調する」ことが、相手国への嫌悪感情を強くしているという点は韓国も同じ。
韓国の専門家もそんなことを考えているようで、「文化交流の過程を『文化浸透』と誇張して決め付けるケースが多い」という指摘する。
日本でもこのところ、韓国や中国に対する印象はかなりとっても絶望的に悪い。
その原因にはエコーチェンバー現象があるはず。

ネットで自分の価値観や考え方に近い情報ばかりを見たり、そんな閉鎖的な空間でやり取りをすることで、「ほかの人もやっぱり自分と同じだ!」とカン違いをしてしまう。
限定空間にいて自分の意見や思想が一般的なもの、他者も認める正解であると思ってしまう残念な状態をエコーチェンバー現象という。
日本で韓流が人気と聞くと「そんな声は聞かない、ウソばっか」と反応する人は、この現象の中にいる可能性が極めて高し。
その人の過去の閲覧履歴から、コンピューターさんが似たような情報をピックアップするからこの現象は生まれやすい。
韓国や中国でキライが増加していることにも、きっとエコーチェンバー現象が原因の一つにある。
韓・中に反論したりNOと言うことと、憎悪の感情をぶつけることはまったく別で、後者は日本の利益を失わせて自分の首を絞めてしまう。
でも、いつもネガティブな情報に接していると、自分の中ではそれが標準や普通になってしまうところがエコチェンのコワいところ。

 

正月の話はどーでもいい。
韓国の市民団体「バンク(VANK)」が「Chinese Lunar Calendar」と表記した国連へ抗議の書簡を送って、「Lunar New Year」に変えるよう要求する動きに日本は関わってはいけない。
でも、いまの韓国の反中感情と中国の嫌韓感情のぶつかり合いは、その結果、国益にどう影響するか日本人も注目した方がいい。

 

 

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5 件のコメント

  • > 韓国の市民団体「バンク(VANK)」が「Chinese Lunar Calendar」と表記した国連へ抗議の書簡を送って、「Lunar New Year」に変えるよう要求する動き

    よく分からないのですが。「Chinese Lunar Calendar」の中に「Chinese New Year」と書いてあったのを修正要求した? それとも「New Year’s day in Chinese Lunar Calendar」とでも書いてあったのでしょうか?

    > 中国の一部では韓国を「南朝鮮」と、韓国では中国を「中共」とさげすんで呼ぶ例も少なくない。

    「南朝鮮」が侮蔑語になるのは何となく理解できますが、「中共」って「中華人民共和国」の単なる省略ですよね。それがなぜ侮蔑語に? 昔は日本でも「中共」vs「自由中国(←台湾のこと)」ってよく使ってましたけどね。

  • なるほど、国連発行の旧正月記念切手についての話だったのですね。

    この画像を見て思ったのですが、今年の干支は、日本の暦でも中国の旧暦でも同じ「虎」なんだ。
    干支に割り当てる動物は世界各国で微妙に異なるらしいですが、やはり中国バージョンが最優先なんでしょうね。

  • あと、日本人としては中国歴正月だろうが太陰暦正月だろうが、どっちでも構わないとは思います。
    でも、太陰暦(旧暦)が中国発祥であるのは間違いないのだから、オリジナルにあれほどこだわる韓国人がそのように名称変更を要求するのは、典型的なネロナンブルにしか見えないですね。

  • 北京冬季オリンピックの開会式で、中国の少数民族を象徴するイベントに韓服(韓国・朝鮮の民族衣装)が登場したことを非難・反発している韓国人がいるようです。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。