韓服にキムチで今度はビビンバ。韓国と中国の文化対立

「混ぜご飯」を意味するビビンバは韓国人のソウルフード。
これをめぐっていま韓国と中国で、ちょっとした“バトル”がぼっ発しているらしい。

朝鮮日報日本語版の記事（3/17）

ソン・ジュンギ主演ドラマで「中国産ビビンバ」のPPL…ネットユーザー「あれは中国の食べ物なのか」

このPPLとは「ペンパインアッポー」のこと、じゃなーい。これはプロダクトプレイスメント（product placement）のことで、映画やドラマの中に商品を登場させる広告手法の一つ。
役者がそれを使うと商品の好感度もアップする一方、嫌われキャラの場合は逆効果になりかねない。

いま韓国で放送中のドラマ『ヴィンチェンツォ』の中で、中国製品のビビンバを食べるシーンが出てきたことで、ネットに怒りや不満の声があがって物議をかもしている。
これを問題視した（いつもの）ソ・ギョンドク教授が、中国語の容器に入った石焼きビビンバのキャプチャー画像をネットに公開した。
それを見て「不快だ」という意見も出ている。というか、この教授はこういうネガティブ反応を引き出しているのだろう。

そんな教授の主張が朝鮮日報の記事にある。

「最近中国はキムチ、韓服（韓国の伝統衣装）、パンソリ（韓国伝統の唱劇歌）などを『自国の文化』だと、でたらめな主張を繰り広げている状況」とした。
「韓国ドラマの世界的な影響力を通じて多くの国で製品をPRすることを狙ったのではないかと思われる」

韓流文化の世界的な影響力によって、このシーンを見た海外の視聴者がビビンバを『中国の料理』と誤解することを「最も懸念される」と不安視する。

でもプロダクトプレイスメントは日本や他の国でも行われていることで、まったく悪いことじゃない。
この中国企業が出した宣伝費がドラマの制作費になるわけで、これはウィンウィンでもある。
むしろそのへんのつながりが不明で、特定のアイテムが不自然にドラマに出てくるとしたら違和感をもつだろうけど、今回の場合それはない。
でもそれは、この騒動とは１ミリも関係ない、かかわってはいけない日本人からの見方でしかない。
「ビビンバ宗主国」を自認する韓国としては、そう冷静に受け止められない人もいるようだ。

ただ「不快だ」といった書き込みは、事態を次のステージに移行させてしまう。
韓国側の反応を知って中国側では、「また食い物でイチャモンをつけてやがる」といった不快そうな書き込みがされていて、事態は悪化していくばかりだ。
全国紙で「でたらめな主張」と書かれたら、反論したくなる中国人の気持ちも分からなくはない。
こうなるとプロダクトプレイスメントの逆効果で、中国のビビンバを食べていた韓国人俳優の好感度がだだ下がりそう。

まぁでもいまはタイミングが悪かった。
少し前に中国が韓服やキムチを「自国の文化」という主張をおこない、韓国人の愛国心をえらく刺激していま中韓の間で“文化の帰属”をめぐる対立がうまれているのだ。

たとえば先月、中国企業のシャオミがスマホの壁紙のデザインに韓服を描き、それを中国文化とした。
中央日報日本語版の報道（2021.02.16）

シャオミのこのような行為が中国の「キムチ工程」に次ぐ「韓服工程」でないかという非難が相次いでいる。

キムチに続いて韓服も中国文化？　韓国で撮られたシャオミフォンの壁紙

これに怒った人が不買運動を呼びかけた。

でも中国は強い。
共産党の中央政治法律委員会が、日本なら絶対無理だ～と思われる、こんな発言をした。
＊九牛一毛とは牛９頭（＝たくさん）いる中の一本の毛と言うことで、ほんのわずかなものや本当につまらないことのたとえ。

「韓国で起こった『キムチ論争』は文化的な自信が乏しい韓国の被害妄想だ」
「キムチは中国５０００年の文化のうち、九牛一毛にすぎない」
「私たちはこのような文化遺産と中華民族の創造精神を守っていかなければならない」

想像してみよう。
こんなことを日本政府高官が公式の場で、「韓国の被害妄想だ。日本民族の創造精神を守っていかなければならない」と言ったら、一体どんな騒ぎになるのか。
それとこのとき、このととばを聞いた韓国側がどれほど熱くなったか。

さすがに中国側が「ビビンバは中国文化だ。『ビビンバ論争』は文化的な自信が乏しい韓国の被害妄想だ」と主張しているという話は聞かない。
韓国側が敏感になりすぎているとしか思えない。

それよりも日本人の立場では大事なことがある。
もし中国がキムチや韓服、ビビンバを自国の文化と、「でたらめな主張を繰り広げている状況」に嫌気がさすのなら、たくあんや着物、サクラなどを「韓国の文化（起源）」と言うのはやめてほしい。
日本側が根拠を提示して反論することで最近は減ったけど、一時、「韓国起源説」は猛威を振るっていた。
ある意味、韓国・中国で熱くなっている間は日本は平和だ。