2022年2月2日って、2が並びすぎじゃね?
と思われる今日は韓国・中国・台湾・ベトナムではお正月の真っただ中。
そのイベントを1か月前に終わらせている日本は東アジアの異端児、孤高、仲間はずれのどれか好きなものを選んでくれ。
他の国にはない文化で、日本の正月には絶対に欠かせないのが鏡餅だ。
年神さまをお迎えするためのサインとして玄関にしめ飾りを付けて、来てくれた神さまのために家の中では鏡餅をお供え物にする。
この年神さまが家族に、一年の幸せや健康をもたらしてくれるという。
神さまが餅に宿るから、鏡餅は依り代の意味もある。
昔は鏡餅に伊勢えびをのせたのか。
そして11日の鏡開きの日、神さまの宿った鏡餅を家族みんながいただいて、「神さまパワー」をゲットして無病息災の縁起かつぎとする。
鏡開きは江戸時代は武家の風習で、餅を刃物で切るのは切腹を連想させて縁起が悪いということから、手で「フンっ」と割ったり木づちでたたき割ったりする。
さて、こんな日本の正月文化について外国人はどう思うのか?
・鏡餅のように、食べ物に神が宿るという発想
・鏡開きのように、それを食べることで神のチカラを得ることができて、家内安全や無病息災を願う縁起かつぎの考え方
特にこの2点についていろいろな国の人に聞いてみたんで、今回は、日本に住んでいたことのあるドイツ人(30代・♂)の感想を紹介しよう。
伝統的にキリスト教の影響が強いドイツで、神が食べ物に入ってくるという話は聞いたことがない。
とても日本的で面白いと思う。
物に神霊が宿るという神道の考え方はキリスト教ではタブーで、古代のドイツでなら、木や石などの自然物に神や霊が宿るアニミズム的な信仰はあった。
でもキリスト教が伝わると、そんな考え方は禁止されて排除されたから、いまはもうすっかりなくなった。
鏡餅を食べる鏡開きの話を聞いて、思い浮かんだのはキリスト教徒が持つ十字架。
知り合いのカトリック教徒が神の祝福を受けて、災いを退けるために十字架を身につけているけど、お餅を食べて神の力をもらうこととは根本的に違うと思う。
でも自分が知っている範囲で、鏡開きに一番近い発想は十字架を身につけること。
と言ったあと、「あ、教会で子供が食べる紙のお菓子もそれに近いかなあ」と言う。
「紙のお菓子って?」と思ったら、ウェハースのことだった。
いまではそこらのスーパーにあるこのお菓子は、昔はキリストを象徴する神聖な食べ物だったから、教会など特別なところでしか作ることが許されず、普通の人に解禁されたのは13~14世紀になってから。
現在のドイツでは、この「神聖なウェハース」を教会で食べることがあるという。
これは日本語では「聖餅」と訳されるから、文字だけを見れば鏡餅のようだけど意味合いはきっと違う。
幸運や無病息災を祈る「正月の縁起かつぎ」ということなら、ドイツでは正月に煙突掃除人に触れると、幸運を得られるという考え方がある。
街を歩く掃除人がいたら、彼と握手したりハグしたりする。
理由はよく分からないけど、掃除人に触れることで火事を防ぐおまじないになったのだと思う。
この伝統とキリスト教はまったく関係ない。
英語版ウィキペデアを見ると、ドイツ、ポーランド、ハンガリー、クロアチア、チェコ、スロバキア、スロベニア、ルーマニア、エストニアでは煙突掃除人を街で見かけると、幸運を得るために彼のボタンに触れる習慣があるという。
ヨーロッパ人にとって暖房や料理作りで使う暖炉は生活の中心になるものだから、煙突掃除人はとても特別な存在だったという。
先ほどのドイツ人いわく、ドイツでは煙突掃除人が幸運のシンボルになっていて、正月にその人形を家族や友人にプレゼントする習慣がある。
*リンク先の画像で掃除人の足元にある植物も、幸運の象徴である四つ葉のクローバー。
その人形の説明と、掃除人のボタンに触れるとラッキーという話は下のリンク先にある。
As a Lucky symbol, depictions of chimney sweeps are a popular New Year’s Day gift in Germany; either as small ornaments attached to flower bouquets or candy, e.g. marzipan chimney sweeps. Their traditional uniform is an all black suit with golden jacket buttons and a black top hat.
アイルランドの煙突掃除人(19世紀)
イギリスでは花嫁が結婚式の当日、煙突掃除人が仕事をしているのを見ることは、とてもラッキーなことと考えられているらしい。
それでカップルが結婚式に、幸運のシンボルである煙突掃除人を招待することもある。
ということで、ドイツ人から聞いた本日の結論。
鏡餅のように、食べ物に神が宿るという神道的な発想はドイツにはない。(彼は知らない)
したがって、食べ物を食べて「神さまパワー」をゲットするという行為もないけど、神の祝福を受けるために十字架を身につけることならあり。
正月の縁起かつぎなら、煙突掃除人に触れて幸運を得るという習慣がある。
つくづく思うけど、キリスト教文化圏でいう神と日本でいう神は相変わらずまったく違う。
イギリスBBCは神道の「神」を英語で最も適切に訳すなら「スピリッツ」になるとした。(The best English translation of kami is ‘spirits’)
木や海や餅などさまざまなモノに神霊が宿って、その依り代を崇拝する考え方は神道では決定的に重要だ。
だけど、キリスト教ではそういうことを厳禁しているから、日本とドイツではまったく違った伝統と結果(現在)になった。
地下室のある4階建てで、7つの煙突があるヨーロッパの住宅(19世紀)
体の小さい子どもに重労働の煙突掃除をさせることがあったから、この仕事を児童虐待の象徴とする見方もあったらしい。
> 体の小さい子どもに重労働の煙突掃除をさせることがあったから、この仕事を児童虐待の象徴とする見方もあったらしい。
その話で思い出すのが「不思議の国のアリス」ですね。
トカゲのビル(「ビル」はアイルランド系の代表的な名前)は、家の中で巨大化したアリスを追い出すため白ウサギによって煙突から送り込まれたのですが、巨大化したアリスに蹴っ飛ばされて、気絶してしまうのです。アリスの時代から既にイギリスでは、煙突掃除はアイルランド人にやらせるキツイ仕事だったみたいです。
>
「体の小さい子どもに重労働の煙突掃除をさせることがあったから、この仕事を児童虐待の象徴とする見方もあったらしい」
炭鉱で」働かせておいて何言ってんだというレベル。