【何もかも嫌い】高まる韓国の反中感情に、今度は中国が怒り

という

韓国人が愛して誇りにしている文化に、韓服(スカートのチマと上着のチョゴリ)、キムチ、テコンドーがある。
そうした韓国を代表する文化について、このところ中国が「あれは実は中国文化なのだ」、「起源は中国にある」といった主張をするから、韓国人を刺激して反中感情が高まっている。

個人的には上の3つは韓国文化のアイテムだと思っている。
でも、これらの由来や歴史にはハッキリしてないことも多いから、中国の見方が間違っていると否定する気もなし。
日本には関係ないコトだから「宗主国」はどっちでもいいし、正しいと分かったらそっちを信じるだけ。
とにかくこれは日本が触れてはいけない大地雷。

韓服、キムチ、テコンドーなどは中国文化に属するという主張に、怒り心頭の韓国人がここ最近、急増している。

中央日報(2022.01.20)

「孫興民も中国人と言いそうな局面…刃物を持っていない強盗同然」 反中感情がさく烈=韓国

中国の「文化歪曲の試み」に関する記事には、

「(サッカーのスター選手の)孫興民も中国人でサムスンもお前たちのものか。刃物を持っていないだけで泥棒根性丸出し」
「今は中国というだけで何もかもが嫌い」

といった反中コメントが津波のように書き込まれ、山のような「いいね」が押されるような状態。
中央日報のような全国紙では書けないだけで、韓国のネット空間は、中国に対する差別語や侮辱語が飛び交うワンダーランドとなっている。
国民の燃えるような怒りとは反対に、政府は落ち着いていて中国に抗議する気配はない。
その冷静さはもはや屈辱的だから、「政府次元でなぜ一言の声明もないのだろうか。中国の機嫌を損ねるのではないかと思って怖いのか」といった韓国政府への批判も噴出している。
これが日本相手だったら、文政権は水を得た魚のように生き生きと、嬉々として「文化歪曲」を批判して反省を要求するところ。

でも、中国相手にそれは無理。
数百年前から韓国政府は中国にはヨワイのだ。
朝鮮半島の歴史や文化にくわしい著作家の康熙奉(カン・ヒボン)さんがこう書く。

有史以来、数えきれないほど中国から侵攻を受けている。その恐怖心たるや、先祖から子孫まで骨の髄までしみ入っていた。朝鮮半島の国家にとって、中国を怒らせないことがいつの時代でも存亡の鍵だった。

「朝鮮王朝の歴史と人物 (実業之日本社) 康熙奉」

 

中国は日本みたいに優しくないから、反中感情にはこう言い返す。
朝鮮日報(2022/02/09)

韓国の反中世論に中国メディア「中・日の強大国の陰で生まれた劣等感」 

 

先ほどの「反中感情がさく烈」の記事のあと、スポーツによって人類の「平和を促進する」ことを目標とするオリンピックが北京で開催された。
古代ギリシャでは「戦争を中断し、オリンピアの競技を復活して神に捧げよ」というお告げがあったことから、それまで戦争を繰り返していた古代ギリシャの都市国家は休戦協定を結んで競技祭が始まった。
これがオリンピックの起源といわれる。

五輪会期間は争いを中断するという、現代のオリンピック休戦はこの話にちなんで誕生した。
なのに、なんでこうなった?

中央日報(2022.02.07)

<北京五輪>中国、開会式に韓服登場させ…また反中感情育てた

中国としては国内にいる56の民族のひとつ、朝鮮族の女性に伝統衣装を着せて、開会式に登場させる演出は当然でフツウのこと。
でもその伝統衣装とは韓服だ。
開会式を見た韓国人の目には、中国がそれを自国の文化であることを世界にアピールしていると映ったし、外国人も「韓服は中国文化のアイテムなのか」と誤解すると考えた。
この「文化歪曲の試み」に、「刃物を持っていない強盗同然」、「中国というだけで何もかもが嫌い」といった感情がよみがえる。

これは韓国視点で、朝鮮族に伝統衣装を着せるなと中国に要求するのは無理筋だ。
ただ韓国には、こうした動きをただの「文化歪曲」ではなくて、「中国は韓国を属国のように扱っている」と考える人もいる。
これまでの過程で韓国には怒りや不満が蓄積されていたから、開会式が最後の一押しになって噴火した。

韓国のネットは「中国が韓国の文化を盗んだ!」といった声に満ちていて、各メディアも「明白な文化侵奪」、「歴史歪曲の試みには堂々と立ち向かうべきだ」と大々的に報じる。
大統領選にも影響を与えるほどの韓国の強い反応は、隣国の日本人からするとチョット驚くレベル。
それで日経新聞がこう報じた。(2022年2月7日)

批判は抗議をしない韓国政府にも向けられるなど、1カ月後に迫る大統領選にも論争を与えそうだ。(中略)最近の韓国では、文化や歴史に関する中国の主張への過敏な反応が繰り返されている。

韓国で強まる反中感情 北京五輪の「韓服」が波紋

 

そしていま、中国も日本のメディアも注目しているのがこの出来事だ。

テレ朝ニュース(2/11)

韓国で中国人留学生が暴行される 中国外務省「非常に注目」

この事件について韓国の警察は、北京オリンピックや国内の反中感情とは関係ないと話している。とはいえ、直接の原因ではないとしても、「今は中国というだけで何もかもが嫌い」という感情と無関係とは思えない。

2人の韓国人が1人の中国人を襲ったことについて、テレ朝ニュースは「韓国ではオリンピックの判定などを巡り、中国への批判が上がっていました」とその背後を説明している。
「オリンピックがナショナリズムを刺激するのはその通りだが、特定の国籍の人を暴行するのは行き過ぎている。」というヤフコメのトップには、多くの日本人が同意と思われ。

この動画は中国で大拡散中で、「オリンピックのせいで中国人が韓国で暴行を受けた」といった書き込みが爆発的に広がっているという。
動画は暴行の途中からのようで、力なく地面に座っている中国人男性に男が蹴りを入れているから、あれを見たら中国人が怒りに震えるのも分かる。
「非常に注目している」という中国外務省の言葉には、韓国政府が震えているだろうけど。

国内で暴力事件が起きたとなると、これ以上の反中感情は刺激したくないから、韓国メディアも「文化歪曲の試み」を全面非難することはむずかしくなるはず。
そして無抵抗の同胞が蹴られる映像を見たら、中国では確実に嫌韓感情が高まる。
オリンピック休戦の真逆が進行しているのがいまの韓国と中国だ。
そんななかで起きたこの出来事は一線を越えて、これまでの対立のフェーズを変えることになりそう。

 

 

日本・中国・韓国・ベトナムの文化「干支」。その同じと違い

【義和団事件】呪術で不死身に!→日本・欧米に負け半植民地化

中国は「世界の安全大国」だった。その理由と“犠牲”とは?

日本はどんな国? 在日外国人から見たいろんな日本 「目次」

【日本と中国の関係】古代の生徒と先生が、近現代には逆転

 

6 件のコメント

  • > 個人的には上の3つは韓国文化のアイテムだと思っている。

    間違いですね。テコンドーについては、創始者自身が「日本の空手から学んで、テコンドーを創出した」と言っています。そんなの常識。
    日本人でありながらその点に触れず、ただ「韓国文化のアイテム」という主張だけをするのは、現在の日本の左翼系大手メディアがやっている「報道するかしないかはメディアの自由」という、一見、報道の自由を装った「意図的選択による世論のミスリード」に同じですよ。

  • >オリンピック休戦の真逆が進行しているのがいまの韓国と中国だ。
    >そんななかで起きたこの出来事は一線を越えて、

    一線を越えたのは韓国にしか見えないけどね。

  • > 日本には関係ないコトだから「宗主国」はどっちでもいいし

    「宗主国」とは、「従属国」「隷属国」「植民地」に対する「支配者側の国」という意味です。この問題に関してこのような単語を使うのは(たとえ的にであったとしても)、あまりに無神経でしょう。
    正確に「起源国」と記述する方が望ましいです。

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。