【日本の受験文化】言葉のチカラ・米国人の好きな合格グッズ

 

年が明けて受験シーズンになると、全国の受験生から本格的に頼りにされるのが菅原道真
幼いころから「神かよ!」と周りの大人を驚かせるほど頭の良かった菅原道真は、大人になるとドンドン出世していくも、やがてそれをねたんだ藤原一族のワナにはめられ、九州へ左遷されてそこで無念の死をとげた。
そんな菅原道真が「学問の神」として、一般的に知られるようになったのは江戸時代のときだ。
この時代、読み・書き・そろばんを教えるために全国各地につくられた寺子屋で、天神(菅原道真)をまつったり道真を描いた御神影を掲げ、寺子屋で学ぶ人たちが学業の成就や武芸の上達を祈った。
こうして菅原道真は「学問の神さま」や「芸能の神さま」として全国へ拡散されていく。

ちなみに菅原道真は上の写真にある梅の花が好きだったことから、彼を祀る天満宮の神紋として採用されたとか。

 

菅原道真

 

日本の中学校や高校で英語を教えていた知人のアメリカ人から、「日本の受験文化はとてもおもしろい!」という話を聞いた。
志望校に合格するためみんな一生懸命に勉強をして、でもなかにはカンニングをするようなヤツが出てくることは、日本にもアメリカにもこれはどこの国でもある。
試験に合格するという願いは人類共通でも、そこにあらわれる文化は国や民族によってそれぞれ違う。
「学問の神」みたいな過去の偉人にあやかるやり方は韓国や中国にもあって、儒教の開祖・孔子をまつる廟で手を合わせて合格を祈願することがある。
まえに見たテレビ番組では、もうすぐ受験をむかえる子供のために、韓国人の母親が菅原道真をまつる九州の太宰府天満宮を訪れて熱心に祈ってお守りまで買っていた。
「息子を合格させてくれるなら、どこのどんな神さまでも構いません」という親心は国や宗教、民族感情を超えるのだ。

知人のアメリカ人もここまでなら分かるし、共感できるという。
でも、「こんなん日本だけやろ~」と感心することは、受験シーズンになると登場する各種「合格グッズ」だ。
彼からすると、こうしたグッズはアイデア満載でユニークで、日本人の発想がよくあらわれている。
この時期にスーパーやコンビニに行くと、キットカットが「きっと勝つ」、カ~ルが「ウカール」、Toppoが「Toppa(突破)」、カルピスが「受カルピ~ス!」といった感じに、(中身はそのままなのに)合格の縁起ものに変身している。
アメリカではお菓子のパッケージが変わることはあまりないから、外見や雰囲気がハロウィン→クリスマス→正月→受験と移り変わるのは印象的らしい。

彼が特に気に入った合格グッズは「オクトパス君」。
それを「置くと」試験に「パス」できるという、日本人の説明なしでは絶対わからないこのグッズは、「pass」の英語があることも彼のツボに入った。タコだけに。
このオクトパス君、受験生には引っ張りだこでも、ネットでの反応はわりと冷めていた。

・試験会場に持ってくのかよ
・オクトパスってなんか消しゴムかなんかが30年くらい前にもあったな
・落ちたら競争社会からパスできるしどうやっても叶う
・こんなのにすがるヤツはもうすでに負けている
・ちょっと欲しいかも。

でもタコってヌルヌルしてて、けっこう滑りやすいのだが。

 

アマビエとコラボしたりして、オクトパス君の幅は広がっている。

 

海外からみると、日本人の縁起かつぎや迷信(superstition)には言葉に関係しているという大きな特徴がある。
だから、「死」や「苦」を連想させる同音異義語の「4」や「9」のある数字やモノは不吉と考えられて嫌われる。

A significant portion of Japanese superstition is related to language. Numbers and objects that have names that are homophones (Dōongo / Dōon Igigo (同音語 / 同音異義語, lit. “Like-Sound Utterance” / “Like-Sound Different-Meaning Utterance”)) for words such as “death” and “suffering” are typically considered unlucky.

Japanese superstitions

 

欧米などキリスト教文化圏では、イエスを裏切った弟子のユダが最後の晩餐で13番目の席に座ったからといった理由で、「13」が忌み嫌われることがある。
不吉なことを連想させる同音異義語を理由に、忌み数字があるという話は聞いたことがない。

この発想を受験に当てはまると、「落ちる」「すべる」は受験生に聞かせてはいけないNGワードになるし、逆に、ハッピーなことを連想させる言葉は縁起かつぎになる。
イギリス人やドイツ人に話を聞くと、日本語に比べれば、あちらの言葉には同音異義語が本当に少ないからこんな文化はないらしい。

「偉人に祈るのはわかるけど、『ウカール』とかはただの言葉あそびで子供っぽい」と知人のアメリカ人は笑うけど、日本人は彼が考える以上に言葉の影響を強く受けるから、それによって気分が上がったり下がったりする。
縁起かつぎは一種の迷信(superstition)だから、それによって気持ちが上向き・前向きになれることが大事で、日本人はそういうものにお金を出すから新商品も次々とうまれる。
きっと勝つ、Toppa、受カルピ~スや、アメリカ人の好きなオクトパス君はそんな日本人の伝統的な発想にもとづく合格グッズであり受験文化だ。
言葉は日本人に魔法をかけるから、ヌルヌルしているという現実的な要素よりも、めでたい気分になれる方が優先される。

 

 

日本 「目次」

アメリカ人と京都旅行⑪ なんで日本人は自由にお守りを買えるのか?

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let’s多文化:いろんな宗教・アニメ好きの外国人と初詣に行く

日本人の価値観:「バチがあたる」は不合理社会の精神安定剤

ヨーロッパ 「目次」

アフリカ・カテゴリー「目次」

 

1 個のコメント

  • > イギリス人やドイツ人に話を聞くと、日本語に比べれば、あちらの言葉には同音異義語が本当に少ないからこんな文化はないらしい。

    確かに言葉のシャレは少ないですが、携帯メールが普及して以来、英語でも省略語が増えています。その典型が、forを4、toを2、youをu なんて書くやりかた。4u、2u(=for you, to you)って最初は何のことかと思いましたよ。(TVの解像度か何かかと。auの兄弟会社?)
    もっと昔からよく見られたのは、photo -> foto、through -.> thru、expressway -> expwy、national -> nat’l くらいでしたけど。でもこれらは看板が多かったので、だいたい見当がつきました。
    as soon as possible -> A.S.A.P. なんかも昔からありました。和訳すれば「なるはや」かな? 東海岸のキャリアガールやセクレタリーは何かとすぐに「アサップ!アサップ!」って、うるさい人達だった。(みな美人だったけど。)

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。