ロシア軍の恐ろしさ:「安全を約束しよう」を信じた結果…

 

ロシア軍がウクライナへ攻め込んでから、もう2週間ほどが過ぎた。
戦闘員の死亡は戦争だから仕方ないとしても、小さな子供を含めた市民を巻き添えにしてはいけない。
といってもウクライナ側の発表では、すでに2千人以上の一般人の命が失われた。
これ以上の犠牲を防ぐために、いまロシアとウクライナで「人道回廊」と呼ばれる市民用の避難ルートを設置しようと話し合っているところだ。
当たり前の話、ロシア軍は戦地から脱出する非戦闘員に攻撃を加えることはない。
でも、とんでもない話が浮上した。

ニューズウィーク(3/7/22)

some ICRC staff had tried to get out of Mariupol on Sunday, but then discovered the road indicated to them was mined.

Evacuation Route Offered to Fleeing Ukrainians Was Mined—Red Cross

 

ロシア軍が包囲したウクライナの都市マリウポリ(Mariupol)から、脱出するために示された避難路(人道回廊)には、地雷が埋められていると赤十字国際委員会(ICRC)のスタッフが主張したのだ。
この地雷はロシア軍が埋設したものだから、ロシア軍はあえてそこへ市民を誘導しようとしたのか?

以前、ウクライナとロシアに近いリトアニアにいる友人が、メールでこんなことを書いていた。

Considering the news, during a war we must be careful and double or triple check the information we are getting.

戦争についてのニュースにはフェイクが多いから、ダブルチェック、トリプルチェックをして正しい情報を手に入れないといけない。
地雷を埋めた人道回廊に市民を歩かせるなんて、ここまでムゴイとフェイクニュースだろうと思ってしまう。でも、そんな想像を超えたを鬼畜さがロシア軍にはあった。

 

チェチェンと戦争をしていた1999年10月、ロシア軍はグロズヌイを包囲して、市民のいるバザールにミサイルを打ち込むなどして140人を死亡させた。
年が明けて2000年2月、ロシア軍はチェチェン軍に市内から安全に退却できることを約束する。
これを信じたチェチェン軍は地獄を見た。

チェチェン軍を罠にかける。地雷原となっていた退却路に誘き出されたチェチェン軍は壊滅、市長や最高指揮官が戦死、シャミル・バサエフも負傷する。ロシア軍は無人のグロズヌイに凱旋する。市内を徹底的に爆破した後で、市民の帰還が許可された。

グロズヌイ

 

これについては英語版ウィキペデア(Grozny)に詳しい説明がある。
ロシア軍はグロズヌイを包囲したうえで、チェチェン軍には安全を約束した道(a promised safe passage)から退避することを選択させる。
そしてチェチェン軍や市長に地雷原を歩かせたことは上にあるとおりで、さらにロシア軍はそこへ集中攻撃を加えて(concentrated most firepower on that point)殲滅した。
「firepower」とは銃やロケット弾といった火力のこと。
ロシア軍には越えてはいけない一線がないのか。

 

でも分からない。
今回の場合、ウクライナ市民を地雷原へ誘導し殺害して、ロシアにどんなメリットがあるのか?

正しい情報を手に入れないといけない、と忠告したリトアニア人に聞くと、

「It’s not the first and last time they attacked civilians like that. 」
(ロシア軍がそうやって民間人を攻撃するのは、これが初めてでも最後でもない)

と言ったうえで、これによって市民の恐怖心をあおることとや、市民をロシアかベラルーシへ移動させる狙いがあるという。
日本人の感覚だと、マンガ家が考えそうな最も無慈悲で残酷な作戦を、ロシア軍はリアル世界で実行する。
でもそこにシビれることも、あこがれることもない。
早くロシア軍が撤退してほしい。
ウクライナはその安全なら100%保障するはずだし、それは信じてもいい。

 

ロシア軍の猛攻から逃げるウクラナイナ市民が攻撃を受けている。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。