ロシア軍とウクライナ軍の戦力差は圧倒的だ、Bー29と竹やりのようなものだ。
後半はいまワイが作ったものだけど、両軍には絶望的な差があることは間違いなく、米CNNは「ダビテとゴリアテの戦争レベル」と表現した。
でも、ウクライナが予想外の善戦をして、首都キエフは2日で陥落するという西側の予測を裏切り、ロシア軍が2月24日に全面侵攻してから3月1日の今でもキエフを死守している。
この理由に挙げられているのが両軍の士気の違いだ。
母国を守るという一心で、ウクライナ軍の戦意はこれ以上ないほど高いが、ロシア軍には、これから戦闘することを知らずに戦場へ送られた兵士もいるという。
ウクライナの捕虜になったロシア兵が、
「我々はここがウクライナだとは知らなかった。軍事訓練だと思っていた」
「ウクライナ侵攻について知らなかった。プーチンにだまされた」
と叫んだという記事が中央日報にある。(2022.02.28)
「プーチンにだまされた、訓練だと思っていた」 ウクライナに捕えられた20歳ロシア軍人の絶叫
ウクライナ側に捕まったロシア兵が「exercise(軍の演習・訓練)としてここに送られた」と答える動画もあるから、ロシア軍は本当に自国の軍人を“だまして”戦場へ連れて来たのだろう。
ろくな訓練も受けず、まともな装備もないままウクライナへ送られたロシア軍人も多いという。
こんなかわいそうな兵士で思い出したのが、中国人の日本語ガイドから聞いた話。
そのガイドのおじいさんが若くて無職だったころ、学歴や経験は不問で、かなり待遇のいい肉体労働の求人を見つけた。
「機を見るに敏」で、すぐにこのチャンスをつかもうと名乗り出る。
当時、20代前半だったおじいさんは身体検査を受けてみごと合格となり、「よし、これに乗れ」とトラックか何かで現場へ運ばれた。
そして、「よし、降りろ」と言われたところは朝鮮戦争の最前線だった。
1950年~53年にかけて韓国と北朝鮮との間で行われた朝鮮戦争では、アメリカが韓国を、中国は北朝鮮を支持して戦ったことから、中国でこの戦争は「抗美援朝戦争」と呼ばれている。
*「朝(北朝鮮)を支援して、美国(アメリカ)に対抗する」の意味。
抗美援朝(朝鮮戦争)のポスター
「転生したら、そこは戦場だった」という展開はアニメの第一話でありそう。
「求む 肉体労働者」に応募したら車に乗せられて、「どこの工事現場に行くんだろう?」と思っていたら、戦争の最前線へ連れて来られたというのも十分アニメやマンガの世界だ。
でも朝鮮戦争では、それがリアルでガイドの祖父がそんな目にあった。
「聞いてないよぉ~!」みたいなダチョウ俱楽部のノリではなくて、このときいた人たちはパニック状態になって騒ぎ出したけど、「逃げる者がいたら撃つ!」と脅されたから仕方なく軍服を着て、渡された銃を手に韓国・米軍と戦ってじいちゃんは無事に生還することができた。
「衣食住」はすべて支給されたし、賃金も悪くはなかった。何より生きて戻って来られたから、武勇伝として孫の自分によく朝鮮戦争の話をしていたという。
これはガイドから聞いた話だから、完全な事実かどうかは分からない。
でも、そんなことがあってもおかしくない。
あのとき中国はアメリカとの全面戦争になり、第三次世界大戦へ発展することを恐れて、国軍の中国人民解放軍ではなく、「人民志願軍」(中国人民志願軍)という義勇兵を送るというカタチをとった。
それまでの日本との戦争や国共内戦でカネはなかったし、国も疲弊していたけれど、かなりの無理をして中国は朝鮮戦争に参加した。
当時のまだ秩序のなかった中国社会で、国民を“だまして”連れて行くような、かなり荒っぽい方法で義勇兵を集めたことはデタラメな話とも思わない。
でも21世紀のいま、軍のエクササイズ(演習・訓練)と言って自軍の兵士を戦場へ送るのは、控えめに言って異常。
朝鮮戦争とき中国軍は、武装解除した日本軍の武器を使っていたというから、ガイドのじいちゃんもそれで戦ったかもしれない。
約2700年前の春秋時代、「戦わずして勝つ」といういまに通じる戦略思想を生み出した中国の武将で兵法家の孫子は、「兵は拙速なるを聞くも、いまだ巧久(こうきゅう)なるを睹(み)ざるなり」といった。
戦争は下手でも、素早く行動をする方がいい。いくらスバラシイ戦術でも、それが長く続いたというのは見たことがない、といった意味。
戦いは、多少の失敗があってもスピードが大事、いわゆる「兵は拙速を貴ぶ」だ。
(日常生活でも100%になるまで待たずに、70%ぐらいの見込みで早く行動した方がいいこともある。)
それは分かるとしても、電光石火でキエフを落とそうと、ろくな訓練も装備もなしでいきなり戦場へ送り込むというのは急ぎすぎだ。
だから、「我々はここがウクライナだとは知らなかった!」、「プーチンにだまされた!」と叫ぶかわいそうなロシア兵士がうまれることになった。
> ウクライナ側に捕まったロシア兵が「exercise(軍の演習・訓練)としてここに送られた」と答える動画もあるから、ロシア軍は本当に自国の軍人を“だまして”戦場へ連れて来たのだろう。
まあ、その他にも、敵軍に捕まった兵がなるべく罪を軽くして助かりたいがために、自分は悪くない、騙されただけだ、戦うつもりは無かった、などと言い訳する例は多いのですけれどもね。
自国の軍隊を信頼していない兵に多いようです。