【マニュアル人間】米国人が日本人に“イラっ”としたこと

 

マニュアル、きまり、ルールといったものには、それなりの意味や理由があるから守らないと意味がない。
でも、「それは一体どこまで?」ということはきっとどこの国でも問題になる。
それは要するに「人か規則か?」の二者択一だ。
たとえばイギリスの近衛兵がとったこんな行動とか。

 

 

イギリスの近衛兵はバッキンガム宮殿やロンドン塔にいて、石像のように直立不動でじっと動かず警衛をしていて、その姿は観光客に人気でよくSNSに写真がアップされている。
それでも一定のきまりがあって、彼らに近づきすぎると「離れろ!」と怒鳴られるらしい。
そんな職務に忠実で厳格な彼らだから、行進している先に子どもがいても、止めることもよけることもせずに“蹴り倒して”真っすぐ進んでいく。
この振る舞いに対してイギリスでは「彼らは当然の仕事をしたまで」「悪いのは子どもだ」、「いや、あれは無慈悲すぎる」「彼らはもっと配慮するべきだった」といった論議をよぶ。

この場合、悪いのは近衛兵や子どもじゃなくて、そこにいた親でしょ。
撮影に夢中になっていて、自分の子どもから目を離していたのでは?

 

どこの国でも軍人とかのレベルになると、ルールやきまりをとても厳しく守っていて、例外はほぼ認められない。
でも日本では日常生活の場面で、「マニュアル厳守」という越えられない壁を感じるという外国人はよくいる。
欧米人・アジア人・アラブ人、キリスト教徒・イスラム教徒・無宗教と国や宗教に関係なく、いろんな外国人からそんな話を聞くから、これはもう日本人の国民性なのだ。

訪日外国人に日本人の印象を聞くと、自然に列をつくって整然とならんでいるし、電車や地下鉄の中では携帯で話すことなく静かにしているし、街を歩いてもゴミが落ちてないから、「Discipline」(規律正しい、自制心がある、しつけができている)と表現する。
だがしかし、日本人がルールやマニュアルに、そのまま忠実に従って行動することには、違和感を感じたりウンザリする外国人も多いのも事実。

 

たとえば最近、アメリカ人からこんな話を聞いた。聞かされた。

彼がファストフード店でコーヒーを飲みながら、ノートパソコンに向かって仕事をしていると、大学生ぐらいの店員が自分に向かって「失礼します。」とあいさつをして、何かを言うのが聞こえた。
突然のことでよく聞き取れなかったから、「スミマセン、なんですか?」とたずねると、店員は「いまからゴミ袋を交換させていただきます。」と丁寧に言って作業を始める。
ガサゴソやって交換が終わると、「失礼いたしました。」と頭を下げて、いっぱいになったゴミ袋を持って店員が去って行く。

 

 

アメリカ人の彼からすると、このとき一番いいサービスは「黙って交換すること」。
声をかけられて仕事を中断させられると、とくに“勢い”が出ていた時だと正直イラっとくるし、一度思考が変わると思い出せなくなることもある。
しかもこの場合、明らかに自分に対して言ってるから、内容をしっかり確認する必要があると思って聞き返したのに、どうでもいいことだった。
それにアメリカ人の感覚として、声をかけてきた人を無視するのは心苦しい。
だから「お願いします」、「ありがとう」と言うのだけど、それもいちいち面倒くさい。

でも、その店員は自分の意思ではなくて、店のマニュアルに従っただけ。
「失礼します。いまからゴミ袋を交換させていただきます。」と言って客に一礼してからするようにと、店長から言われているのだろう。
でも、そういう対応は客のためにあるのだから、それによって客を不快させては意味がない。

仕事や話をしている人の注意をこちらに向けさせていいのか?
外国人にも日本人と同じ言葉を使うべきなのか?

その場に応じて言動を変えるべきで、どんな状況、どんな人にも同じ対応をする必要はないし、するべきではないと彼は考える。

そもそも何も言わずにゴミ袋を替えて、怒るのは日本人だけだ。(いやそれもレア)
客が外国人なら黙って交換して、もし目が合ったらニコッと微笑むだけで十分だ。(日本人にはそれがむずかしい)
日本で生活していると、「ナンデカナー」と違和感を感じることがたまにある。

 

きまりがあってもソレはソレ、そのときの状況を考えて柔軟に変えることが正解だ。
でも日本人はそうではなくて融通が利かず、「それはできません。ルールなので」とガンとして曲げようとしないところがあって(でも礼儀正しい)、受付に置いてあるロボットのように見えてしまう。
外国人に聞くと、そんな思いをしたという人はけっこう多い。
与えられたマニュアルは、指示されたことをそのまま行う「ギアス(絶対遵守)」じゃないんだから(分かる人だけでいいんだ)、自分の頭で考えて、その場その場の最適解を判断して行動することが大事。

「ルール厳守」は基本いいことだけど、頭が固いというマイナス面になりやすいことは、「マニュアル人間」という言葉もあって日本人もよく分かっているから、ネットや雑誌でよくそんな対応を批判する記事を見る。
だから逆に、その場でとっさにナイス判断をして、外国人をよろばせるような人は輝く。

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「ルール厳守」は日本人のすごくいいところだし、そうしていれば考えてなくて済むからすごく楽でもある。
マニュアルやルールを知らないというのは論外として、それを踏まえたうえで破ると、評価されることの方が多いと思うのですよ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。