ロシア軍がウクライナへ侵攻した理由・戦意を喪失したわけ

 

ロシア軍がウクライナに戦争をしかけてから、早くも1か月が過ぎた。
プーチン大統領は数日で首都キエフを陥落させて、ゼレンスキー大統領を引きずり落とし、自分たちの意のままに動く傀儡政権をつくろうと考えていたらしい。
世界第二位の軍事力を誇るロシアならそれが可能に見えた。
でも実際には、いまだにロシアはそれをできていないどころか、ウクライナ軍は反転攻勢に出てキエフではロシア軍を押し返すことに成功した。

この思わぬ苦戦の原因は何か?
ウクライナの粘り強い抵抗は当然として、武器や資金を渡してそれを支える外国の存在も大きい。
ほかにも短期決戦を考えていたロシア軍では燃料や食料が不足しているし、この「プーチンの戦争」には賛成できず、ウクライナと戦いたくないロシア兵が山盛りいて、士気の低下がいまかなり深刻になっている。
ロシア軍内で交わされた無線通信では「村を砲撃せよ」という命令を受けても、「民間人が離れるまではできません」と拒否することがあったという。
戦争中に軍隊内で命令に逆らうなんて考えられないことなんだが、戦意を喪失して秩序が崩れつつあるロシア軍では、いまこんなことが起きていると海外メディアが伝える。
ロシア軍にはいま自分たちがどこへ進んでいるのか、これから何をするのかわかっていない兵士もいて混乱が広がっている。
ロシアの通信技術はわりとポンコツで、西側の技術をもってすれば盗聴や傍受やそう難しいことではないらしい。

やる気が著しく低下しているから、戦うこともせずに投降する部隊があれば逃げ出す兵士もいるし、なかには本国へ送り返されるために、ウクライナ軍の銃で自分の足を撃つ軍人もいるという。
対してロシア軍は、脱走兵には死を与えているという報道がある。

中央日報(2022.03.24)

「脱営時は射殺」命令にパニック…ロシアの軍人が自分の体にしたこと

捕虜のロシア兵が「ウクライナ戦線から逃げるすべての兵力を射殺しろという命令が下った」と証言したことをウクライナ保安局が明らかにした。

 

いまのロシア軍の苦戦や停滞の理由に、兵士らの「戦意喪失」があることは間違いない。
その原因についてこのまえポーランド人と話をしていたら、それにはロシア軍の「カン違い」があると聞いた。
数十年前までロシア(ソ連)の支配を受けていて、ウクラナイナと国境を接しているポーランドの人たちはいまの事態を本当に深刻に受け止めていて、日々いろいろな情報が発信されている。
そのなかの一つで、あるメディアがこんな報道をしたという。

自分たちがウクライナへ攻め込めば、親ロシアやゼレンスキー大統領に反対しているウクライナ人が呼応して、一緒にキエフへ攻め込むことができるとロシア側は考えていた。
でも侵攻してみると、自分たちを「解放軍」と歓迎してくれるウクライナ人は予想外に少なく、逆に「侵略者め!」と憎悪の対象にされることが多い。
ウクライナに来て初めて予想と現実との残酷な違いを知って、多くのロシア兵は戸惑ったりショックを受けて、この戦争の目的を見失ってしまった。
これが士気を低下させて、ロシア軍で降伏や脱出が止まらない現状につながっているとポーランドメディアが報じたと。

 

キエフでカウンターアタック(反撃)しているウクライナの兵士

 

ウクライナへ攻め込めば、現地の人たちは自分たちロシア兵を「解放軍」と歓迎してくれる。
そんなのは異世界ファンタジー小説の中にある話で、現実感はゼロのように聞こえるけど、知人のドイツ人には、ロシア人がそう信じる要素はあるという。

同じウクライナに住む人でも、価値観や考え方は一つではない。
そのドイツ人は大学時代、同じウクライナ人なのに西部と東部出身の人では仲がめっちゃ悪くて、まったく口をきかなかったのを見て驚いた。
外国人の自分は中立だから話を聞くと、ウクライナ東部には親ロシア勢力があって、自分はウクライナ人ではなくてロシア人と考えている人も多い。
西部出身のウクライナ人はそんな考え方のウクライナ人が嫌いで、東部の人は価値観を押し付ける西部の人間やウクライナ政府を嫌っていた。(ドンバス戦争
そんな対立を知っていたから、ウクライナ東部ならロシア軍を「解放軍」として歓迎して、一緒に戦う可能性はあると彼は考えた。

プーチン大統領はゼレンスキー大統領を「ネオナチ」と決めつけて、ウクライナ政府は東部で民族虐殺を行っているから、ロシアはそうした人たちを守るために軍を動かしたと自身の侵略を正当化した。
もちろん国際社会でこんな主張は認められていない。
*かつてのアゾフ大隊は「過激な民族主義者」、「ネオナチ」と言われていたがいまは違う。

でも国内では徹底的な情報統制もあって、プーチン大統領の言うことが確かな真実と報じられて、それをまともに信じたロシア兵も多かったはず。

中央日報のコラムにはこう書いてある。(2022.03.24)

捕虜として捉えられた兵士が家に電話をかけて事実を知らせても両親まで子どもの話を信じない。政府のウソに完全に洗脳されてしまったのだ。

プーチンの想像界(1)

 

それで「抑圧からウクライナの人たちを解放するため」とか、「ナチスから救うため」とホンキで考えて来てみたら、ウクライナの人たちから石を投げられた。
これに衝撃を受けて戦意を喪失する。
それで逃げ出すロシア兵がいるというのは不自然な話でもない。

でもそしたら今度は、「ウクライナ戦線から逃げるすべての兵力を射殺しろという命令が下った」というのだから、この地獄から“合法的”に逃げ出したかったら、自分で自分の体を撃つしかない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。