【家康の顧問】初のヨーロッパ人侍、ウィリアム・アダムス

 

400年ほど前にタイムスリップして、関ケ原の戦いのあった1600年の日本をみてみると、ちょうどいまごろの4月19日に、ウィリアム・アダムスヤン・ヨーステンを乗せたオランダ船のリーフデ号が豊後(大分)に漂着した。
これにはいくつかの「日本初」がある。

・オランダ語で「愛(Liefde)」を意味するリーフデ号は、日本へやって来た初めてのオランダ船となる。
・ウィリアム・アダムスは日本へやって来た初めてのイギリス人(イングランド人)。
・アダムスとヨーステンは後に、ヨーロッパ人として初めてサムライになった。

ちなみに日本(世界)初の外国人侍は、織田信長を主君にもつアフリカ人の「ヤスケ」だ。
ほかの「ガイジン侍」についてはここをクリックされたし。

海外出身の武士の一覧

 

21世紀のいまなら、日本からオランダへ行くには機内でコーヒーでも飲みながら、映画を見たり仮眠をとっているうちに着いてしまうイージーモード。
でも、400年前は生きるか死ぬかの大冒険。
1598年に5隻の船団でオランダのロッテルダムから出航して、そのあと悪天候に見舞われたり沈没したりで、日本へ着いたころにはリーフデ号だけになってしまった。
110人ほどいた乗組員ものうち、生きて日本へ到達したのは24名のみ。
大分に漂着したとき自力で立つことができたのは6人だけで、その後もバタバタと亡くなって、最終的に生き残ったのは14人だった。

日本へ着いたころも、ヨーロッパ人に殺されそうになる。
アダムスとヨーステンが同じ船に乗っていたことからも分かるように、このころイギリスとオランダは同じプロテスタントの国として、カトリックのスペインに対抗していたから仲はかなり良かったのだ。
先に日本にいたスペイン人やポルトガル人のカトリック宣教師にとっては、異端のイギリス人やオランダ人は滅すべき敵でしかない。
だから、彼らを即刻処刑するよう主張した。

でも、アダムスとヨーステンと会って話をした徳川家康は、彼らがナイスガイと分かって気に入り、2人を日本初のヨーロッパ人サムライにする。
ちなみに関ヶ原の戦いで、家康はリーフデ号にあった大砲を使って西軍を攻撃したという話がある。
日本人と結婚して、現在の千代田区にあたりに住んでいたヤン・ヨーステンに由来して「八重洲」の地名ができた。

 

 

ヤン・ヨーステンもウィリアム・アダムスも、徳川家康を主君とするサムライだ。
でも歴史的に重要なのは、外国使節の対応や外交交渉で幕府の通訳として活躍し、家康に信頼される外交顧問になったアダムスのほう。
船大工だったアダムスはその経験をいかして、日本初の造船ドックをつくって西洋式の船を日本で初めて建造し、さらに120トンの大型船も完成させた。
「こいつはデキる!」と見込んだ家康はアダムスを旗本にとりたてて、いまの神奈川にある逸見(へみ)の領土と三浦 按針(みうら あんじん)という日本名を与える。
旗本とは徳川将軍家直属の家臣団で、一般的には「殿様」と呼ばれる身分だから、ウィリアム・アダムスは形式的には侍を超えてお殿様だ。

英語版ウィキペデアをみると、将軍(家康)はアダムスを気に入り、外交・通商の顧問に任命して大きな特権を与えたと書いてある。
そしてアダムスは西洋列強と文明に関するすべての事柄について、家康に助言するパーソナル・アドバイザーになったという。

Taking a liking to Adams, the shōgun appointed him as a diplomatic and trade advisor, bestowing great privileges upon him. Ultimately, Adams became his personal advisor on all things related to Western powers and civilization.

William Adams (pilot)

*「按針」とはパイロット(水先案内人)の意味

 

アダムスの地位は家康の個人的な信頼によるところが大きい。
ということで生前はイロイロあった家康が1616年に亡くなって、次の徳川秀忠の時代になると、アダムスはほとんど相手にされなくなり、不遇のまま1620年に55歳で遠い島国でこの世を去る。

世界初のヨーロッパ人侍になって家康の「personal advisor」だったアダムスは息を引き取るとき、1598年にロッテルダムから出航した自身の決断をどう思ったか。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。