【対馬の仏像】盗品を返還しない現状に、韓国からも批判の声

ルーブル美術館にある人類の至宝、それがレオナルド・ダ・ヴィンチの描いた『モナ・リザ』だ。
フィレンツェ共和国（現在のイタリア）の生まれで、ルネサンス期を代表する芸術家である彼が残したこの作品は、

「世界でもっとも知られた、もっとも見られた、もっとも書かれた、もっとも歌われた、もっともパロディ作品が作られた美術作品」

なんて言われる傑作。

いまならルパン三世でもキャッツアイでも不可能だろうけど、１９１１年にこれがルーヴル美術館から盗まれた。
犯人は、かつてルーヴル美術館で働いたことのあるイタリア人のビンセンツォ・ペルージャ。
その動機は「愛国心」でイタリアを愛する彼は、イタリア人であるレオナルドの作品はイタリアの美術館に保管されるべきだと信じていたという。
でも、そんな自分勝手な考え方が通じるはずもなく、フィレンツェの美術館に『モナ・リザ』を売却しようとして逮捕された。
この作品は母国にしばらく滞在した後、フランスへ戻される。

イタリアに持ち込まれていた『モナ・リザ』は、そのままイタリア中で巡回展示された後、1913年にルーヴル美術館に返却された。ペルージャはイタリアで裁判にかけられたが、愛国者であると賞賛され、投獄されたのは6か月に過ぎなかった。

モナ・リザ

さて韓国では新政権が発足して、前政権で「戦後最悪」となった日韓関係の改善が期待されている。
ではここで温故知新、２０１６年に外務省が公開した資料「最近の日韓関係」を確認してみよう。

・竹島をめぐる問題
・慰安婦問題
・朝鮮半島出身の「旧民間人徴用工」をめぐる裁判
・日本産水産物等の輸入規制
・日本海呼称問題
・仏像盗難事件

こう見ると１６年以降、文政権下の韓国で国家間の約束が破られて、関係改善のハードルが上がっていることが分かる。
それでも日本と韓国は協力していかないといけないから、とりあえず一番下の問題を解決してはどうか。

２０１２年に韓国の窃盗団が対馬の寺から仏像を盗み出し、韓国へ持ち込もうとしたところ見つかって逮捕された。
そして盗まれた仏像は元のお寺に戻されて一件落着、といかないのがいまの日韓。
この事件が知れ渡ると韓国の浮石寺が所有権を主張し、なんと裁判所もそれを認めてしまい、外務省が関係悪化の原因に指摘するほどの外交問題に発展する。

日本政府や外務省もがんばっているのだろうけど、この盗難事件から１０年が過ぎても仏像は返還されず、いまも韓国にある。
それでとうとう、盗まれた対馬の寺のお坊さんが韓国を訪れて今月１５日、裁判に初めて直接参加することになった。
個人が韓国の法廷で早期返還を訴える前に、日本政府や韓国政府が何とかしてほしかったのに。

ただ、竹島・慰安婦・元徴用工・日本海呼称問題などとは違い、仏像盗難事件については「日本へ戻すべきだ」という意見が韓国でも多い。

そもそも調査を行った韓国文化財庁が「略奪文化財という確証ない」と認めているし、外国から盗んだモノを返さないという事実は韓国の名誉や信頼を傷つける。

朝鮮日報（2017/01/27）

対馬仏像：専門家「略奪文化財認定、韓国は国際的な信用を失った」

韓国の多くの専門家も、もしこれが本当に韓国の寺から略奪された文化財だったとしても、「適法な手続きによって返さなければならない」と主張する。
匿名希望の国際法の専門家はこう話した。

韓国人が盗んできたことがはっきりしている文化財を「韓国のものだ」と主張するのは国益のためにならない

韓国社会にある「反日愛国」の壁の前では、「これで韓国は国際的な信用を失った」という意見を実名で言うことはできない。

国際社会の目だけではなくて、これが日韓関係を悪化させていることに負担を感じる人も多い。
朝鮮日報で韓国文化遺産研究院長のパク・サングク氏がド正論を放つ。（2018/09/24）

われわれも自らとらわれている思い込みから抜け出し、浮石寺自ら中心となって観世音菩薩座像を対馬に堂々と返還すべきだ。

【寄稿】対馬の仏像を日本に返そう

この件では、仏像が韓国から略奪されたかどうかは分かっていない。
でも韓国の窃盗犯が、日本のお寺から盗み出した盗品であることはハッキリしている。
だから韓国の国際法や文化財の専門家は、日本に返還されていない現状は「感情的になっているように思える」し、「行き過ぎた愛国主義」は国益にプラスにならないと指摘する。

ここはもう「モナ・リザ方式」で、韓国で数か月ほど展示した後、対馬のお寺へ戻すというのはどうか。