日本仏教とプロテスタントの共通点 親鸞とルターの結婚解禁

 

2600年ほど前、インドで生まれた仏教。
その後東南アジアや中国などへ伝わっていき、日本には6世紀にやってきた。
元は同じでも日本仏教はほかとは違っていて、お坊さんが結婚することも肉を食べることもOK。
それを知って、「いやいやいや、それはあり得ないし、あってはいけないことですっ。女性と結婚する僧なんて、もう仏教僧とはいえませんよ!」と驚いたり怒ったりしたタイ人やミャンマー人、「それはニセの仏教です」とあきれた中国人に会ったことがある。
韓国のお寺で、韓国では結婚が認められている仏教のグループがあると聞いて「へ~」と思ったら、それは日本統治時代に日本から伝わってできた宗派だとか。

ただ、ひとつ誤解を解いとくと、日本仏教も江戸時代までは妻帯を禁止していたのだ。
ただひとつ、浄土真宗を除いては。
浄土真宗だけは、宗祖の親鸞(1173〜1262年)が妻をめとって、それを隠さなかったから結婚が”伝統”になる。
男が女と結ばれて子どもを産むのは人間として自然な行為。
そんなヒトとして当たり前の生活をすると、救われないという仏教の考え方はおかしい。
結婚と仏法は矛盾しないということを親鸞は身をもって示したのだと思う。

その後、1872(明治3)年にようやく時代が親鸞に追いついた。
明治政府が「これより仏教僧は肉を食っても結婚してもよし!一般人と同じ服を着てもOKだ!」と全面解禁して、ほかの宗派の僧もそうするようになる。
*「今より僧侶の肉食・妻帯・蓄髪は勝手たるべき事、但し法要の他は人民一般の服を着用しても苦しからず」(太政官布告第133号)

こんなことが起きたのは日本だけだから、いまでは外国人を驚かせたり怒らせたりする。

 

マルティン・ルター(1483年 – 1546年)

 

親鸞のように、それまでの宗教の常識をぶち壊した改革者にドイツのルターがいる。
「金を出せば罪(による罰)が許される」というローマ・カトリック教会のやり方に抗議し、1517年に宗教改革を行って、プロテスタントという新しいキリスト教のグループをつくり出したのがルター。
彼は1525年のきょう6月13日、カタリナという元修道女と結婚した。
ローマ・カトリックは聖職者には独身主義を要求して、結婚なんて認めていなかったから、2人は正面からそのタブーを破ったことになる。
ルターのこの行為によって、プロテスタント教会では牧師の結婚という伝統が生まれて現在にいたり、カトリック教会では独身主義の伝統が現在までつづいている。
カトリック聖職者に批判的だったルターはプロテスタントではそんな「特権階級」はつくらず、牧師も一般の信者と平等な立場と考え結婚を禁止しなかった。彼はこれをキリスト教の考え方と矛盾しないと考えた。
宗教に教えに沿って、信者と僧(祭司)を同じ人間とみて結婚を禁止しなかった点で親鸞とルターは似ている。

では、東南アジアの仏教やカトリック教会のような独身主義と、日本仏教やプロテスタントのような「結婚も可」ではどっちが正しいのか?
その答えは、判断する人の立場や考え方によって違うが、知人のドイツ人はこんな理由から、妻帯を認めるプロテスタントを支持している。

AFPの記事(2018年9月13日)

ドイツでも聖職者の児童性的虐待が発覚、被害者3600人超

ドイツで1946~2014年の間に、ローマ・カトリック教会の聖職者1670人が未成年者3677人に性的虐待を働いていたことが発覚して大騒ぎになる。
エジキになった未成年のほとんどが少年で、半数以上は被害当時13歳以下だった。
元となった報告書は破棄されたり改ざんされていたから、実際の被害はおそらくもっと大きい。
聖職者による少年への性的虐待はドイツだけはなく、世界各国で起きていて、カトリック教会の権威や信用は地に落ちた。
知人はこういうおぞましい犯罪行為の原因に、独身主義があると思っているから、結婚を認めるプロテスタントの考え方に賛成の立場だ。
個人的にも、人間の自然な欲求を禁止しない親鸞(日本仏教)やルターのやり方のほうがいいと思う。

 

 

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2 件のコメント

  • > 日本仏教も江戸時代までは妻帯を禁止していたのだ。
    > ただひとつ、浄土真宗を除いては。

    それはタテマエだけの話であって、事実は違います。そのことは、現在のNHK大河「鎌倉殿の13人」とか見てもすぐ分かる。
    でも結局、聖職者に一夫一婦制の妻帯を認めないようでは、そんな宗教は説得力がないと私も思いますけどね。

  • >それはタテマエだけの話であって、事実は違います。
    それはどの宗派で、結婚を認めた理由はなんでしょうか?

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。