【呪いの儀式】日本とアフリカ式の違い・ワラ人形の不思議

 

千葉県松戸市にある神社で、プーチン大統領の顔写真の付けられたワラ人形が、五寸釘でご神木に打ち付けられているのが見つかってニュースになった。
人形のおでこには「凶」の文字が書かれていたとか。

これにネット民の声は?

・それをウクライナに送ろう
千羽鶴より喜ばれると思う
・西側プロパガンダにまんまと踊らされている。
・笑人形
・むかし東急ハンズで呪いの藁人形セットを売ってた
・マッドシティ

これには続報があって、この件で70代の男性が建造物侵入と器物損壊の疑いできのう逮捕された。
この罪状なら、おでこの文字が「凶」じゃなくて「肉」でも同じか。
結果的にプーチン大統領にはノーダメージで、ご神木だけが傷ついたという罰当たりなオチ。

 

さて去年、日本にいるタンザニア出身のアフリカ人と話をしてたら、「呪術(呪い)」の話題になった。
恨みがあって傷つけたり殺害したいと思う人間がいたら、魔術師に相談して、相応のカネや報酬を渡せば呪いの儀式をしてくれる。
そんなことはタンザニアをはじめ、アフリカ各国であるという。

彼は直接その被害にあったことはないが、急に原因不明の腹痛におそわれて、病院で診てもらっても理由が分からず、医師から呪術師を紹介された友人はいるらしい。
その呪術師が見た(診た)ところ、ダレかに狙われていることが判明して、すぐにその呪いを無効化する「アンチマジック」の儀式をしてもらったところ、身体の痛みはすっかりなくなって心身ともに完全復活した。

信じるかどうかは聞いた人に任せるとして、この手の呪い話はアフリカではよくある。
ただそういうイメージが強すぎて、日本語のYouTube動画には「アフリカの魔法がヤバすぎ!」みたいな大げさでうさんくさい内容が多かったから、ここでは信頼の「ナショナルジオグラフィック」の動画を紹介しよう。
タンザニア人は歌・踊り・鶏などの生贄が儀式で使われると言っていたから、このガーナの呪術と同じようなものだろう。

 

 

日本人にもアフリカ人にとっても人間関係は複雑で、「呪われたらいいのに」と思う相手が出てくることもある。
そしてやり方の違いはあるとしても、日本にもアフリカにも伝統的な呪いの儀式はある。
日本では何といっても「呪いのワラ人形」が有名で、それに関心を持ったタンザニア人は「とても興味深い。で、それはどんな仕組みなんだ?」と聞いてくる。
仕組み、だと?

「丑の刻参り(うしのこくまいり)」といわれるこの儀式は、丑の刻(午前1時~3時ごろ)の深夜に神社の神木に呪う相手を思い浮かべながら、ワラ人形を釘で打ち込む。
白装束の女が頭に火のついたロウソクのある鉄輪をかぶって、毎晩コレをおこなうと7日目に相手が死ぬという。
もし、他人にこの行為を見られると儀式が失敗し効力が失せて、その呪いが自分にかかってくるから、目撃者を殺さないといけない、なんてオソロシイ話もあり。

歴史的には、胸に鉄釘が打ちこまれた8世紀の木製の人形が発見されているから、奈良時代にはこうした呪いの儀式があったと考えられている。(丑の刻参り

 

 

では、人形に釘を打つと、なんで相手はその部分に痛みを感じたり死に至るのか?
ボクは「こうすればこうなる」という因果関係を知ってるだけで、そのシステムを考えたことはなかったら、彼の質問には答えられず。

逆にアフリカの呪いのはどうなのか?

話を聞くと、アフリカでは呪術師が「ジン」をあやつって相手に危害を加えるという。
ジンは主にアラブ・イスラム世界にいる、人でも神でもない不思議な存在で、怪力を持っていたり空を飛んだりすることができて、さらに人間のような思考力をもっている。
日本語では精霊、妖怪、魔人と表現されるけど、日本にはいない超自然的な生き物だから、ジンはジンと言うのが正確だ。
『アラジンの魔法のランプ』で、アラジンがランプをこすると出てくる魔神がジン。
日本にいるトルコ人は、天狗がジンのような存在と言っていた。

海外の魔物:日本の天狗は、トルコやアラブでは「ジン」?

 

1802年に描かれたジン

 

呪術師がこのジンを使って、相手を攻撃するというのがアフリカ式呪いのスタイル。
ジンをあやつることができるのは呪術師など特別なパワーをもつ人だけだから、日本の「丑の刻参り」では、そんな専門家に頼まずに一般人が道具をそろえて自分でおこなうと話すと、「普通の人間がそんな呪術を使えるのか?」と彼は意外そうな顔をする。
怨念の強さで、人は鬼に変わるんじゃないの?しらんけど。

彼の疑問は、ワラ人形に釘を打ち込んだ後のことで、その後どうやって対象者に痛みを生じさせるのか?
ジンのような存在が飛んで行ってそれをするのか、それとも何か他のやり方があるのか。

この儀式では人形と相手をリンクさせるために、ワラ人形にその人物の髪の毛を埋め込むと言う話は聞いたことがある。
でもそれだけで、釘を刺してから相手が痛みを感じたり、命を失うまでの具体的な仕組みや過程なんて知らない。
ネットで調べてみても見つからない。
「丑の刻参り」の呪いはどうやって発動するのか、そのシステムを知ってる日本人なんてほとんどいないだろう。
「すまんが知らんわ」ということで、この話はこれで終了。

 

この後、あえて言えば「式神」がジンにあたるかなと思った。
アフリカの呪術師が命令を出すか、お願いをして動かせる存在がジンなら、陰陽師が呼び出して、意のままに使役できる式神はそれに近い。

 

陰陽師の安倍晴明が物の怪と対面して、その傍(かたわ)らに2匹の式神が付き従っている。

 

そう思って調べてみたら「丑の刻参り」にも、神木に釘を打って結界を破ることで、常夜(夜だけの神の国)から魔や妖怪を呼び出して、それを使役して相手に危害を加えるという発想があった。(式神
やっぱり呪いが効力を発揮するには、それなりのタネや仕掛けがあるらしい。
まあ、こんなことをしないで済むのが一番なんだが。

 

 

アフリカ 「目次」 ①

アフリカ 「目次」 ②

【富士山とキリマンジャロ】在日タンザニア人が話す共通点

【英雄ケニヤッタ】白人のキリスト教徒がアフリカでしたこと

アフリカから貧困がなくない理由 「国に貧しさが必要だから」

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。