【インフラとIT】インド人が日本の生活で感じた不満・満足 

 

6月21日は「キャンドルナイトの日」だ。
2001年にカナダで始まった停電運動にちなんで、日本の「100万人のキャンドルナイト」事務局がこの記念日を定めて、エコと節電を呼びかけているらしい。
何でもないことが幸せだったと思うのは、それを失ったときだ。
日本人なら発展途上国に行くと、フツウが当たり前じゃなかったことによく気づく。

20年ほど前にインドを旅行していて、1泊約200円のやっすい宿に泊まったとき、鍵をもらって部屋に入ると、ベッドの横の台にロウソクとマッチが置いてあるのを見つけた。
ステキな香りに包まれるようなお香ではなくて、どう見てもこれは実用的なロウソク。
フロントで聞いたら「それな、停電したときの備えだよ。電気が消えたら、そのロウソクを使ってくれ」と言う。
イヤな予感がしたから確認すると、もしロウソクを使っても、その料金は部屋代に加算されないということを聞いて安心した。
その夜、さっそくロウソクさんの出番がやってくる。
ベッドに寝転がりながらガイドブックを開いて、次の観光地の宿や名所の情報を集めていると、とつぜん部屋が闇につつまれた。
事前に聞いていたから「これか」と感じただけだったけど、フロントは客にカギを渡すとき、停電とロウソクのことを伝えておくべきでは?
でもインド人は細かいことは気にしないし、こんな安宿で日本人みたいな配慮やサービスを期待するのは、象にバク転しろと言うようなもの。

インドの「キャンドルナイト」で一番困ったのはトイレ。
20年以上たったいまでも、そのときの光景とニオイがよみがえってくるほど、そこは激しく汚くクサくて、そしておそろしく狭かった。
ロウソクを置くところがなかったから、それを持ったまま片手だけで、トイレで要求されるすべての“作業”をしないといけない。
これはかなりハードで、ムダに時間やエネルギーを使って汗だくになってしまった。

 

きょねん日本に住むインド人とご飯を食べていたときにそんなインド体験を話して、いまのインドの停電事情についてたずねてみた。
すると彼が住んでいた首都デリーでは、いまでも電気が止まるというからビックリ。

そのインド人が日本へ来てから、驚いたことの一つに”後進性”がある。
たとえば銀行で口座を開くには手書きの文書にハンコが必要で、さらにカードが送られてくるまで10日かかるというありえない体験をした。
IT化が進んでいるインド社会なら、デバイスとネットを使って1時間ほどで口座を開いてカードももらえる。
このほかにも日本で働いていると、手書きの作業やファックスで文書を送信することがあって、インドに比べIT化が遅れていると感じることがある。

彼がそう話していたインドで、しかも首都でいまでも停電が起こるとは思わなかった。
ただ、20年前のように「とつぜん」ではなくて計画停電だから、事前にいつ、どのぐらい電気が止まるか知ることができる。
それに彼の家には自家発電機があるから、停電になってもノープロブレム。
でもインドはスーパー格差社会だから、いまでも生活水準は20年前と変わらず、ロウソクを持ってトイレに行かないといけない人もいるらしい。

そんな話をするインド人が日本で感心したのは、インフラストラクチャーがすごくしっかりしていること。
これまで日本に住んでいて停電したことは一度もなかったし、ガスや水道についてのトラブルもないから、すごく安定した生活ができる。
道路もインドみたいに穴が開いてたりデコボコしてないし、夏になるとアスファルトが「溶ける」こともない。

日本の道はすごい!暑いインドは、道が溶けて蚊も飛べない。

それに何か問題が起こると日本人はすぐに対応するから、公衆電話が壊れっぱなしになってるとか、穴の開いた道路が放置されてることもない。
インドの役所は市民生活のことをほとんど考えていない。
だからなかなか動かないし、市民もそれに慣れてしまったから悪循環におちいっている。
IT化については、日本にはその技術はあるけど、日本人がそういう生活を選択しないだけだと思う。
細かい不満はいろいろあっても、日本の生活基盤はしっかりしていて信頼できるから、安心して暮らすことができる点はすごくいい。
カネによって生活の質が天と地、どうしようもないほど離れているインドと違って、日本では所得の低い人でもいい生活ができる。(もちろんインドと比べて)
日本のこうした生活に慣れてしまったから、いつかインドへ戻ることを考えるとウツになる。

そう話す知人は日本での生活については、全体的には不満より感謝のほうが多いから満足度は高い。
彼の家はインドでは「お金持ちゾーン」にあるから、もともとの生活はインドの平均よりもずっといい。
日本ではインフラが充実していて広く行きわたっているから、これもインドとの比較だけど、「最低ライン」がすごく高い。

 

そんな日本がいまピンチ。
ことしの夏は電力不足が予想されているのだ。
予想というか、最低限必要とされる予備率が3%なのに対して、中部・東京・東北電力管内で7月の予備率は3.1%しかないから、夏の電力不足はもう確定している。
それで萩生田経済産業相が記者会見で「予断を許さない状況が続く」、「できる限りの節電に協力をいただきたい」と訴えた。
それは仕方ないとしても、そのとき提案した方法が衝撃的だ。
「家庭で部屋に分かれてエアコンを使うのではなく、ひとつの部屋に集まってもらうような試みをしてもらうことで乗り越えていける」と呼びかけた大臣に国民はこう思った。

・コロナと同じで国民にお願いするだけ
・去年より酷くなってね?今まで何しててん?
・もはや貧困国の思考だな。
・最高に頭悪い
・とっとと原発動かせ
・じゃあまずは経産省はじめとする官庁や首相官邸、国会議員会館とかで実行しよう
・茶の間でHな映像流れて家族が凍るような懐かしい体験がまた出来るな

ただ、いまは止まっている火力発電所を再稼働させる案も出ているから、事情が変われば「一家団らんの強制」は避けられる。
どちらかというと、冬の電力需給のほうがもっと深刻というから、こんな事態はしばらく続きそう。
日本人も家にロウソクや自家発電機を用意するようになって、これからインドに近づくかも。

 

 

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2 件のコメント

  • > 6月21日は「キャンドルナイトの日」だ。
    > 2001年にカナダで始まった停電運動にちなんで、・・・
    ???
    おそらく「節電運動」ですよね。あるいは「自宅をわざと停電状態にする運動」の省略形なのかな?

    > IT化が進んでいるインド社会なら、デバイスとネットを使って1時間ほどで口座を開いてカードももらえる。
    彼にとって、デバイスもネットも使えないインド国民は、インド人ではないのでしょうね。

    とは言うものの、実は、そのような考え方の方が世界における標準なんです。むしろ日本人の方が特殊。
    日本以外の国はどこも「スーパー格差社会」か「全員貧乏平等社会」か、そのどちらかですよ。「一億ほぼ総中流だが多少の格差もある社会」は、世界で唯一日本だけです。しかも総人口が一億人以上でですよ!
    先人たちが成し遂げたこの現代日本社会は、人類の偉大な成果であると言ってもよいと思います。
    この現状をさらに改善させるのは誰の手でも難ししょうね。これ以上は「見えざる神の手」だけでは望ましい方向にもはや動きそうにない。神ではない人間が何かを変えれば、メリットがあればデメリットも出てくる、それが当然です。
    日本人は(無意識あるいは本心では)現状から何も変えたくないのでしょう。

  • もう一度確認してみましたが、カナダでの運動は「停電運動」で間違いないです。
    アメリカ政府に対抗したものです。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。