日本と欧州、文化の違い:ドイツ人が“ナイフ所持”で驚いた理由

 

いま警視庁がこんな注意を呼びかけている。

 

 

家族や友人とキャンプに行って、BBQを楽しむ人はいまの日本では全国のどこにでもいる。
アウトドアで食材を切るのはいいんだが、刃物を車内に入れっパにしていて、警察に摘発される事例がいま続出中。
それで警視庁は『ゆるキャン△』に協力してもらって、「置きっぱなしはだめズラ!」と注意を喚起するポスターを作って各所にはり出している。
ちなみにこの「ズラ」は山梨県の言葉(甲州弁)で、頭髪の有無は関係ないようだ。
いまの日本では目的のない刃物の携帯は禁止されていて、見つかると罪に問われるから特に夏は要注意だ。

これにネット民の感想は?

・家庭菜園用の鎌や鍬積んでても逮捕されるぞ
・ゆるキャンが無かったらこの仕事は妖怪ウォッチのコマさんがやってそう
・煽り運転された時の護身用だろ
知らんけど
・天気のいい日はよく草刈り枝切りするから
鎌とかのこぎりとかずっと車載してる
・たまに仕事で使ったカッター机に戻すの忘れてポケット入れっぱなしで電車乗ってるわ
見つからないかドキドキする

 

 

日本では殺傷力のある銃、クロスボウ、刀などを許可なく持っていると、銃刀法違反で警察に捕まってしまう。
ナイフもこの法律の対象になっていて、基本的に刃の長さが6㎝以上のモノはアウト。
だから6㎝のナイフを持っているのを警察に見つかると、1月以上2年以下の懲役または30万円以下の罰金が適用されるかも。

日本に住んでいたことのある知人のドイツ人にとって、この法律、銃刀法はまさにサプライズ。
日本に何年も住んでいて、生活事情にくわしいドイツ人ユーチューバーの動画を見て、彼はその衝撃の事実を知ったという。
「日本では、バッグにナイフを入れて街を歩くと警察に捕まるゾ!マジで気をつけろ!」とユーチューバーが言うのを真に受けて、知人は日本滞在中、そのことに注意していた。
ただ包丁やナイフを持っていても、それが必要な正当な理由があれば銃刀法は適用されない。
だから万が一のときは、その事情を警察に説明すればいいとボクが言っても、「それは君が日本人だからさ」と彼はこんな話をする。

日本の警察は外国人には差別的だから、バッグを持って街を歩いている外国人を見ただけで、呼び止めて職務質問をする。そして中にナイフが入っていたら、日本語でうまく説明できないと逮捕されてしまう。
そうならないように、われわれ外国人は日本でナイフを持って出歩いてはいけない。
この国ではスイスナイフでさえダメだ。

どこでそんな偏見まみれのアヤシイ情報を入手したのか聞いたら、複数のユーチューブ動画でヨーロッパ人が同じことを言っていたという。
たとえばあるイタリア人は日本でこんな不快な経験をした。
彼が公園のベンチに座ってリンゴを切って食べていて、しばらくしたら、警察官がやってきて職務質問をする。
理由を話すと「わかりました。」で終わって、特に問題になることはなかった。
チョット納得がいかず、職質をした理由をたずねると、「『刃物を持った外国人がいる』と日本人から通報があったから、とりあえずこうして駆け付けた」と警察官が言う。
「なるべく外で刃物を見せないください。」と言われてイタリア人がビックリし、その動画を見てドイツ人の知人も驚いた。
そんな彼はいまはブレーメンにいるから、こんな注意情報はもう必要ない。
ドイツで刃物の所持が問題になるのは長さ次第で、果物ナイフならOK。
でも移民なら、たぶん果物ナイフもアウトになると言う。

 

ただ、それは刃物を持って出歩かなければ問題にならないから、ボクとしては、そもそもドイツ人やヨーロッパ人がナイフを持って外に出る理由がよく分からない。
「キャンプで入れっぱ」なら分かる。
で、知人にそれは護身用かと聞くと、そのケースは本当に少なくて、ヨーロッパ人にとってナイフは生活に密着した身近なモノだからと言う。

ワインやビール瓶のフタを開けるとき、ヨーロッパではナイフを使うことが一般的で、街でそんな光景を見ても誰もなんとも思わない。
チーズや肉を切るにも必要だから、ハイキングではよくナイフを持って行く。
*前日の夜に果物を切って、プラスチック容器に入れておくのは日本流で、ヨーロッパではそういうのを「ウザっ」と面倒くさがる人が多そう。
歴史をさかのぼると、昔は動物を狩りに行くときには刃物を持っていったから、いまでもドイツの伝統衣装(たぶんバイエルン州)には飾りとしてナイフが付いている。
だから日本ではスイスナイフでさえ所持できないと聞いて、「そんなのありえんズラ!!」と彼は思ったという。しらんけど。

そんな話を聞いていて、アメリカ人女性とハイキングに行ったときのことを思い出す。
山頂に到着し、レジャーシートを広げてランチを食べるとき、彼女がバッグからリンゴを取り出してナイフで皮をむきだしたのを見て、「ワイルドだな」と内心で驚いた。
その話をすると、それはアメリカ人のやり方で、ドイツ人はリンゴの皮をむかないらしい。
でも、ナイフは身近なアイテムで生活でよく使う。

 

こんな知人の驚きは、銃刀法に対する日本とドイツの考え方の違いによる。
でもそれは表面的なもので、話を聞いていると、農耕民の日本人と狩猟採集民のヨーロッパ人との、根源的な文化の違いに由来するような気がしてきた。
ヨーロッパ人と比べると歴史的・伝統的に、日本人が外で刃物を使う機会が少なかったことは間違いない。
その時代の価値観や見方が現在にも影響しているのでは?

 

スイスナイフ(アーミーナイフ)

 

 

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

外国人から見た日本と日本人 15の言葉 「目次」

日本在住ドイツ人とインドネシア人の話①地震・怖いもの・宗教

日本在住ドイツ人とインドネシア人の話②食事文化・物価の違い

日本在住ドイツ人・インドネシア人の話③道路・お茶・コーヒー

日本在住ドイツ人とインドネシア人の話④コンビニ・日本料理

 

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ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。