日本とドイツの違い:再配達なんてしない!「自己責任」で

 

ドイツでアパート暮らしをしている日本人がSNSに、現地の生活で印象的だったことを書いていた。
その人が言うには、ドイツには郵便物の「再配達」がないから不便な反面、ありがたいこともある。
通販で買い物をした場合、指定できるのは「〇月〇日」と到着の日付までで、日本のように時間までは無理。
午前・午後・夜間の3つの時間帯を指定することができて、しっかりその時間に配達してくれる日本の配送業のサービスはとても素晴らしかったのだと、それを失った初めて気がついたと。

いつ届くか分からない荷物を一日中待ってることもできないから、外出していて、その最中にくることはザラにある。
でも、ドイツには再配達なんて神サービスはない。
だから郵便局か、会社の支店まで取りに行かないといけない、というのは日本人の発想。
ドイツでは届け先が不在の時、配達員は隣の部屋や上下の階に住んでいる人に荷物をあずけて自分は去ってしまう。
そういう人がいない場合は、近くにあるカフェやキヨスク(商店)などにあずける。
*国際郵便や大きな荷物は違うシステムらしい。

そんなワケで外出から戻ってくると、ドアに「〇〇へ荷物をあずけました」といったメッセージがあるから、そこへ取りに行かないといけない。
そうなると、

「こんにちは、〇〇という者です。こちらで荷物をあずかってもらっていると思うのですが…」
「はいはーい、これですね。」
「ハイそれです。ありがとうございました。」

という感じのやり取りをしないといけなくなる。
そんなことが何度もあったから、この日本人は周囲の人の顔と名前を覚えて、会うと簡単な世間話をするようになった。
ドイツに来たばかりで知り合いのいないその人にとって、このほぼ強制的な「ご近所づきあい発生システム」はありがたいらしい。

 

隣近所の人が亡くなっても、異臭がするまで誰も気がつかない「孤独死」が問題になっている日本では、ご近所づきあいをもっと活発にするべきだという声もある。
でも、このドイツ流が受け入れられるだろうか。

 

ドイツの鉄道駅

 

後日、ブレーメンに住んでいる知人のドイツ人に、このシステムについて話を聞いた。

彼がよく利用する配達会社でもフツウはそれだけど、割増料金を出せば再配達をしてくれる。
日本のようにそれが標準になっているほど、ドイツのサービスは進んでいないらしい。
というか、世界でも日本が特別すぎるような。

不在の時は、近所の人に荷物をあずけることは日常茶飯事だけど、彼はそれを会社に丸投げしているワケではない。
ネットで注文する時に、自分が部屋にいなかったら誰にあずけるか? その人がいなかったときは、近所のカフェやキヨスクを指定して会社に伝えている。
それでもし荷物がなくなったとしても、すべて自分の責任であることを了承し、会社側がそれを確認したら指定された先に荷物を届ける。
彼は事前に指定した人の部屋や店に行って、荷物が来るかもしれないから、そのときはよろしくとお願いをしておく。
それで配達人がドアに残したメモを見て、カフェやキヨスクにあるなら、そこへ行って店員に自分のIDカードを見せて荷物を受け取る。

このやり方だと、もちろんリスクはある。
以前、いつものように彼が近所のカフェに荷物を取りに行ったら、「さっき外国人がその荷物を取りに来た」とスタッフに言われたから驚いた。
「これはアヤシイ」と思った店員が身分を証明するモノの提示を求めても、その外国人は「いまは持っていない」と見せようとしない。
「では荷物は渡せない」と言うと、外国人は「わたしは彼から頼まれたんだ!」と言ってゆずらない。(もちろんウソ)
コイツは荷物を盗もうとしていると思ったスタッフが拒否すると、外国人はあきらめて店から出ていった。

荷物の情報をゲットするのは簡単で、アパートを回って部屋のドアに「○○へ荷物をあずけた」というメッセージを見つければいいだけのこと。
もしその場合、店員が外国人に荷物をわたしたとしても、それは彼の責任になって何の保証も受けられない。
外国人も店員の責任にはならないことを知っていたから、しつこく要求したのかも。
途中でトラブルがあって荷物が届かなったとしても、すべて客の自己責任になる。

 

日本なら、何か起こって責任問題になるのはイヤだから、知らない人の荷物をあずかってくれる人を見つけるのはかなりむずかしい。
近所の知り合いに頼むというのも、気の引ける人が多い予感がする。
「謎の外国人」のトラブルをみても、日本で不在時に、荷物のあずかりをしてくれるコンビニやカフェはなさそう。
「自己責任」を重視したこのドイツ流のシステムは、やっぱり日本人には合ってない。
配達員は大変だけど、日本では再配達のほうがいい。
こういうやり方が可能になるドイツは、やっぱり日本とは文化や価値観、対人関係の距離感が違う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。