【世界の目】マンガで、“殺人OK/タバコNG”も仕方ない理由

 

漫画家の森田まさのりさんが最近、ツイッターでこんな疑問をつぶやく。

「人を殺すシーンは描いていいけど、タバコを吸うシーンを描くと文句言う人がいる不思議」

タバコが人の健康に与える害については今さら言うまでもなく、医学・公衆衛生学の専門家を含む日本学術会議は2008年に「要望 脱タバコ社会の実現に向けて」を発表した。
人の命を奪う行為はケタ違いの悪で、「脱・殺人社会の実現に向けて」なんてところに住むのは、国ガチャのハズレにもほどがある。
リアル世界では比較にならないのに、マンガやアニメだと「殺人OK、喫煙NG」と逆転世界になっている。

これにネット民の感想は?

・殺人もリアルに描けば駄目なんじゃないの
・コナン終了のお知らせが出るわ
・編集部にダイレクトで大量にクレームが来るから仕事が止まって面倒くさいだけでしょ
・悪人が車で轢き殺すシーンはOK
シートベルトをしてないのはNG
・そういうのを一切遠ざけて育った子供はどういう大人になるの?

 

ただ森田さんも自身の過去の作品にふれて、「影響受けてタバコ吸い始めた人もいると思うんで、それを思うと責任感じます」と書いているから、もうそれが答えだ。
マンガやアニメで自分の好きなキャラがタバコを吸っていると、「かっけー!」とマネする人がいるだろうけど、殺人シーンはそうじゃない。
といっても、現実世界とリンクすることもある。
2007年に京都府で16歳の少女が父親をオノで殺す事件が起こると、それと似た場面のあったアニメ『ひぐらしのなく頃に』が放送休止になった。
翌年、青森県で18歳の少年が母親・弟・妹の3人を殺害する事件が起きたときは、『ひぐらし』との関連性が取り沙汰された。

 

海外の多くの国では日本のように、「たばこの煙は心筋梗塞など虚血性心疾患、脳卒中になる危険性も高めます」といった文字だけでのヌルイ警告では済ませない。
長年の喫煙習慣から、悲惨な状態になった内蔵の写真をパッケージに載せるとか、具体的で視覚的な警告を発している。

 

これはシンガポールのタバコ

 

世界の中で日本は喫煙にはとても寛容、つまりタバコ害への意識が低いとよく言われる。
3年前に日本で行われたラグビーW杯では、街はきれいだし電車ではみんな静かにしているし、来日した外国人にとって礼儀を学ぶ機会にもなったという。
でも完全無欠な社会なんてあるわけなくて、外国人目線でこう指摘された。

フランスAFP(2019年10月5日)

日本は先進国では珍しい喫煙天国だと長らく思われていたが、喫煙率は減っており、自治体は公共の場での喫煙を禁じるようになっている。

ラグビーW杯で来日する世界のサポーター、礼儀の国・日本の勘所を学ぶ?

 

日本はタバコへの危険認識や規制では世界的に遅れている。
日本に対して「先進国」のイメージを持っていた知人のタイ人は、基本的にその認識は間違ってなかったけどタバコ事情は違ったと言う。
W杯で来日した外国人は、日本人のルール順守の精神に感心した。
でも、東京の路上で禁煙ゾーンになっているにもかかわらず、そこでタバコを吸う人を見つけて、「ルールを守っていないと告白するファンもいた」と記事にある。

「日本は喫煙者の天国だ」といった皮肉や批判は以前から海外にあって、外圧に弱い日本はラグビーW杯や東京五輪を機に規制を厳しくていった。
ここ数年で、全店舗を禁煙にした有名レストランや、社員の通勤中の喫煙も不可にした企業が出てきて、「なんで会社の拘束時間外で命令されないといけないんだよ!」なんて不満の声が上がりつつも、この国は「脱・喫煙天国」へ向かって着実に進んでいる。

描き方にもよるけど、「人を殺すシーンは描いていいけど、タバコを吸うシーンを描くと文句言う人がいる」という状態はいまの日本ではそう不思議でもない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。