今から20年ぐらい前、インドを旅行しているときのこと。
同じ宿の韓国人旅行者から、「パーティー」に誘われた。
パーティーといっても、すっごくシンプル。
宿の屋上で、近くの商店で買ったスナックをつまみながら、韓国から持ってきた焼酎を飲むだけ。
屋上にはイスがなかったから、セメントの床に座って丸くなって話をした。
これを英語でどう表現していいか分からなかったから、「パーティー」と言ったのだと思う。

このとき日本人はボクだけで、あとの4人は韓国人のバックパッカー。
ボクをふくめて全員が20代のオス。
このとき、初めて目にした韓国文化があった。
韓国人が焼酎を飲むとき、顔を横に向けて口を手で隠す。
自分が飲むところを、他人に見せようとしないのだ。
3人の韓国人がそうやって飲んでいて、1人の韓国人は何もしないで普通に飲んでいる。
「これは何?なんで1人だけしないんだ?」
ワケを聞くと、これが韓国の礼儀だという。
年上の人と酒を飲む場合、お互いに向かい合って対等に飲むと失礼にあたる。
それで年長者に敬意をしめす意味で、年下の人間は横を向く。
さらに手で口を隠すことによって、相手への敬意をワンランク上げる。
このパーティーでは、3人が同じ年で1人だけ年上がいた。
だから、3人が先輩の前で酒を飲むときは手で口を隠す。
たしか3人はこの1人を「兄さん」と呼んでいたと思う。
でもその代わり、酒のつまみは兄さんがすべて出す。
年下は敬意、年上は金を払うのが韓国の文化らしい。
日本人バックパッカーには、こんな文化はない。
宿の屋上で酒を飲むことはあるけど、年齢に関係なく、向かい合って酒を飲む。
年上の韓国人が「オレ、部屋に戻るわ」と立ち上がると、3人もすくっと立ち上がって頭を下げる。
自然にこうすることに驚いた。
そりゃ、兄さんは金を出さなきゃいけなくなるわ。

インド・コルカタの宿
最近、おもしろい動画を見つけた。
「ウォーク」という日本語ペラペラの韓国人が、日本と韓国の文化のちがいを紹介している。
このウォークさん、日本語が不自然なほどうまい。
”不自然”というのは、韓国語のなまりがほとんどないのだ。
もはやネイティブのレベル。
この日本語だけでも、ウォークさんが日本の社会や人をよく知っていることが分かる。
そんな彼が日本と韓国の文化のちがいとして、”上下関係”を取り上げた。
これが印象的だったのだろう。
ここではタバコを取り上げているけど、やっていることや考え方はインドで会った韓国人と同じだ。
*大変申し訳ございません。
「韓国と日本の文化はこんなにも違う?!【タバコ編】」の動画はのちに削除されてしまいました。
年上の人に敬意をしめすため、酒やたばこをのむときは口元を隠す。
これが上下関係での韓国文化だ。
これは儒教に由来すると思う。
今日、儒教の遺産は、朝鮮半島の社会の根底部分、道徳体系、生活様式、年長者と若年層との関係、ハイカルチャー、に残っており、大部分の法体系の基礎をなしている。
このウォークさんに、この行為の由来なんかをメッセージで聞いてみた。
すると、丁寧にこんな返事をくれた。
韓国は未だに儒教的文化が残っており、大人や自分より年上の前ではタバコやお酒を飲む行為はマナーとしてダメとされてます。
具体的にいつからかはわかりませんが、韓国という国がもともとそうだったと思います。
お答えがあまり出来ずすみません💦
なんかこの返事も日本人っぽい。
ボクの韓国人の友人のだったら、きっと「具体的にいつからかはわかりません」で終わり。
「すみません」なんて言葉は使わない。
ちなみに、「タバコを飲む」という言葉はまちがいじゃない。
むかしは「タバコを喫(の)む」という漢字を使っていたけど、今は「飲む」か「のむ」という表現が多い。
現在でも「喫茶」や「喫煙」という言葉は使われている。
それはとにかく、日本人のボクや韓国人のウォークさんから見ても、日本人と韓国人の印象的な文化のちがいは、お酒やタバコをのむときに手で口元を隠すことだった。
韓国社会は、上下関係が日本より厳しい。
だから、こういう細かい礼儀作法を必要とするんだろう。
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