中国・東北部には第二次世界大戦まで「満州国」という国があって、そこに多くの日本人が住んでいた。
冷凍食品界の絶対王者で、もう日本の国民食と言っていい餃子は、そこで覚えた日本人が帰国後に広めて全国区になったと言われる。
「ぎょうざの満洲」がまさにそれ。
かつて満州国内にあって、いまは中国の大都市に成長した大連へ行った時、現地の日本語ガイドからこんな話を聞いた。
「満州国は日本の言いなりの傀儡国家でしたから、中国では独立国ではなくて“偽の国(偽満洲国)”と思われています。日本人はいまでもよく満洲と言いますが、中国人は東北部と言います。満洲だと日本の支配を連想して、良い感情はわきませんから。」
この話を聞いたのは「2012年の中国における反日活動」の数年後で、当時のようすをガイドに聞くと、大連を含めて東北部では反日デモなんてほとんどなかったという。
かつて日本に支配されていたこの地域こそ、反日感情がエクスプロージョンしたのかと思ったら、意外とそうじゃない。
歴史的に日本と深い関係があって、日本企業がたくさん進出している大連では日本人との交流も多いから、そういうところでは反日感情は強くない。日本との接点が無く、テレビやネットの影響をそのまま受ける人ほど、日本への敵対感情が強いとガイドは話す。
だから中国を旅行していて、反日感情なんて気にしなくていい。
でも、注意したほうがいい日があるという。
日本から受けた恥辱を忘れず、もう二度とそんなことを繰り返さないように中国では「国恥の日」がある。
1919年に中国が日本の対華二十一か条要求を受け入れた5月9日、日中戦争が始まった7月7日、そして1931年に柳条湖事件が起きたきのう9月18日が国恥の日だ。
この日はどうしても抗日感情や民族意識が高まる。
だからそんな時に日本人が街中で大きな声で日本語を話していたり、楽しそうに笑っていると、愛国的中国人にからまれてトラブルに巻き込まれるかもしれない。
ということで「国恥の日」に中国にいるのなら、言動には気を付けたほうが吉らしい。
この日がどんな日かは、中国政府が誰よりも分かっている。
近年の中国は日本との関係を重視していて、去年おこなわれた南京事件の追悼式典に習近平国家主席をはじめ最高指導部のメンバーが出席しなかった。
最後に出席した2017年の後は、このところ毎年そんな感じだ。
国民をあまり刺激しないようにしたり、日本に配慮していると思われ。
中国軍との武力衝突(満州事変)と満州国建国の始まりとなった1931(昭和6)年の柳条湖事件を記念するきのうの式典でも、中国共産党の最高指導部メンバーは出席しなかった。
産経新聞の記事(2022/9/18)
中国で柳条湖事件91年式典 対日関係安定化探る動きも
今年は日中国交正常化50周年だから、それを意識したということはあるだろう。が、南京事件の式典を考えると、これは今回だけの特別サービスではなくて、日本と良好な関係を結ぼうとする中国側の意図を感じる。
もちろん日本の領海に侵入する中国船は後を絶たないし、中国は日本と友だちになりたいと思っているわけではない。(たぶん)
日本にいる知人の中国人の見方では、経済大国になった中国では、もっといい生活をしたいという人が増えていて、その気持ちを満たす限り政府も安泰だから、日本の経済力や技術を利用したいと考えている。
単純にいまの中国にとっての国益を計算すれば、国民の反日感情を刺激するのはマイナス面のほうが大きいから、政府がそれをあおるようなことはしない。
国が国民をコントロールできるところが韓国とは違う。
日本も損得で考えれば、中国との付き合いはメリットがとても大きい。
友情は、それを望む国民同士が築けばいい。
日本国と中国はお互い、金の切れ目が縁の切れ目、損切り前提のパートナーとしてビジネスライクな付き合いをすればいい。
もともと自由民主主義で西側陣営の日本と中国では、価値観や考え方が根本的に違うのだから。
それに最初から相手にあまり期待していなかったら、領海侵犯に熱くなったり、何かあった時に「裏切られた!」と失望しなくてすむ。
日中関係はまずはカネ、一緒に経済成長していくことを中心に考えればいい。
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