キリスト教と神道の決定的な違い:最大のタブーがアタリマエ

 

知人にポーランド出身のアメリカ人がいる。
彼女は日本に住んでいたことがあるから、日本のことはそれなりに知っている。
「業務スーパー」を「ぎょうスー」と呼ぶレベルだから、まあ日本通と言っていい。
このまえそんなアメリカ人と話をしていていると、神道とキリスト教の違いが話題になった。

キリスト教は約2000年前、いまの中東イスラエルでイエスという預言者が始めた宗教で、その後、ヨーロッパやアメリカ大陸など世界中に広がった。
神は一つしか存在しないし、その教えは聖書に書いてある。

対して、神道は日本で生まれた宗教であることは確かなんだが、いつどうやって誕生したのかはハッキリしていない。
縄文後期~弥生時代に稲作が伝わったころ、自然と神を一体化して崇拝する信仰が生まれて、それが神道の始まりになったと考えられている。
自然発生的な宗教だから、キリスト教のように創始者や時期なんて誰にもワカランし、聖書が無いから教義もナシ。
*古事記や日本書紀などの神典(しんてん)ならある。
太陽からトイレまで網羅する多神教で、それに信仰の範囲は日本だけだから、キリスト教とはことごとく違っている。

そう言えば、まえにトルコ人が神道の神の数を「エイトミリオン」と言っていた。
「八百万(やおよろず)の神々」をそのまま英語にすればそうなるが、これは間違いだ。
八百屋でも使われる「八百」とは「数えられないほど多い」ということで、万屋(よろずや:いろいろな品物を売ってる店)の「万」は「さまざま」を意味している。
だから八百万とは800万という具体的な数ではなくて、想像を超えた数の多種多様な神々といった意味になる。

そんなことのほかに、アメリカ人と話していて思った神道とキリスト教の違いは「神格化」だ。これは決定的な違いと言っていい。

 

ポーランドでいちばん尊敬されている人物といえば、そのアメリカ人の考えだと王や芸術家ではなく、1978年にローマ教皇になったヨハネ・パウロ2世だ。

 

ヨハネ・パウロ2世(1920年 – 2005年)

 

ヨハネ・パウロ2世はポーランド人では初めての教皇で、約450年ぶりに誕生したイタリア人以外のローマ教皇でもある。
彼は「空飛ぶ教皇」と言われるほど世界各地を精力的に訪問して、平和と戦争反対を訴え、独裁下にあったポーランドでは民主化活動を行う人々の精神的な支えになっていた。
カトリック信者の多いポーランドでヨハネ・パウロ2世は、年齢・性別に関係なく広く尊敬されている人物らしい。
2005年に亡くなった後、生前の功績から2011年に彼は「福者」に認定された。
さらに、重病だったコスタリカの女性がヨハネ・パウロ2世に祈り続けたところ、回復したことが「奇跡」と認められたことなどから、2014年に聖人となった。

キリスト教では聖人が最高位でそれが限界。
でも、神道なら限界突破ができる。

アメリカ人が京都へ行った時、どこの神社か忘れたけど珍しい牛の像を見たと言う。
答え合わせをすると、それは平安時代の政治家、菅原道真が祀られている北野天満宮だった。
優秀すぎた彼は政敵にハメられ、九州に流されてそこで無念の死をとげた後、怨霊となって現れて政敵に復讐したという。
そんな菅原公はいまでは学問の神として、全国の受験生が祈りを捧げる存在になっている。

そんな話をすると、アメリカ人がこう言う。

「キリスト教でその考え方は絶対ダメですね。ゴッド以外の何かを崇拝することは、一神教では一番してはいけないことです。」

キリスト教では信者が絶対に守るべき教え「十戒」があって、それは「主が唯一の神であること(=それ以外のものを神としてはいけない)」から始まっている。
だから、どんなに優秀で素晴らしい人間でも聖人になるのが限界で、神道のように人が神になることはあり得ない。
聖人はどんなに偉大な存在であっても神ではないから、礼拝や崇拝の対象ではない。「崇敬(すうけい)」ならOK。
神道はその逆で菅原道真や徳川家康、明治天皇などいろいろな人を神格化し、神社を建てて祈ることが常識になっている。

他に神をつくれば一神教ではなくなってしまうから、キリスト教でそれは絶対的な禁忌。
神道には八百万の、数えられないほどの神々がいるから、一つや二つ増えても問題はない。
だから、キリスト教における最大のタブーが簡単にできてしまう。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。