さて困った。
「今日では日本の神は神社の中にいます」という文を英語にしたらどうなるか?
グーグル翻訳だと「Today the Japanese god is in the shrine」になるのだが、「神」の英語訳には「deity」もある。
そもそもdeityとgodは何がどう違うのか?
同じ疑問を持つ日本人はたくさんいて、ネットにはこの手の質問がよくあり、その解答をみると例えばこんなものがある。
・deityでないとダメです。god,goddessだとキリスト教徒は、ライバル神、最悪敵と思うこともあり誤解を招きます。
・god: キリスト教、ユダヤ教、イスラム教、等の一神教の神で、宇宙の創造主とされる。
deity: 女神、あるいは神、神話などに出てくるようです。
結論を言うと「deityでないとダメです」も、「godはキリスト教、ユダヤ教、イスラム教等の一神教の神」もどっちも間違いだ。
日本に住んでいて日本語ペラペラのアメリカ人に上の文章をみてもらうと、「Nowadays, Japanese deities(gods) exist in shrines」でいいと言う。
deityとgodの違いを聞くと、アメリカ人でもよくわからないらしい。
キリスト教の神以外なら、どっちを使ってもいいとのこと。
つまり神道の神を表すなら、deityでもgodでもgood。
ただ「god」だとキリスト教の神とカン違いしないかたずねると、「キリスト教の神はGodで大文字だから、godなら大丈夫ですよ」とのこと。
そういえばトルコ人も同じことを言っていたから、英語がわかる外国人なら、Godを見たらキリスト教の神、godならそれ以外の宗教の神とすぐにわかるのだろう。
一神教を表す英語 monotheism の「mono(モノ)」とは「ひとつの」という意味で、ネットでこれが含まれることばを探すとこんなものがあった。
monopoly(モノクロ:一つの色)、monologue(モノローグ:長い一人ゼリフ)
monorail(モノレール:単軌鉄道)、monopoly(モノポリー:独占)
monotaro(モノタロウ:ショッピングサイト)
気づかなかった人のために言うと、この中にまったく関係ないmonoが一つある。
神道では太陽神から貧乏神まで八百万の神々がいるから、godsと複数形にすることができるけど、キリスト教の神は唯一絶対の存在だから、Godと単数形になる。
聖書にはモーセが神から与えられた、信者が絶対に守るべき教え(十戒)があり、その上から五つはこんなものだ。
・主が唯一の神であること
・偶像を作ってはならないこと(偶像崇拝の禁止)
・神の名をみだりに唱えてはならないこと
・安息日を守ること
・父母を敬うこと
*神道にあるのは最後の教えだけか。
それ以前に、そもそも神道には教義がないところがキリスト教とは大きく違う。
上位三つはすべて神に関することで、そのうち「唯一の神」と「偶像崇拝の禁止」の2つは共通している。
原理的には唯一の神がGodで、偶像はdeityかgodで表すことができる。
神道やインドのヒンドゥー教、中国の道教の神々はgodsでもdeitiesでもいい。
Gと大文字にすることでオンリーワンを強調する意味があって、間接的には「その他大勢」と、異教の神々を否定する意味がきっとあるはず。
一方、日本語で「G」というと国民の敵を意味することが多い。
イギリス人に聞いても答えは同じ。
キリスト教の神ならGodで、神道の神ならdeityでもgodでもいい。彼は続けてこう言う。
「オレが日本人の友人に『おにぎり』と『おむすび』をきいたら、どっちも同じだから好きな方を使えと言われたよ。deityとgodもそんなものだ。普通のイギリス人やアメリカ人なら、その違いが分からなくも困らない。言いやすいほうを使ったらいい。」
個人的にはこれが一番わかりやすかった。
「おにぎりとおむすび」と同じで、ネイティブでもよくわからないことはそのままにして、他のことを覚えたほうがいい。
おまけ
貧乏な女子高生があるとき神になって、自分の神社を持つというコメディ・アニメの『神様はじめました』を英語にするとどうなるか?
グーグル翻訳すると「God started」になるけど、英語版のタイトルは「Kamisama Kiss」。
人が神になったり木や石などの自然物に神が宿るなど、神道の神を正確に英語訳にすると「Kami」になる。
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> deityとgodの違いもそんなもんだ。普通のイギリス人やアメリカ人なら、その違いが分からなくも困らない。言いやすいほうを使ったらいい。
ははは、そのイギリス人やアメリカ人の言うことも、間違いと言うか、ハッキリ言うと嘘ですね。おそらく本当の違いを彼らも知っていて、日本人相手なのでわざと知らないふりをしたのでしょう。彼らも、高校や大学のラテン語学や神学では習ったはずです。(忘れたのか?)
deityはもともとラテン語deus(デウス)に由来する英語です。deus(神)+ity(性質)→ deity(神性、神であるという性質) という流れで、キリスト教会の由緒正しい正式言語であるラテン語から、北方民族野蛮人たちの言語であった英語へ持ち込まれた単語です。ちなみに、この「神性」とは、トリニティー(父と子と精霊の三位一体性)を裏付ける言葉でもあります。(だから野蛮人の言語である英語で「God」と言うだけでは、「神性」は表現しきれていないのです。)
ラテン語の系譜を英語よりも強く保持している諸言語において唯一神は、スペイン語でDios、イタリア語ではDio、仏語ではDieu、いずれも語源のDeusを色濃く残しています。そういえば、日本へ初めてキリスト教が伝来した戦国時代には、イエズス会のバテレン達も日本人信徒に「デウスを信じなさい」と説いていますよね。
さて、彼ら北方野蛮人の使う英語では一神教の「神」をGodと言うのですが、これはゲルマン語のGott(神)に由来する単語です。もともと「ghau」(呼ぶ)または、「gießen」(供え物をそそぐ)を意味する言葉から派生したらしいのですが、そのそそぐ対象をgottと呼び、そこから現在のGodになったそうです。なお語頭を大文字で表すのは、ただ一つの神を表す方法として、これもやはりラテン語のルールを取り入れたものらしいです。
そういう人もいるかもしれませんが、知人は違います。
monotarouは物monoと桃太郎の掛け合わせ。「ひとつの」意味のmonoとは関係ないですね。
これは日本語ですしね。