ドイツの大麻合法化と、日本でドイツ人が“恐怖”したこと

 

それに手を出したら、それまで築いた信用やイメージを一瞬で失うのが大麻。
特に芸能人の場合、CMや作品が吹っ飛ばされて、多額の賠償金が目の前にやってくる。
それでもこれに手を伸ばす人がいるのは、大麻を使用すると気分が上がり、“ハイ”な状態になってイイ気持ちになれるからだとか。
でも、それは一瞬のことで大麻は毒物だ。
視覚や聴覚がおかしくなる、感情が不安定になる、興奮して暴力的になる、幻覚や妄想などにとらわれるといった恐ろしい状態を引きおこす。

でも海外ではけっこう規制が甘く、2018年にはカナダで、大麻を酒やタバコのような嗜好(しこう)品として所持・使用することが合法化された。
これは日本、アメリカ、フランス、ドイツなどで構成されるG7の国では初めてのこと。
カナダではそれ以前から密売組織が娯楽用の大麻をバンバン売っていたから、政府は禁止ではなく、合法にすることで密売をなくすことをねらったらしい。

アメリカでも州によってはOKを出したところもあるし、G7全体で見ると大麻の合法化は進んでいる。
最近では、ドイツのショルツ首相も近く合法化が行われるだろうと述べた。
これに日本のネット民の感想は?

・自滅プログラムすげーな
・これが世界の選択
・自己責任で壊れてしまえ
・最大の問題は解禁した後にくることだ
・カナダでは失敗してるらしいけどそれでもやるんだ

 

「大麻解禁 soon」について知人のドイツ人に聞いてみると、「そうなると思ってました」と素っ気ない反応でこんな話をする。

「そのことについてはずっと前から議論していて、世論はだんだんと合法化に傾いていたから、その決定で驚くことは何もないよ」

彼にはこの未来がすでに見えていたらしい。
ドイツでは医療大麻は以前から解禁されていて、医者から処方箋をもらえば簡単に入手できる。
でも、気分をアゲルための娯楽用の大麻は違法で、これを使用すれば警察に捕まるはずなんだが、実際にはあまりにも出回っていて、法律があまり機能していないらしい。
ドイツで大麻を手に入れることはわりと簡単で、街を歩いてると売人に声をかけられることがあるし、インターネットからも購入できるという。

知人は大麻に興味はないし吸うつもりもないが、ドイツで大麻をタブーとする空気は薄くてハードルも低い。
だから、彼も自然とその“ニオイ”を覚えてしまった。バスに乗っていたらそれが漂ってきて、イヤな気分になったことがあるという。
バスの車内で乗客が大麻を吸うというのは、日本ならアニメの世界の話で、荒廃と絶望しかなくなった社会を描くシーンで出てくるレベル。
まあこれは例外的なことだけど、ドイツで大麻を所持・使用している人はめずらしくないらしい。
だから、もし警察が見つけても「こらこら」と注意するだけで、逮捕まではされないだろうと彼は言う。
そんなことで、いまのドイツでは大麻を禁止する意味がなくなっていて、法律が有名無実化している。
そんな現実に合わせて、合法化して政府の管理下に置き、大麻の販売に税金をかけて税収を上げるほうが良いという方向へ世論が動いているようだ。

 

すでに大麻が広く社会に浸透しているドイツと、それはマンガの世界という日本では事情がまったく違っていて、この島国で解禁の動きは皆無だ。
日本に住んでいた知人のドイツ人は、海外ではわりと一般的なアレルギー薬や痛み止めでも、日本では一発アウトになる可能性があり、下手したら強制送還になると知って麻薬取締法の厳しさに驚いた。
若者が軽いノリで大麻を使うドイツとは対応が天と地で、日本での認識は驚くというより恐怖を感じるほど。
実際2015年には日本にある有名企業の外国人役員が、膝の痛みを止めるための鎮痛剤を輸入したところ、日本で麻薬指定されている「オキシコドン」が含まれていたとして逮捕された。
2019年にラグビーW杯が開かれた時は、鼻腔用スプレーを持ち込んで逮捕されたり、強制送還されたりしないようにと、東京のイギリス大使館が注意喚起をしたこともある。
やっぱり欧米と日本は違うのだ。

そんな日本でも医療用の大麻なら解禁の方向へ進んでいて、大麻取締法が改正されそうだ。
でも娯楽用大麻については、G7メンバーがどんな決定をしようと、日本はいまのように全面禁止のままでいい。
人生の楽しみを大麻に求めるというのは、やっぱり病んでいる。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。