「That’s one small step for a man, one giant leap for mankind.」
(これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である。)
1969年にロケットで地球を飛び出して、アポロ11号で月に到着し、人類で初めてその地面を踏んだニール・アームストロングはこう言って伝説的な人物となる。
人間を月まで送って、無事に地球へ帰還させるというのがこのアポロ計画。
これは小さな一歩でも、人類の科学技術の歴史をその前後で分けられるような偉大な事業で、みごとに成功させたアメリカはこのとき最高に輝いていた。
人類、月面に立つ。
それからトキは流れて2022年のいま、人類は次のステージに足を踏み入れた。
読売新聞(2022/11/18)
月探査計画 宇宙開発の新時代が始まる
米航空宇宙局(NASA)が新宇宙船「オリオン」を搭載した大型ロケットの打ち上げに成功し、月を探査(たんさ)する「アルテミス計画」が本格化に始動した。
この計画には日本も参加しているから、アーニャなら「わくわく」ときっと言ってた。
月面着陸を目標としたアポロ計画と違って、アルテミス計画のミッションは月に基地を建設して、人間が月の水や鉱物資源などを調査すること。
今回のロケット打ち上げはその“テスト”で無人だけど、これから人が乗って月へ行くから、初めて月面に着陸する日本人宇宙飛行士を見る日は多分そう遠くない。
宇宙開発は人類共通の夢でも、米主導のこの「アルテミス計画」には現代のアメリカの価値観や事情が反映されている。
アポロ計画では月に降り立ったのはすべて白人男性だった。
でもその後、50年で価値観は大きく変わって、今では白人男性だけに注目が浴びるというのは世界的に避けられているし、いまのアメリカは特にそれを嫌う。
それで今回は多様性を重視して、最初に月面に着陸するのは女性と有色人種になるらしい。
そんなことが今日の毎日新聞のコラムに書いてあった。(2022/11/18)
神話の神々は時に残酷である…
アメリカでは2016年に世界最高峰の映画賞「アカデミー賞(オスカー)」で、発表された候補が前年に続いて白人で占められていたことから、有名な黒人の映画監督や俳優が授賞式をボイコットしたり、「OscarsSoWhite(白すぎるオスカー)」がツイッターでトレンド入りして、全米で激しい人種論争を引き起こした。
そんな“白すぎるオスカー”の反省から最近では、アジア人や黒人などの非白人がアカデミー賞を受賞することが増えている。
「アイツらは性や人種で差別している」と見られることは、今のアメリカ社会では致命傷になりうる絶対的なタブー。
トランプ氏のように批判を自分への支持に変える人は例外で、人種差別を指摘されたらフツウは大打撃だ。
そんなことは知ってたけど、世界的に有名なアメリカのアニメ「ザ・シンプソンズ」で、これからは白人に、非白人キャラクターの声を担当させないと制作サイドが発表したのは驚いた。
黒人・アジア系・ヒスパニック系のキャラにはそれぞれの人種の人が採用されて、白人さんはサヨウナラ。
「声で人種が分かるかっ。なんつーナンセンス」とあきれる知人のアメリカ人も、今のアメリカ社会を見れば、アニメを制作する側が“差別批判”に超敏感肌になることは理解できると言う。
もちろん白人キャラは白人が担当するから、これがアメリカ的平等らしい。
これは「白人差別」ではないが、受難ではある。
ということで「アルテミス計画」でも、能力があっても白人だと活躍する機会は少なくなりそう。
日本人などにはチャンスが広がってラッキーなんだろうけど、今を生きる白人の間には「オレたちは時代ガチャに外れた…」という空気がタダよっている予感。
人種や性差別を気にして、宇宙に多様性まで打ち上げるのは今のアメリカ人の価値観をよく表している。
「人類にとっては偉大な飛躍である」と次に言うのは一体どんな人間なのか?
とりあえずそれは白人ではない。
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