1969年にアメリカは世界の歴史で初めて、宇宙船「アポロ11号」で人間(宇宙飛行士)を月に送り、そこに着陸させることに成功した。
その「アポロ計画」から50年ほどが過ぎて、先日16日にアメリカで巨大ロケットが打ち上げられたことで、今度は人間を月に送って、水や鉱物資源などを調査する「アルテミス計画」が始まった。
宇宙開発はいま世界各国でしているから、それを通じて人類の科学技術の発展がわかるし、それぞれの国のキャラというか、個性を知ることもできる。
開発された最先端のロケットや宇宙船などには、それにふさわしい名前をつけないといけない。
そんな名前には歴史や伝統にかかわるものがよくあるから、それを通じて、その国の文化や発想が分かることもある。
米航空宇宙局(NASA)はアルテミス計画で使う宇宙船に「オリオン」という名をつけた。
ギリシャ神話に出てくるアポロ、オリオン、アルテミスといった名前は、アメリカ文化のルーツはヨーロッパにあることを示している。
ギリシャ神話で太陽神アポロンは、月の女神アルテミスの双子の兄という設定だ。
シスコンだったアポロンは、妹のアルテミスが巨人のオリオンと恋仲になって、2人で仲良く暮らしているのが許せない。
それでアポロンは狩猟の神でもあった妹をだます。
遠くにいて、よく見えなかったオリオンを指さして、「おまえにあれを射抜くことができるか?」と挑発すると、「わけない」とアルテミスが弓を引いて矢を放つ。
するとその矢はオリオンの頭をぶち抜いた。(アルテミスとの交際)
恋人を殺してしまったことを悲しんだアルテミスは彼を天に昇らせて、いまのオリオン座ができたという。
兄が妹に恋人を殺害させるというウツ展開。
アメリカは宇宙計画で、ギリシャ神話のそんな登場人物を名前を採用した。
太陽神の兄が月の女神である妹のところへ行ったり、アルテミス計画では宇宙船に恋仲のオリオンの名をつけたり、アメリカ人のネーミングにはストーリー性がある。
アルテミス計画と同じように、中国も月探査を目的とする「嫦娥計画」を推進中だ。
「嫦娥(じょうが)」とは中国神話に出てくる月の女神(仙女)のことで、この命名にも中国の文化がよく表れている。
ではお待たせ、日本はどうなのか?
打ち上げに成功した日本初の人工衛星「おおすみ」は、打ち上げ基地のあった大隅半島に由来する。
気象衛星の「ひまわり」や「きく」は日本にある身近な花。
小惑星に到達した後、2010年に、その物質を地球へ持ち帰ることに成功した探査機の「はやぶさ」は、鳥のハヤブサが獲物を狩る様子に見立てたという。
名前の有力候補だった「ATOM」は、原子爆弾を連想させるということで却下された。この判断は本当に日本人らしい。
今回のアルテミス計画では打ち上げられたロケットに、日本の小型無人機が搭載されていたのをご存じだろうか?
その名前がこれだ。
共同通信(11/18)
月着陸は断念せず 通信不安定の「オモテナシ」 JAXA
月着陸を目指す日本初の小型探査機を「OMOTENASHI」という。
これがいま発電できない状態にあって、通信がうまくいっていないと宇宙航空研究開発機構(JAXA)が明らかにした。
この発表にネットでは大喜利が始まった。
・デンキナシ
・ロクデナシ
・おもて無しだけに太陽電池がウラガエシでしょう
・ウツテナシ
・オモテナシが厳しいってどういう事だよ
・ミコミナシ
アメリカや中国みたいに神話から探して、月の神「TSUKUYOMI」にすればいい気がするけど、これは小惑星(ツクヨミ)で使ったからダメなのか?
「かぐや」はもう月周回衛星にある。
でも、何がどうなってオモテナシに?
月は宇宙条約によって資源を所有することはできても、どの国も領有権を主張することはできないから、日本はオモテナシをしたり、される立場ではないはずなのに。
この命名を調べてみると、まずは東京オリンピック・パラリンピックの盛り上がりにあやかった。それと小さい探査機の「OMOTENASHI」が月面に着陸できたら、世界中の大学や企業、個人からいろいろなアイデアが出てくるだろうと期待して、『JAXA 宇宙科学研究所』はこの名前にしたという。
私たちは先陣を切って月に行き、これから訪れるたくさんの探査機をおもてなししたい。そういう思いも込めています。
地名をそのまま採用した「おおすみ」もあれば、いろんな意味を付加して、日本人でも一見理由がわからないほどひねった「オモテナシ」もある。
日本人は真面目できまりやルールに厳しいけど、メイド喫茶やハロウィーンみたいにクレイジーなこともする。
この島国にそんな二面性をみる外国人は多い。
単純で平凡なものと奇妙なものの両極端が入り混じる状態は、日本人の発想や文化をよく表していると思うのですよ。
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