在日モロッコ人が感じた、アラブの国王と日本の天皇の違い

 

いまカタールで行われているサッカーW杯で、「神試合!」というレベルの歴史的な逆転劇がきのうあった。
FIFAランキングは51位で、W杯参加国の中では”最弱”レベルのサウジアラビアが、ランク3位で優勝候補の筆頭だったアルゼンチンを「2-1」で撃破する。
これがどのぐらい衝撃的か、ネットにはこう例える人もいた。

「アンパンマンがバイキンマンに負けるくらい」
「ヤムチャがフリーザに勝った」
「波平の髪が全部抜けるぐらいの奇跡」

このミラクルに全サウジアラビアが歓喜雀躍(かんきじゃくやく)し、サルマン国王は翌日23日を国民の休日(戦勝記念日?)にすると発表する。

大好きなジャイアンツが勝つと、宿題を無しにしてくれた小学校の先生を思い出した。
にしても何という即断即決。
日本なら検討を加速するのが限界で、国王が瞬時に祝日を決定するというのは考えられない。
まあ日本の場合、学校や役所がいきなり休みになったら大混乱は必至だから、やっぱり最適解は国によってそれぞれ違うか。

 

試合後、ロッカールームで喜びを爆発させるサウジアラビアの選手。

 

うれしさのあまり、マシンガン(たぶん)をぶっ放すサウジ国民

「王室パワー」については、カタールでもこんなことがあった。

『東スポweb』の記事(11/20)

【カタールW杯】バドワイザーがFIFAに補償求める? スタジアムでのビール販売禁止措置で

国教であるイスラム教の教えから、カタールでは公共の場所での飲酒が禁止されている。
だから日本の花見はあちらでは違法行為。
でもW杯のホスト国になったことから、カタールは今回は特別にスタジアム周辺でのビール販売を認めた。
…と思ったら、開幕2日前になって突然、やっぱり販売しないと発表して国際ニュースになる。
もう全ての準備を整えていたはずだし、約66億円の損失を受ける可能性のあるビール会社は補償を求めるという。
カタール側が直前でひっくり返したのは、王室の意向を受けてのことらしい。

 

最近、日本に住んでいるモロッコ人と会った時、この”ビール禁止令”について聞いてみた。
すると、イスラム圏では国王の権限がめちゃくちゃ強くて、そういうことはたまにあるから驚くほどのことではないと言う。
言ってみれば「アラブあるある」のレベル。
そのモロッコ人はこんな話をする。

カタールやサウジアラビアと同じく、イスラム教を国教とするモロッコは飲酒に関してはわりとゆるいけど、国王の力はやっぱり強い。
政府や憲法があっても最終的な決定権は王が握っているから、何かが突然決まったり廃止されたりする。
王でなくても、カダフィやフセインのように独裁的な人間がアラブ世界ではよくいる。

日本に来て印象的だったのは、天皇の存在がとても薄いこと。
モロッコでは駅やレストラン、商店などで国王の写真が飾られているのに、日本の街で天皇の写真を見たことがない。
日本人に聞くと、天皇は政治権力を持っていないから、国を動かすことは一切できない。国民の代表として活動したり、外国の要人をもてなしたりして文化的なアイコンになっている。

王室批判を絶対に許さず、独裁的だった前国王と違って、現在のモロッコの国王(ハッサン2世)は民主的で国民に近い。
地方の村を訪れて現状を見てまわったり、社会的弱者の救済に力を入れている。
モロッコの王は軍の最高司令官で天皇とはいろいろ違うけど、あからさまに政治介入することは減ったし、方向性としては日本の天皇のように、モロッコのシンボル的存在になりつつあると思う。

 

とうことでこのモロッコ人の話をまとめると、アラブの国王はおそろしく強大で、日本の天皇はとても控えめ。
天皇が政治に関わって国を動かすことはないし、モロッコに比べれば、社会的に存在感をアピールすることもない。
だから今日、もし日本がドイツに勝って大金星を挙げたとしても、W杯で日本が優勝したとしても、喜んだ天皇が翌日を祝日にすることは絶対にない。
政府がそう決めれば、それを認めるだけ。
ここがアラブの国や王とは違う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。