日本に住んでいる中国人には、「中華料理店ですか?行きません」と言う人がけっこういる。
でも、それは中華を愛するからこそ。
そんな中国人は、日本の中華料理店が出すのは日本人の舌や感覚に合わせた「和風中華料理」で、本場と比べるとガッカリ感は避けられないから、自分は好きじゃないと言う。
これは日本人が、迷わず中国へ行けば分かる。
中国には何度も行ったことがあって、「中国の日本料理ってどんなだろう?」と各地の日本料理店で食してみたけれど、どれもイマイチ。
本格的な日式ラーメンですら「コレジャナイ」というものだったから、高い金を払って失望を味わうのはコスパ最悪だから、そのうち見切りをつけた。
中国に住んでいる日本人は「そんなもんですよ。ここにあるのは”ナンチャッテ日本料理”ですから。日本人の駐在員が行く店なら期待できますよ」と言うけれど、お高いんでしょ?そういうとこ。
これは10年以上も前の話だから、いまの状況は分からない。
そんな経験があったから、日本へ来た中国人が「ナンチャッテ中華料理なんてイラネ」と言う気持ちは分かる。
数年前、浜松の大学で勉強していた中国人はよく中国人経営の店へ行って、本国の調味料や具材なんかを買って自分で調理すると言っていた。
料理スキルは小学生レベルでも、金を払って日本の中華料理店で食べるぐらいなら、自分で作ったほうがまだマシと。
そんな彼もいまは中国に戻っているから、一周回って「和風中華料理」が恋しくなっているかも。
知人の台湾人がファミマのルーローまんを見て、まず思ったのは「八角は大丈夫かな?」ってこと。
台湾では杏仁豆腐のようなスイーツから、豚の角煮のような肉料理まで八角がよく使われていて、台湾人は好きだけど、日本人には苦手な人が多いから、八角があるために料理を最後まで食べられなかった日本人もいた。
だから彼女はルーローまんを見て、そんなことが頭に浮かんだらしい。
さて、ことしの新語・流行語大賞で、大谷ルール・知らんけど・オミクロン株・きつねダンス・SPY×FAMILY…などと一緒にノミネートされたのが「ガチ中華」。
日本人に合わせた中華料理の反対側にあって、「これよこれ!」と中国人が感じるような料理を「ガチ中華」という。
上のルーローまんは、日本人用にカスタマイズされたものだから「ガチ中華」ではない。知人の台湾人はこんな食べ物を見たことないと言うから、これは「中華」と言えるかも微妙な一品。
日本に住む中国人は増加傾向にあるから、彼らに「コレジャナイ」と思わせない、本国と変わらない料理を出す店も増えている。
そんなガチ中華の“聖地”はきっと池袋だ。
といっても、この流行語を初めて知ったという日本人は多い。
日本国内にあるにもかかわらず店員も客も中国人で、そこら中から中国語が聞こえるような店は全国的に見ればまだまだ少ない。
浜松でガチ中華の店は聞いたことないけど、名古屋にはそんな店がいくつもあるらしい。
そんな料理を食べたり、プチ異文化体験をしたいという日本人が増えてきたことに、NHKの「クローズアップ現代」が注目した。(2022年10月19日放送)
ナマズの煮込みに、ザリガニのニンニク煮込み…。日本人の舌に合わせた料理ではなく、本場中国の味を出す中国料理店が都内に急増!その数300軒にのぼる。
こういう「ガチ」を求めるのは主に若い人たち。
中国に対する関心はゼロだったけど、友人の紹介で見た中国アニメにハマって興味をもって、中国のアニメやドラマで出てくる料理や飲み物を味わってみたいと思うようになり、ガチ中華の店へ足を運ぶようになった。そして「日本人に合わせてない本場の味。こういうのが好き」と話す日本人女性もいる。
朝日新聞(2022年9月28日)
「ガチ中華」にハマる若者 受け入れない親は「中国を下に見ている」
いや、「受け入れない=下に見ている」は極端すぎでしょ。
世論調の結果を見ると、いまの中国に対してネガティブな感情をもっている日本人は多いから、中国ネタにはネットがよく荒れる。
でも料理には関しては別枠で、雰囲気はわりと温かい。
・天津飯は名前が卵丼だったら広がってなかっただろうなw
・日本の中華料理店の多くが、似非中華だけど。
本場の中華よりもうまい店が多いからなあ
・(=゚ω゚)ノ 注文はいります!リャンガーコーテル!テンハンイーガ!
・トマ玉炒めは極めたぞw ありがとな
・冷やし中華ありまつか?
餃子定食ありまつか?
日本の中華料理店に失望して、本場の材料を集めて、下手くそなりに自作していたあの中国人は日本に来るのが早すぎた。
「ナンチャッテ」じゃなくて「ガチ」だったら、彼の舌も心も満たされたはず。
コメントを残す