ドイツ人の価値観 サッカーW杯で日本との試合より大事なもの

 

サンケイスポーツでこんな記事を発見。(2022/12/05)

本田圭佑、「ドイツ国民が発狂している」報道をバッサリ「負けたんやからピーピーわめくな。結果は変わらん」

サッカーW杯カタール大会でスペインと対戦した日本は、三笘選手がボールをピッチ上に「1ミリ」残して、蹴り込んだことで逆転弾を呼び込み勝利した。
これによって、ドイツの1次リーグ敗退が決定。
それで「8000万人のドイツ人が、今まさに発狂している」という日本のメディアの報道を引用して、本田さんが「負けたんやからピーピーわめくな。結果は変わらん」と一蹴したと。

知人のドイツ人から話を聞くと、たしかに日本戦での敗北や1次リーグ敗退に選手やファンは大きなショックを受けている。でも、国民の重要ポイントはそこじゃなくて、もっと大切なことがあると言う。
ハンギョレ新聞の特派員コラムもそこに注目した。(2022-12-02)

ホーエンハイム大学のアンケートによると、ドイツ市民の半分がカタールW杯をボイコットする企業、政治家を支持している。3分の2以上が首相の試合観戦は不要だと考えている。

ドイツが日本戦で怒ったのは敗北したからではない

 

イスラム教の影響の強いカタールで同性愛は完全否定されていて、レズビアンやゲイの人たちはそれだけで「違法」となる。W杯のアンバサダーを務めるカタール人は、ドイツメディアのインタビューで同性愛は「精神の傷」と発言した。
そして今回のW杯で使われる建物の建設で、アフリカや東南アジアなどから来た労働者が数千人も死亡したという報道もある。

こうした性的少数者や外国人労働者への人権侵害を批判する声は国際的にあって、人権の尊重はドイツ人が最も大事にする価値観の一つだから、国民は強く反応した。
特に「精神の傷」発言は許せなかったらしい。
だからドイツでは、カタール大会のボイコットを意味するハッシュタグ「#BoycottQatar2022」が拡散したり、一部のパブが試合中継をやめたりして、4年に1度のサッカーの祭典にしては国民の熱は冷めている。
そんな国内の空気を反映するように、ドイツ代表は多様性や反差別を訴える「虹の腕章」を着けてプレーすることにしたが、国際サッカー連盟(FIFA)はそれを政治的主張と見なし、もしそれをすればドイツ代表に制裁を科すと警告する。
これで腕章の着用をあきらめたドイツ代表は、FIFAの「言論封殺」を批判する意味で日本戦の直前、選手全員で口を手でふさぐアピールを行なった。

虹の腕章は人種や性的アイデンティティ、文化や年齢などのあらゆる差別に反対を示すもの。
これ以上にドイツで重要とされるものは無いと言っていい。
だから、警告を恐れて腕章を外したドイツ代表は「卑怯だった」と、日本戦の敗北よりも怒ったというドイツ人の反応をハンギョレ新聞が伝える。

知人のドイツ人の思いも大体これと同じだ。
ブンデスリーガ(国内リーグ)はスルーで、ドイツ代表チームの試合だけを見る「にわかファン」の彼はこう話す。

「サッカーの試合で予想外の負けがあるのは想定内。サッカーはドイツで一番人気のあるスポーツだから、大ショックを受ける人もいる。でも楽しむことが目的のスポーツと、人権を守ることは比較にならない。ドイツ国民が全体的に関心をもっているのはカタールの人権問題で、メディアもサッカーの試合より、これに関する報道を多くしている」

彼にとって性的少数者や外国人労働者の人権問題は、W杯でドイツが優勝することよりも重要で、こう考えるドイツ人はきっと多い。

 

「8000万人のドイツ人が、今まさに発狂している」というのは本当か?
これは例外としても、日本戦の敗北について「衝撃」「ありえない!」「恥さらし」と、ショックを受けるドイツ人の様子を日本のメディアはよく紹介する。
でも、その試合よりもずっと高い関心があって、ドイツ国民が大切にしている価値観や考え方を伝えることは本当に少ない。

 

 

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

「ヨーロッパ」カテゴリー 目次 ①

ドイツ人はバウムクーヘンを食べるのか? 日本の物とはどう違う?

ドイツ料理にジャガイモの理由。三十年戦争とフリードリヒ大王

ジャガイモの歴史:ヨロッパ・宗教の禁止・ポテトの由来

ドイツ人が感じた日本の街や人:無人販売所・盗み・創造力

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。