少しまえに、日本の大学に通うトルコ人と日本料理を食べに行った。
オススメを聞かれたから、この店の三元豚のトンカツはもはや神の領域にあると言おうとしたけど、彼がイスラム教徒だったことを思い出したから、それはやめて別のものをすすめる。
結局、「チキン南蛮&ざるそば」をオーダーした彼といろいろ話をしていると、日本人について意外に思ったことがあると彼が言う。
太平洋戦争の末期、米軍が原子爆弾を2度投下したことは、彼もトルコの学校でならったから来日前から知っていた。
で、それについて日本人はいまどう思っているのか?
何人か知り合いの日本人に聞くと、
「原爆投下?そもそもあれは必要なかったし、民間人の虐殺は戦闘行為ですらない。許せるはずないだろう」
という答えがまったく返ってこなかった。
「ボクが生まれる前のことで実感はないし、もうあんな悲劇を繰り返してはいけないと思うだけだね」と、みんな冷静に話をしていて、アメリカに怒りや憎悪を持っている人なんて1人もいない。
それどころかアメリカは大人気で、一番好きな国はアメリカと言う日本人も多かった。
これは完全に予想外だったから、そのトルコ人としては驚くしかない。
彼の感覚では70年以上前のことでも、2度も原爆を落とされて20万人以上が殺されたら、きっとトルコ人はいまでもその国を許さない。
恨みを持っていない日本人は立派だけど、まるで他国の出来事を話しているようで冷たさも感じる。
このトルコ人と同じようにインド人やほかの外国人からも、いまの日本人はアメリカに対して怒りはまるでなく、好意にあふれていることに驚いたという話を聞いたことがある。
東京大空襲だけでも10万人以上が犠牲になったし、「なのになんで日本人は?」と外国人が疑問に思う気持ちは分からんでもない。
個人的には、3月や8月になるとあの出来事を思い出すから、とても痛ましい気持ちにはなるけれど、いまのアメリカに謝罪を要求したり、責任を追及したりする気持ちは1ミリもない。
2016年に広島を訪問したオバマ大統領が被爆者の男性と抱き合うのを見たら、もうそんなことは無意味に思える。
歴史を忘れてはいけないとしても、いつまでも過去を引きずってアメリカを敵視してもいいことは何もない。
2度の原爆投下があってもほとんどの日本人はもう恨んではいないし、アメリカを好きな人はとても多い。
この理由には「水に流す」という日本人の国民性の他にも、ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(WGIP)というアメリカによる占領政策の影響もあるだろう。
戦後の日本を統治したアメリカ(連合軍)は、日本人の頭の中にあった軍国主義の考え方を完全消去することや、原爆投下について、アメリカに憎しみを持たないようにすることなどを目的にWGIPを行なった。
評論家の江藤淳氏に言わせると、これは「戦争についての罪悪感を日本人の心に植え付けるための宣伝計画」だ。
その一環としてアメリカは1945年12月8日から、「国民は完全なる歴史を知るべきだ」、「軍国主義者の行った侵略を白日に」という趣旨の宣伝記事、太平洋戰爭史を全国の新聞に連載させた。
翌12月9日からは、日本の軍国主義者の犯罪や国民を裏切った人々を明らかにする、といった内容のラジオの宣伝番組「眞相はかうだ」が放送される。
当時の日本人から軍国主義的な精神を無くすことはいいが、情報を操作したり、事実をねじ曲げて日本のせいにするのはやりすぎだ。
その為ならば、真珠湾攻撃や原爆投下などの罪を日本側に押し付けるといった事実の捏造も行われていた。事実の捏造の例として、「連合国は … 原子爆弾を広島の軍事施設に投下しました。」と番組中では述べられている
実際に投下されたのは軍事施設ではなくて、広島市の中心部だったからこれは大ウソ。
でも、この当時の日本はアメリカによって言論統制されていたから、「太平洋戰爭史」への批判や反論は許されていなかったし、「眞相はかうだ」の内容も徐々に国民の間に浸透していった。
「なんで日本人はアメリカに対して怒っていないのか?憎んでいないのか?」
そんな外国人の疑問の何割かは、「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(WGIP)」にあると思う。
日本人の思想を変えようと将棋まで禁止しようとするとか、アメリカは徹底的にこの政策をやっていた。
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「WGIP」の影響が皆無の外国人からしたら、いまの日本人の態度は不思議に見えるかもしれない。
かといって、いまさら恨みとか怒りとはいらないけれど。
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