ことし2021年の終戦記念日(8月15日)、朝日新聞の気分はかなり悪かった。
というのは、菅政権の3人の閣僚(萩生田光一文部科学相、小泉進次郎環境相、井上信治科学技術担当相)が靖国神社に参拝したから。
菅首相は参拝はひかえたものの、自民党総裁として玉串料は納めた(もちろん私費)。
さらにその2日前には、防衛相ら2人の閣僚も参拝していたのだ。
靖国参拝の理由を、「自国のために尊い犠牲となられた先人に、尊崇の念を持ってお参りするのは自然な姿だ」と語る萩生田氏に他の閣僚も同意するはず。
ただ靖国神社には、東京裁判で罪を問われたA級戦犯14人が合祀(ごうし)されている。
そんな施設に大勢の閣僚が行って手を合わせる行為は、「首相自身の歴史観もまた厳しく問われる」と朝日新聞は社説で怒る。(2021年8月17日)
軍国主義の精神的支柱となった国家神道の中心的施設に、閣僚ら政治指導者が参拝することは、遺族や一般の人々が犠牲者を悼むのとは、全く異なる意味を持つ。日本が過去への反省を忘れ、戦前の歴史を正当化しようとしていると受け取られても仕方あるまい
閣僚靖国参拝 首相に歴史観はあるか
ちなみに8月15日には安倍前首相も靖国参拝をしたから、これも朝日新聞にとっては炎上要素だったらしく。
でも、「撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ」と言うように、言論の自由のある日本では反論する権利も認められている。
価値観や立場では朝日新聞と180度違う保守派の産経新聞は、日本が独立を回復した後、国会決議によってすでに「戦犯」の名誉は回復されたことを挙げ、
「合祀を理由にした反対論は筋違いだ」
「靖国神社参拝に対する中露韓の内政干渉に政府は抗議しなければならない。」
と朝日とは真逆の主張を展開。
ちなみに大戦中に外相を務めて「A級戦犯」となった重光葵(まもる)は昭和25年に釈放され、31年には日本の外相として国連総会に参加して、国連加盟受諾の演説して各国代表団から拍手で迎えられた。
そんな産経新聞の社説の肝がここだ。(2021/8/20)
伝統文化に従って戦没者の慰霊と顕彰を行うことは、どの国も行っている大切な礼節といえる。
昨年9月の就任以来、菅首相が一度も参拝していないのは残念だ。靖国神社参拝 首相は内政干渉を退けよ
ということで、靖国神社や戦犯とはどんな存在かという見方にはいろいろあるし、参拝についてOK/NGの判断も立場によって違うというのが日本の現状だ。
ではここで、全世界のキリスト教(カトリック)を総べるヴァチカンの見解に耳を傾けてみよう。
戦後の日本を統治したGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が、「軍国主義の精神的支柱となった施設」を許すわけがなく、靖国神社を焼き払ってドッグレース場にしようと考えその計画まで立てていた。
でも、この神社をなくしてしまうことが、日本人にどんな影響を与えてしまうのか?
この重大事にGHQ内部でも賛否両論に分かれる。
決めかねた彼らは、ローマ教皇庁代表として東京にいたブルーノ・ビッテル神父と、メリノール宣教会のパトリック・バーン神父の意見を聞くことにする。
靖国神社を燃やして、跡地にドッグレース場を作る計画を聞いたビッテル神父はこう言い切った。
「いかなる国家も、その国家のために死んだ戦士に対して、敬意を払う権利と義務があると言える。それは、戦勝国か、敗戦国かを問わず、平等の真理でなければならない。」
「靖国神社を焼却する事は、連合国軍の占領政策と相容れない犯罪行為である。」
つまり、ビッテル神父はこの“蛮行”に対して、明確に反対の立場を示したのだ。
そしてGHQの面々にトドメにこう言う。
「靖国神社が国家神道の中枢で、誤った国家主義の根源であるというなら、排すべきは国家神道という制度であり、靖国神社ではない。我々は、信仰の自由が完全に認められ、神道・仏教・キリスト教・ユダヤ教など、いかなる宗教を信仰するものであろうと、国家のために死んだものは、すべて靖国神社にその霊をまつられるようにすることを、進言するものである。」
バーン神父の意見もこれと同じで、靖国神社は消滅をまぬがれたという。
さらに言うと、ローマ教皇庁は「祖国に対する信者のつとめ」として靖国神社の参拝を認めた。
戦争が終わった後、GHQに敵視されていた靖国神社が生き残った理由として以上の話が伝えられている。
ただこれとは違う見方もあるので、くわしいことは 靖国神社の存続とカトリック教会 を見てくれ。
おまけに書くと、1980年にヨハネ・パウロ2世がA級・BC級戦犯として処刑された人々へのミサをローマのサン・ピエトロ大聖堂で行った。
靖国神社の近くにはキリスト教系の女子高があって、そこの生徒はこの神社に頭を下げて通学するという。
人によっては、涙腺が破壊されるこの光景については「靖国神社 女子高生 一礼」で検索してほしい。
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