ブラジル人からすると意味不明? 日本企業の働き方・考え方

 

「知識青年は農民から再教育を受けなければならない」

1968年の12月22日、文化大革命が行われていた中国で、こんな毛沢東の指示が『人民日報』に掲載された。
都市部にいる青年は地方の農村へ行って農作業をすることで、スバラシイ思想教育を受けることができると毛主席は考えた。
他にもこれで、豊かな都市と貧しい農村の格差を解消する、都市で増えてきた無職の青少年を地方へ飛ばして失業問題を片づける、といった現実的な目的もあったらしい。
くわしいことは「上山下郷運動」をチェックだ。

でも、1980年の12月22日には同じ『人民日報』で、毛主席は文化大革命で過ちをおかしたと批判されたから、輝かしい社会主義国家を建設するために、国民を協力させるというこの政策も失敗に終わったのだろう。
ちなみに毛沢東はその前、1976年にこの世を去っている。

 

エリート層にいる若者があえて田舎へ行って、農民と一緒に汗水たらして、肉体労働をすることで大事なことを身につけることができる。
これは日本人の価値観に合っていて、コンセプトだけなら「すてきやん」と支持する人は多いと思う。
でも、ブラジル人はきっとそうじゃない。
まえに知人のブラジル人とご飯を食べていると、彼が友人から聞いて、「なるほど。ナニ言ってんのかちょっと分からないけど、それはとても日本人らしい発想だ」と思った話があると言う。

その友人もブラジル人で、日本の有名大学の大学院を卒業したエリート。
理系のその人は2年前に日本の大手自動車会社に就職して、いまは車の設計にかかわる仕事をしている。基本的にデスクワークでほとんど椅子に座りっぱなしだ。
職場の雰囲気や仕事の進め方にも慣れてきたある日、彼は日本人の上司に呼ばれて、今度の〇月から半年の間、傘下の自動車工場に行って現場で働くことを命じられた。
この会社では、そういうことがあるというのは前々から聞いていたから、言われた時は特に何も思わなかったが、彼が入社してから初めてその話を聞いた時は、あまりに意味不明で困惑した。

日本とブラジルの大きな違いは「貧富の差」で、おそらく世界でトップ10に入る超格差社会のブラジルでは、社会の階層がかなりハッキリしているという。
だから、工場で働くことを命じられたブラジル人の感覚では、大学院を卒業した人間が中卒や高卒の人たちと工場で並んで立って、組立作業をすることは考えられない。
それをすることで、これからの自分の仕事に役立つ知識や技術を得ることができるのか?
自分のキャリアとはほとんど関係なくて、具体的な意味や目的が見えてこない。

でも、日本に住んでいた経験から、現場の人と同じ仕事をし、同じ場所で食事をすることは日本人にとって大事なことなんだろう、ということは何となく理解できる。
ブラジルに比べれば日本には格差や階層は無く、平等が行きわたっている社会だから、「ファベーラ」のような極端に治安の悪い貧民街も無い。

日系人が語るブラジルの治安。日本にはない「ファベーラ」

日本ではトイレ掃除を重視して、社長がそれをする会社もある。
ブラジルなら会社のトップが清掃員の仕事をすることはないし、それをスバラシイとする価値観もないから、こういう日本人の感覚はナゾ。
でも、「現場主義」から将来の幹部候補も”末端”の仕事をして思いを共有したり、その目線から会社を見ることが日本では重要とされている。
会社だけでなく日本の社会全体で、「上級国民」が清掃員や肉体労働者をロコツに見下ろすことはなく、どんな人にも一定の敬意があるように見える。
日本に来てから、これはすごくいいことでブラジル人にも必要な態度だと思った。

工場での仕事が自分の将来に役立つかどうかは疑問だけど、案外やってみると、良い発見があるかもしれない。
こういう仕事をしたことはなかったし、ブラジルの会社なら経験できないから楽しみもある。

 

と、そんな話を友人から聞いた知人のブラジル人も、会社のエリートをあえて工場で働かせる目的や意味はよく分からないが、日本人がそういうことを大切に考えていることは何となく理解できるという。
「知識青年は農民から再教育を受けなければならない」という毛沢東思想は、実はいまの日本企業にあったのかも。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。