謝罪と賠償→誠意ある呼応 韓国の“解決案”とは何だったのか?

 

クリスマスシーズンになると、家の入り口に飾られるクリスマスリース。
あの丸い輪っかには、始まりも終わりもない「永遠」の意味があるという。

【縁起物】しめ飾り(門松)やクリスマスリースを飾る意味

 

さて日本と韓国の関係を、戦後最悪という奈落に突き落とした徴用工問題について、韓国政府が先日、”解決案”を発表したことで、日韓メディアの注目を集めた。

その中身を紹介する前に、まずこの問題のキホンを押さえておこう。
「徴用」をめぐる問題は1965年の請求権協定によって、日韓両政府が「完全かつ最終的に解決」されること、そして「いかなる主張もすることはできない」ことを約束したから、すでに解決済みだ。
くわしいことは外務省ホームページ「大韓民国による日韓請求権協定に基づく仲裁に応じる義務の不履行について」で確認されたし。

だがしかし、2018年に韓国最高裁が徴用工訴訟で、日本企業に賠償を命じる判決を出してしまう。
これは「完全かつ最終的に解決」という約束をひっくり返すものだから、日本政府の激怒は必至。
実際のところ、この判決を聞いて「まじかよー」と頭を抱えた韓国の人たちは多かったと思われる。
ただ韓国としてはこの結果に基づいて、日本企業へ賠償の支払いを求めることは国内的には当然で、これまでそうしてきた。
でも日本からすれば、これは明らかな合意違反だ。
当然そんな要求は受け入れらず、65年の協定に基づいて、この問題を解決するよう韓国政府に訴えてきた。

ということで、「約束守れ vs 払え」の絶対に負けられない日韓戦がここ数年続いて、完全なこう着状態におちいったと思われたところで、韓国政府が”解決案”を提示した。
これはとりあえずは、韓国側が原告に賠償金に相当するお金を支給するというもので、日本には負担を求めない。
日本に謝罪や賠償を求めないということなら、日本政府にも受け入れは可能だ。
ただこれは最終案ではなく、これから変更されるおそれもあるから、日本も公式な見解を述べることはできないが、尹(ユン)政権が「徴用工問題の解決に本気なのは間違いない」と好意的に受け止めている。

時事通信の記事(2023年01月13日)

政府、徴用工解決案に懐疑的 韓国の「本気度」は評価

確定案ではないから懐疑的ではあるものの、ナンダカンダ言って何もせず、事実上この問題を放置していた文政権に比べると、ユン政権にはたしかに”ホンキ度”を感じさせる。
これで徴用工問題も、やっと解決という光に向かって動き出す。
と思った瞬間がオレにもありました…。

 

韓国政府がこの案を発表すると、「日本を免責するなんてあり得ない!」「売国奴め!」といった国民の怒りが政府に集中した。
とりあえずではあっても、「韓国企業からお金集めて、原告に支給する」と公式に言えば、こうした激しい反応を引き起こすことはダレだって分かる。
(サンドバッグ状態になることを覚悟の上で、尹政権はあの案を発表したから、日本は「本気なのは間違いない」と評価したはず。)
次に韓国政府がすることは、こうした反発する世論を説得する作業だ。

…と思ったのけど、韓国側は日本へ「誠意ある呼応」を求めてきました。

毎日新聞の記事(2023/1/19)

駐日韓国大使 慰安婦合意の二の舞いを避けるため 日本側の呼応を期待する

徴用問題の解決については、「法的な問題ではなく、人と人の問題」と話す韓国大使は日本の”呼応”が必要と訴える。
韓国がオブラートに言う「誠意ある呼応」とは、日本の謝罪や賠償を指す。
でも、問題はすでに解決済みという立場の日本は、それは絶対に受け入れられないと、これまでに何回も何回も何回も主張してきた。
その延長で韓国側が発表した案は、謝罪&賠償はないという形のものだったから、日本も好意的に受け取ったのだ。

にもかかわらず、韓国側はいまこんなことを言う。
聯合ニュースの記事(2023.01.17)

徴用問題 「日本の呼応なければ協議の必要ない」=韓国次官

この次官の強調する「誠意ある呼応」とは「(日本の)謝罪と寄与」のことで、”寄与”というのは賠償金(またはそう判断できる金)の支払いを意味する。
これがなければ、日本と話し合う必要もないと次官は言い切る。

日本から「誠意ある呼応」さえあれば、すぐに解決案を発表すると韓国政府も言う。
中央日報の記事(2023.01.17)

「日本呼応時には発表可能」…強制徴用解決に速度出す韓国政府

 

韓国の“解決案”とは何だったのか?
現金化を避けるための”とりあえずの案”だとしても、「謝罪と賠償」がなくなったから日本は「尹政権は本気だ」と評価したのに、「誠意ある呼応」と表現を変えただけで、韓国はまた同じ要求をしてきたの巻。
(謝罪と賠償はできないとしても、それ以外のことで、日本が韓国のホンキに“呼応”することは重要と思うけど…。)
国内の厳しい反発を材料に、日本へ譲歩を迫っているような雰囲気もあるし、もともと韓国政府はこれをねらっていたのかもしれない。
あの案を発表した後、てっきり原告側を説得する作業に入るかと思ったのに、これでは一周回っただけでは?

始まりも終わりもなく、「永遠」を意味するというクリスマスリース。
あの材料にはトゲのある柊(ひいらぎ)の葉が使われていることから、クリスマスリースを、処刑されるキリストが頭にかぶっていた「イバラの冠」に見立てることもある。
日韓の関係改善もまだまだイバラの道で、終わりがまったく見えない。

 

 

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2 件のコメント

  • 徴用工判決という事件自体が韓国左派の意図的挑発から始まったのです。
    上記本文にもお知らせしているように、そのような事件が発生する余地はありません。
    韓国左派の”計画された言い掛かり”でした。問題はこの計画された言いがかりに韓国民が同調しているということです。韓国社会に深く浸透した左派の反日扇動が、韓国民の頭と胸を掌握しているため、解決は難しいです。尹政権の実力者たちも韓日関係がこれ以上悪化し、韓国経済が打撃を受ける状況を懸念しているため、韓日関係の改善に乗り出したのであって、日本が徴用工に賠償すべきだという考えを持った反日感情にとらわれた人物がほとんど全てだと思います。
    韓日関係修復はThe long and winding roadです。

  • 日本へ賠償金の支払いや謝罪を要求しないように見えたのですが、伊政権も結局はそれをさせたいのでしょうね。
    徴用工問題も解決するかと思ったのですが、また分からなくなりました。
    日韓関係の道はホントに遠く険しいですよ。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。