日本でいえば幕末、薩摩藩士がイギリス人を斬り殺して、後に薩英戦争に発展する「生麦事件」が起きた1862年、アメリカではリンカン大統領が奴隷解放宣言を出した。
そんな記事を前回書いたから、今回はそのついでに小ネタを紹介しようと思う。
「偉大な解放者」、「史上最高の大統領」といわれるリンカンの本名は、「Abraham Lincoln(エイブラハム・リンカーン)」という。
そしてその愛称は「Abe(エイブ)」。
誠実で公平さに定評のあった彼は、「Honest Abe」(オネスト・エイブ:正直者のエイブ)ともいわれた。
「Abe」をそのまま日本語で読めばアベになる。
そんな偶然を利用して、故・安倍元首相は訪米した際、ホワイトハウスで行われた記者会見でこの偉大な大統領にあやかりこう言った。
「私の名前は安倍ですが、時折、米国では『エイブ』と発音されます。しかし、私はあまり悪い気はしません」
ドヤ顔ですべるとかなりハズイのだが、アメリカ人はこの発言をどう思ったか?
安倍氏を好きでも嫌いでもない、中立な立場にいる知人のアメリカ人に感想を聞くと、
「良かったと思うよ。リンカンはアメリカでとても尊敬されている大統領で、それと関連付けると印象に残りやすい。言っていることに間違いもないしね。」
とわりと高評価だ。
ちなみに「Ape(エイプ)」だと、類人猿や尾のないサルになる。
monkey は尾の長いサルのこと。
この反対で、場をなごませようとして失敗した政治家もいる。
外務大臣だった櫻内 義雄(さくらうち よしお)は1982年に訪米して、ロナルド・レーガン大統領との会談を終えた後、記者団に向かってこう言った(おそらく笑顔で)。
「もうすぐ桜が咲きます。私の名前は櫻内、つまりチェリーです。日米間でも間もなく桜が咲くようになります」
でも残念ながら櫻内サンは、英語のチェリーには「童貞」の意味があることを知らなかったらしい。
それでこの発言は「アイ・アム・チェリー(意訳:童貞ですが、なにか?)」として、メディアで報じられた。(櫻内 義雄・語録)
このときレーガン大統領やアメリカ人の記者が凍りついたか、それとも必死に笑いをこらえていたのかは知らない。
とにかく外務大臣が訪問先で、こんな告白をしたのは人類の歴史で初めてだ。
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