世界中の若者を対象に、数学の世界ナンバーワンをきめるのが国際数学オリンピック(International Mathematical Olympiad)。
これは、高校生などの参加者が数学の問題を解く能力を競う国際大会で、毎年世界のどっかの国で開催されている。
2023年のことしは日本(千葉県)でおこなわれる予定だ。
もともとこれは共産圏で企画されたイベントで、1959年に初めてルーマニアで開催されたときには、ソ連や東欧の7カ国が参加してルーマニアが1位に輝いた。
その後、ソ連をボスとする東側陣営は冷戦に負けて滅亡する。
でも、政治思想と関係ない「国際数学オリンピック」は生き残って、きょねんは日本を含めて100以上の国や地域が参加した。
1990年に初めて参加した日本は2009年の2位(銀メダル)が最高で、ことし千葉で初の世界1位が期待されているところ。
さて、そんな日本数学の基礎が完成したのは江戸時代で、そのころの日本人は、数学については世界で別のステージにいたのだ。
それは遺題継承(いだいけいしょう)というユニークな方法による。
天才・関孝和の記念切手(1992年)
いまでいう数学は江戸時代には和算と呼ばれていて、その専門家(和算家)の吉田 光由(よしだ みつよし:1598年 – 1673年)は著書に、
「実力があると思うものは、これを解いてみよ」
という挑戦的な言葉と一緒に、12個の問題を提示した。
答えは載ってないから、自分で計算して解かないといけない。
こう言われたら、「ならば解いてみせよう!」とこの遺題(いだい)に挑む人が現れるのは必然。
みごとミッションコンプリートして、その答えを自分の本に載せると、今度は自分も新しい問題(遺題)を作って本に載せた。
こんな感じに、他人に遺題を出す → それを解く → 自分が遺題を作る → それに挑んで…の繰り返しから、「遺題継承」という世界で日本にしかない数学文化がうまれた。
こんな日本人のチャレンジ精神の無限ループから、関孝和(せき たかかず)というド天才が出てくる。
生きてるステージが違って実感がつかめないけど、『国立研究開発法人 科学技術振興機構』によるとこんな偉人だ。
関孝和は多元連立方程式から変数を消去する一般論(今日、消去法と呼ばれる)を、ヨーロッパの数学者に先立つこと70年早く完成させた。
ライプニッツ
同じ時代のヨーロッパには、ゴットフリート・ライプニッツがいた。
ゲームキャラなら幹部クラスにいそうな名前のこの人物は、世界的にも有名なドイツの数学者。
ライプニッツに完成させられなかった行列式の概念を、関孝和は導入することに成功したという。
関孝和は突然変異で生まれた異能の人物じゃなくて、「遺題継承」という日本文化の影響を受けて登場した人物だ。
江戸時代の日本人は中国や西洋から、思想や医学などを学んでも、数学は特に学ばなかったという話を何かの歴史本で読んだ記憶がある。
当時の日本人はその分野では未来世界にいて、その必要がなかったから。
ことしこそ、国際数学オリンピックで世界一になりますように。
それがダメなら、関孝和が日本の高校生に転生して、国際数学オリンピックに挑むというマンガでもいいや。
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