数年前に浜松にある小学校で、英語を教えていたアメリカ人からこんな話を聞いた。
5年生の初めての授業で児童たちの前に立った彼が自己紹介をした後、担任の先生が「じゃあ、ジョン先生に聞いてみよー」と言って質問タイムがはじまる。
(関係ないんだが、このタイミングでアメリカ人女性に向かって、「3サイズを教えてください」と言って、アメリカ人を初日からブチギレさせた高校生がいた。)
児童から好きな日本料理を聞かれたジョン先生は、「ラーメンです。特に豚骨ラーメンが好きです」とにこやかに言うと、すぐに子供たちからこうツッコまれた。
「ラーメンは中国料理じゃん。日本料理じゃないよ」
アメリカで生まれ育った彼はほかの米国人と同じように、ラーメンを日本の食べ物と思っていたから、日本でその認識を否定されてチョット戸惑った。
トップ画像はニューヨークのラーメン屋のもの。
NYにいる知人が食べたこのラーメンは、チップ込みで約3000円!
そりゃ日本へ来た外国人はラーメン屋に駆け込むわ。
ラーメンを日本料理と言っていいかのどうか?
これに悩むとしたら世界でも日本人ぐらいなもので、知り合いのアメリカ人やタイ人、アフリカ人などの外国人はみんな「Japanese food」と思っていた。
中国人に聞いても中国にある麵料理とは別物で、最近は日本から逆輸入されているから、ラーメンは中国由来の日本料理という。
世界の料理を紹介する海外サイト『Taste Atlas』の見方も同じだ。
このサイトが発表した「世界の伝統料理ベスト100」の21位は Tonkotsu ramen だった。
Best Traditional Food in the World
豚骨を煮込んで作る濃厚なスープ、柔らかい卵、生の麺、そして口の中で溶けるような柔らかい豚バラ肉からできる豚骨ラーメンは、とてもユニークな食べ物だ。
ラーメンのスタイルを超えて、それ自体がひとつの料理といえるほど、人気のある特別な一品と紹介されている。
It is so popular and special that it could be a dish of its own, not just a ramen style.
ということは、豚骨ラーメンがラーメン以外の食べ物になるってことか?
ちょっと何言ってるか分からないけど、海外でとても高い評価を受けていることは理解した。
「世界の伝統料理ベスト100」には豚骨ラーメンのほかに、あの日本の国民食もランクインしていた。
インド人が見て理解不能におちいった缶のカレードリンク
「it could be a dish of its own」というのは、たとえば豚骨スープだけで1つの飲み物になるということかも。
イタリアのマルゲリータ・ピザ、中国の小籠包、トルコのシシカバブといった海外の強豪をおさえて、世界第1位に選ばれたのは「日本のカレー」だ。
ベスト5位までには世界のこんな料理がならんでいる。
2位:ピッカーニャ(グリルステーキ、ブラジル)
3位:アメイジョアス ア ブリュアオン パート(アサリの酒蒸し、ポルトガル)
4位:湯包(タンバオ:中国)
5位:餃子(中国)
*このランクは4月26日時点のもので、サイトが更新されるたびに順位も変わる。
ベスト30に入った日本の食べ物は、カレーと豚骨ラーメンとかつ丼(30位)。
日本のカレーをこの外国人向けのサイトでは、日本語をそのままローマ字にした「Karē」と表記している。
「Japanese-style curry」として知られる Karē は、日本でもっとも人気のある料理のひとつ。
明治時代にイギリス人が日本人に紹介して、初期のころは、カレーは裕福な人だけのグルメ料理だっという。
インドカレーと比べると、日本のカレーは小麦粉やルーを使うから、辛さが控えめで甘くてとろみがある。
日本でカレーは真の国民食(a true national dish)と言えるほど、人気のある料理というのは納得するしかない。でも、なぜか43位に「Karē raisu」がある。
カレーとカレーライスはどう違うのか?
日本では大きくカレーライス、カレーうどん、カレーパンの3種類に分かれていて、カレーライスの人気がいちばん高いと書いてあるから、1位になった「Karē」とはあの黄色いドロッとしたヤツのことだろう。
さて、海外サイトが選んだ「世界の伝統料理ベスト100」に日本のネット民の感想は?
・トラディショナル?
・カツ丼って世界にバレてるんだな
・あさりの酒蒸しと聞いて 和食来たーと思ったら、 ポルトガルかよ
・松屋のカレーでも欧米人にはレストランで食べるようなご馳走だよ
・マジで「日本の伝統料理」というと何になるのかなぁ
蕎麦、おせち、雑煮、味噌汁とか?
日本人なら、カレーとラーメンを「日本の伝統料理」と言うことに抵抗を感じる人が多いと思うけど、外国人基準だときっと問題ない。
たとえばアメリカは1776年、オーストラリアは1901年にできた若い国だから、国内にあるもっとも古い建物を聞いても、江戸時代のモノだから日本人からするとそんな昔でもない。
法隆寺や伊勢神宮は約1500年前の建築物だと言うと、「まったく想像できない!」と言葉を失うアメリカ人もいた。
こういう国の人たちの歴史感覚は日本人とは違う。
だから100年以上前からある料理なら、外国人には「Traditional Food」に見えてもおかしくない。
上の人物は戦前の日本を代表する東洋史学者で、京大の学宝と呼ばれた内藤湖南(1866年 – 1934年)。
日本文化の特徴について彼はこう指摘する。
日本には、文化の種が出來上つて居つたのでなくして、只文化になるべき成分があつた所へ、他の國の文化の力によつて、段々それが寄せられて來て、遂に日本文化といふ一の形を成したのでないかと思はれるのであります。
「日本文化とは何ぞや(其二) 内藤 湖南」
*來は来、只はただ、遂にはついに。
日本人は海外からきた文化にインスピレーションを受けて、それを自分たちの好みや価値観に合うように、好き勝手にいじって別のモノへ変えてしまう。
由来がどこの国でも、そこには無い日本独自のモノを作り上げたら、それはリッパな日本文化だ。
日本人にはオリジナリティが無くても、クリエイティビティ(創造性)がある。
カレーやラーメンについては、インド人も中国人も自国の料理とは違うと認めているから、これはもう日本の伝統料理といってヨシ。
となるとカレーラーメンが世界最高か。
少し前にブームになったイタリアのドルチェ(お菓子)、マリトッツォ。
本当に一瞬で「あの人は今?」状態になっている。
おまけ
「他の國の文化の力によつて~」ではなくて日本人の独創性で外国人から、
・This is so very originals..
・unbelievable 😂
・Japanese are really funny and clever.
・It’s so funny and original great job love it 🤣👍😊😍
と称賛されたのがこちら。
でも、これが日本文化のひとつを形成することはない。
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