今週の日曜日、3人のベトナム人と竹島(愛知)へ行ったとき、そこに広がる光景を前にして彼らの足が止まった。
「あの人たちは何をしているんですか?」
「何をしているんですか?」って、熊手を持って海の砂場を掘っていればそれはSHIOHIGARIだろ。
というのは日本の話で、彼らはこの光景を初めて見た。
ベトナム人は潮干狩りなんてしないらしい。
それは君たち、人生の半分を失ったことと同じだぞ。
というほどではないけど、あれはあれで楽しいのだ。
このとき「あさり」の話になって、それから話題は日本料理へ移っていった。
ひとりのベトナム人が以前、味噌汁に入っていたあさりについて、一緒にいた日本人から「それは肉を食べるというより、味をよくするための出汁(だし)をとるんだよ」という話を聞く。
こんなふうに貝で出汁をとるというのは初耳で、彼はふつうの料理に隠された奥深さに感心したとか。
噛めば噛むほど味がでるのが日本料理で、ベトナム人も話を聞いて納得。
それを聞いた別のベトナム人が、一番好きな日本の料理は「うどん」と言う。
寿司やラーメンは分かるけど、外国人が最高の日本料理で「うどん」をチョイスしたの初めて聞いたかもしれない。
ベトナム料理といえば、とくにベトナム北部は1000年間も中国に支配されていたから、中国料理の影響がとても大きい。
でも中国料理と違って油が少ないし、味も薄くて体によさそう。
それにタイやカンボジアの料理と比べて、そんなにスパイシー(辛い)とは思わなかった。
全体的にベトナム料理は味がマイルドで、日本人には親しみやすい。
くわしいことはここを。
日本でも有名なベトナムの麺料理レーザーラモン、ではなくてフォー。
他の2人もナンバーワン料理とは言わないけど、うどんは好きだと言う。
うどんをはじめ昆布やカツオでとる出汁(だし)がマイルドでおいしくて、ベトナム人の舌にあっていたらしい。
ベトナム料理にも「出汁」の発想はあると思うけど、日本ほどではないはず。
農林水産省のホームページにはこれこそ日本料理の原点と書いてある。
日本料理の世界ではコンブとカツオの合わせだしでうま味を増す料理法が昔から知られ、長く受け継がれているのです。
そして出汁といえば、この人を忘れてはいけない。
日本料理界の巨匠。というか神。
北大路 魯山人(きたおおじ ろさんじん:1883年 – 1959年)
料理研究家で美食家、さらに篆刻家・画家・陶芸家・書道家・漆芸家といった様々な顔を持つミル・マスカラスのような人。
魯山人は「美味しんぼ」に出てくる海原雄山のモデルになった。
彼は最初からおかしい。
3歳のとき、上賀茂神社の東にある神宮寺山を散歩中、「真っ赤なつつじの咲き競う光景」を見て、「この激しい色彩の渦を見て「美の究極」を感じ、自分は美とともに生きようと決心した」という。
どんな3歳児だよ。
まさに三つ子の魂百まで、ですね。
魯山人は「だしの取り方」という著書で、日本料理の原点である出汁について重要なことを書いている。
ちょっとそれをのぞいてみよう。
まず日本の出汁は千年の都で、長い時間をかけて考え出されたという。
北海道で産出される昆布を、はるかな京都という山の中で、昆布だしを取るまでに発達させたのである。
北海道の自然と京都人の創意工夫によって、いまの昆布出汁は生まれたのだ。
ちなみに東京では、昆布で出汁を取るということがほとんどなかったらしい。
また、かつおだしについては、かつおを削るときの鉋(かんな)を重視している。
無理をすることは味が死ぬことになるのであるから、生きた味を出すためには、よく切れる鉋にかぎるのである。
おいしい出汁を取るには、かつおや昆布を生かして活かさないといけない。
素材がもともと持っている味を引き出すことは日本料理の大きな特徴だ。
ベトナム人も感心した出汁には、千年を超える歴史と日本人の努力が込められていたのだった。
完。
おまけ
ミラノ万博・日本館の様子
Francesco Dazzi の Future restaurant show at Japan pavilion EXPO 2015
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