日本の隣人である台湾と韓国には同じ過去がある。
日清戦争で日本が勝利して、1895年の下関条約によって清朝(中国)が台湾をゆずり、太平洋戦争が終わる1945年まで日本は台湾を統治した。(日本統治時代の台湾)
韓国のほうは、1910年に日本と大韓帝国が日韓併合条約を結んだことによって、1945年まで日本に統治された。(日本統治時代の朝鮮)
当時はアメリカ、イギリス、フランス、中国(中華民国)などがこの併合を認めていて、いまの日本もこれを合法だったと考えているが、韓国は国際法違反だったと反発している。
台湾とはこうしたモメゴトはない。
日本統治という同じ歴史をもっていても、韓国と台湾では日本に対する見方が”まったく”と言っていいほど違うのだ。
だからこんな銅像は韓国ではあり得ない。
昨年7月に安倍元首相が凶弾に倒れた時、多くの台湾人が驚き悲しんだ。
日本台湾交流協会がメッセージボードを置くと、人々が殺到して感謝や追悼の言葉を書き込んで、すぐにスペースが無くなったから、交流協会は2つ目目のボードを用意しないといけなかった。
悪口のような言葉があると、次に来た人がそれを黒く塗りつぶす。
日本でいえば東京タワーのような台北のランドマーク「台北101」では、安倍氏のために追悼のライトアップが行われる。
さらに安倍氏の功績を称えたり、台湾との友情を記念するために「永遠の友人」として銅像が建てられた。
つい先日、ある台湾人がこの像に花を手向けて、安倍さんに感謝の気持ちを表す様子をSNSにアップしたのを見て、この像のことを思い出した。
これが韓国に行くと世界が逆転する。
先の太平洋戦争について、「戦争とかかわりのない未来の子供たちが謝罪を続けないといけない宿命を背負わせてはいけない」と強調し、韓国で慰安婦合意や請求権協定がひっくり返されると、「国と国との約束はしっかり守ってほしい」「国際法違反は認められない」と迫る。
日本としては当然の主張でも、国民感情を逆なでする安倍氏を韓国メディアは「極右政治家」と非難した。
あくまで韓国視点だが、正しい歴史認識を持ってなく、日本社会を右傾化させ、韓日関係を悪化させた張本人の安倍氏を韓国メディアはこう表現する。
中央日報(2014.02.12)
韓中の“公共の敵”安倍首相はなぜ人気?…「強い日本」に若者も熱狂
中国のことは分からないが、韓国で安倍氏が「公共の敵」とみなされていたのはたしか。
安倍政権下で対韓輸出が厳格化されると、韓国では激しいボイコット運動が発生し、反日感情がコントロールできないほどの勢いになると「ノーアベ」へシフトした。
ハンギョレ新聞(2019-08-06)
「NO JAPAN」ではなく「NO安倍」、賢明で成熟した対応を
これが「賢明で成熟した対応」になったり、放射能汚染を念頭に「日本に行けば鼻血が出る」と書かれたTシャツを販売する政治家が登場したというのは韓国だけの現象だ。
東亜日報はこんな記事を載せる。(August. 27, 2020)
和田春樹名誉教授、「安倍首相が退かない限り、日韓関係は改善されない」
この教授は日韓併合の無効論を唱えたり、竹島問題について日本は韓国の主張を認めるしかないと言ったりするから、韓国にとってはとても都合がいい。
当然、日本ではほとんど相手にされていない。
それでも安倍氏が亡くなると、韓国メディアは一斉に哀悼の意を表明した。
でも、すぐにこれを「保守右翼的色彩が深まり、これに伴って韓国に敵対的な雰囲気」が深まった日本を変えるチャンス(ゴールデンタイム)とみた。
中央日報(2022.07.11)
韓日関係、「安倍氏の影から抜け出す」にはこの3年がゴールデンタイム
メディアや政治家があおるから、こういうことをする国民が出てくる。
こんな韓国で安倍氏を「永遠の友人」として称える銅像や、その像に花を手向けて感謝の気持ちを表す市民なんて考えられない。
的当てゲームの「的」にされて、それにキムチをぶつける人なら想像できるが。
台湾では、安倍さんを「公共の敵」とメディアが非難することはない。
「極右政治家」なんてレッテル貼りがあったら、市民が黒く塗りつぶす。
同じ過去を共有していても、教育の違いによって現在の反応はこれほど変わるのだ。
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