きのう自民党総裁選に勝利し、次の日本の首相になることがきまった岸田文雄氏に、韓国メディアが全集中している。
「戦後最悪」と何度も言われるだけで、まったく打開策の見えない日韓関係。
日本の首相交代がそれに良い変化を与えるかどうかの一点に、韓国メディアの関心は集中している。
「韓国と岸田氏」というと外務大臣時代に、日韓最大の外交問題だった慰安婦問題を解決に導いた2015年の日韓合意を抜かして考えることは不可能。
中央日報の記事を読むと、そのときの岸田氏の決意や苦悩が見えてくる。(2021.09.30)
慰安婦合意を覆した韓国にしこり 「岸田氏、来年7月に本性表わす」
まず合意の直前、4日前になったとき当時の安倍首相は岸田外相に、合意文章にある「日本政府は責任を痛感」という表現に難色を示す。
日本はもともと慰安婦問題は1965年の合意で解決済みという立場だったのに、韓国側にゆずる形で再び合意を結ぶことになったのだ。
日本に法的責任がないの明らかだったし、一体これは何に対する責任かもアイマイで、この表現は後に韓国と揉める原因になりかねない。
渋る首相に岸田氏は「ここで決着を付けて先に進むべきだ。未来を考えたとき、いま合意しなければ日韓関係は漂流する」と力強く言って説得し、折れた安倍氏は「ゴーサイン」を出す。
でもやっぱり不安だったようで、安倍首相は合意前日の夜に再び岸田氏に、「本当にこのままいってもいいのか」と聞いて確約を受けたという。
この翌日、日本は慰安婦問題について道義的責任を認め、韓国側に心からのお詫びの気持ちを表明することと、10億円の支援金を渡すことを約束し、韓国側はそれをもって慰安婦問題の最終的解決にすると約束した。
この交渉では、日本は韓国側の要求をほぼ丸のみしたことが明らかになっている。
例えば支援金として日本は5億円ほどを提示したけど、「中途半端な金額だ」と韓国は突っぱねて10億円を要求し、日本はそれを受け入れた。
ある意味、日本の妥協&譲歩の産物である合意の詳細は外務省ホームページにあって、そこで韓国のユン・ビョンセ外務大臣はこう明言している。
今回の発表により,日本政府と共に,この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。韓国政府は,日本政府の実施する措置に協力する。
慰安婦問題の解決を世界に発表した両外相
その後に起こった“まさか”について、中央日報の記事に書いてある。
「文在寅(ムン・ジェイン)政府発足後、この合意が事実上破棄されると岸田氏は日本世論から集中砲火を受けた。」
当時の日本の空気はボクも知ってる。
約束を破った文大統領は当然として、すぐに破られるような合意をした岸田氏もネットで「無能」、「売国」などとボロクソ叩かれた。
これ以来、岸田氏は「はしごを外された」と言うようになったというから、政界でもかなり肩身の狭い思いしたはず。
でも慰安婦問題を解決したあの合意は画期的だったし、両外務大臣がガッチリ握手した写真を世界に公開し、米大統領も国連のパン・ギムン事務総長も歓迎した合意を破るなんてことは、もはやアニメの世界の出来事で、現実で起こると想像できなくても仕方ないと思う。
岸田氏にとっては、この文政権の“合意破り”が対韓認識の原点(またはトラウマ)になっているらしい。
徴用工問題について日本のメディアに聞かれた岸田氏は、きょねん12月にこう言った。
「それは国際法と条約を守るか守らないかの問題だ。日本が譲歩する余地はない」
「米国が『(日韓が)仲良くしろ』と言っても(日本の)政論を譲ることはできない」
自民党総裁選でも「韓国は国際法と国際合意を守らなければならない。ボールは韓国側にある」と強調し、韓国に妥協・譲歩る気配は一切見せない。
そんな人物が新首相に就任するにあたって、韓国メディアが何を要求したか、以下ご覧ください。
ハンギョレ新聞の社説「岸田新総裁選出、韓日関係リセットの契機にしよう」(2021-09-30)
「岸田政権が韓国に対する報復性の半導体輸出規制を解除し、強制動員と慰安婦被害者に対する謝罪と賠償に前向きな立場を示すよう願う。」
「日本は「現金化すれば報復」という脅迫ではなく、問題解決のための対話に乗りださなければならない。」
6年前、渋る首相に「ここで決着を付けて先に進むべきだ」と迫って合意を成立させた。と思ったら、わずか3年後にその”作品”が破壊された。
この点について岸田氏は怒り心頭のはず。
「米国が仲良くしろと言っても、譲ることはできない」、「日本が譲歩する余地はない」と言い切ったのはその気持ちの表れだ。
そんな人物に韓国側はこんなこうも要求する。
中央日報の社説「日本の新首相を機に韓日関係の正常化を」(2021.09.30)
「慰安婦合意に署名した当事者である岸田氏は両国の関係改善に積極的に努力する必要がある。」
「岸田氏が首相に就任したら韓日両国は首脳会談を通した対話に出るべきだ。感情と対立よりも、互いに立場を理解して尊重することが重要だ。」
自国の大統領が犯した約束違反は一切スルー。
必至の思いで合意を成立させたら、すぐにハシゴを外されて傷ついた人物に塩、韓国風にいえば唐辛子をぬるようなことを平気で言う。
「譲歩する余地はない」という人物に「謝罪しろ」とはもはやコメディだ。
言いたいことを言って挑発していく攻撃的なスタイルは、アニメキャラなら好きだけど、これから首相になる隣国のVIPに対してはどうなのか。
韓国がどんな現状分析をもとに、何を求めてどこに向かっているのか心配になる。
こちらの記事もどうぞ。
コメントを残す