アメリカで、メイドカフェが流行らない理由は”奴隷制”にあり?

 

5月10日は「May・10(ド)」ということで、メイドの日。
日本に来る外国人には、メイドカフェというユニークな体験をする人がよくいる。
ドアを開けると、派手な格好をした女の子が「お帰りなさいませご主人様!」と元気に迎えてくれる、この独特なカフェの起源については見方が分かれる。

古い説では明治時代に東京の銀座でオープンした、和装の制服にエプロンをつけた美人さんが客の接待をする『カフェー・ライオン』がその始まりだ。
でも一般的には、2001年に秋葉原で開店した「Cure Maid Café」がメイドカフェの起源とされる。
「東京キャラクターショー1998」でアニメゲームの世界観を再現したレストランが作られて、コスプレをした女の子が飲み物やグッズなどを売ると、その新しいコンセプトが好評をよぶ。
それでその後、ウェイトレスの制服を全員メイド服にして、「癒し」をテーマとした常設の店舗「Cure Maid Café」が秋葉原にオープンして、これがメイドカフェの第一号になった。

 

日本に住んでいるアメリカ人(30代の男性)と話をしていた時に、メイドカフェの話題が出てきた。
まず彼にこの言葉の知名度と、こんな店がアメリカにもあるか聞くと、

「アニメや日本に興味のある一部の人が知ってるだけで、一般的にはナニソレ? だろ。アメリカでメイドカフェは聞いたことないな~。でもアメリカはとても広いし、いろんな興味や価値観を持ってる人がいるから、探せばどこかにはある予感はする」

とのこと。

 

調べてみたらアメリカでは、日本やアニメを紹介するイベントでメイドカフェが設置されることがある。
常設の店舗だと、ニューヨークのチャイナタウンに「メイドカフェ・イン・NY」を発見。
ここは秋葉原のメイドカフェをイメージした店で、軽食やデザートを楽しむことができるらしい。
トリップアドバイザーの口コミにはこう書いてある。

「Maid Cafe NY has food and drink served by girls adorned in traditional maid/lolita maid attire, it’s a fun take on the actual cafe’s that are very popular in akihabra japan」

メイドカフェNYは、伝統的なメイドやロリータメイドの服装をした女の子が食事や飲み物を提供するお店で、秋葉原に実際にある大人気のカフェを楽しくアレンジしている。
でも、ハッキリ分からないけど、どうやらもう閉店してるっぽい。
全体的にみて、アメリカではメイドカフェは”ない”と考えてよさそうだ。

 

閑話休題(かんわきゅうだい;話を戻そう)

まえにメイドカフェについて別のアメリカ人に聞いたところ、客を「マスター(ご主人さま)」と呼ぶのは男尊女卑で屈辱的だから、アメリカでは人気が出ないだろうという。

【萌え文化】日本のメイドカフェを米国、ドイツ人はどう思う?

その点をどう思うかたずねると、彼はこう話す。

「たしかにあの格好や態度は男尊女卑的で、フェミニストが怒り出すのは予想できる。でもそれより、“マスター”という言葉から、奴隷制度を連想して嫌がる人が多いだろうな。いまのアメリカで「Master(ご主人様)」って言葉はイメージが悪いから」

平等・権利・自由が超重視されるいまのアメリカ社会で、それを完全否定する奴隷制度はまさに最悪の闇歴史。
「マスター」という言葉の背後には、かつてそう呼んでいた奴隷がいるから、不平等や人種差別のイメージがある。
とはいえ、焼肉の名人を「Master of barbeque(バーベキュー・マスター)」と呼ぶことはあるし、アメリカ社会でこれはNGワードにはなっていない。
でも基本的には、人に向かって「マスター」と言うことはあまりないらしい。

 

メイドカフェで女の子が「お帰りなさいませご主人様!」と言うシーンは、日本人ならアニメやゲームの世界を連想すると思うのだけど、アメリカには奴隷制度を思い浮かべる人もいるらしい。
どこぞのアメリカ人が「メイドカフェってどんな感じ?」とネットで質問すると、それを知ってるアメリカ人がこう答えた。

「It gives you the same sensation of doing role play or costume playing. You put yourself into a master and slave relationship (which is you’re happily into it).」

そこではロールプレイやコスプレをするのと、同じような感覚を味わうことができる。つまり、自分の身を主人と奴隷の関係に置んだ(この場合は喜んでそうしている)。

 

知人の話では、いまのアメリカでこうした言葉は特に気をつけないといけない。
2020年に黒人男性のジョージ・フロイドが白人の警官に殺害される事件が起こると、黒人に対する差別撤廃を訴える「Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)」運動が全米で燃え広がった。
アメリカ社会はこの BLM運動以降、差別や侮辱に対してすごく敏感になったから、「Master」という言葉も使いづらい空気がある。
だから、このアメリカ人は男尊女卑よりも、奴隷制度や人種差別を連想させる点で、メイドカフェはいまのアメリカで流行ることはないだろうという。
日本の歴史で、市場へ行ったら、牛や豚と同じように人間が売られていたという話は聞いたことない。
前提となる歴史や文化が違うと、出てくる発想もまったく別のものになる。

 

おまけ

アメリカに奴隷がいた時代、奴隷は自分の主人を「ミスター」、その息子を「マスター」と呼んだと、このとき知人から聞いた。
これは初耳学。
この場合のマスターは「~坊ちゃん」といった意味で、ミスターのワンランク下の用語らしい。

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。