【凧の由来】江戸時代に、なんでイカが“タコ”になったのか?

 

コロナ規制がほぼ解除されて、ことしの浜松まつりには255万人が集まった。
集客の目玉のひとつは凧(たこ)あげで、それを見たバングラデシュ人やイギリス人はSNSにこう書きこむ。

・Had a lot of fun seeing the flying kites in the Hamamatsu kite festival.
(浜松まつりの凧あげを見てすごく楽しかった。)
・battle each other with a neighborhood hand made MASSIVE kite.
(地元の人たちが作ったデッカイ凧でバトルをする。)

凧をあらわす英語の「kite」は鳥(タカなどの猛禽類らしい)に由来する言葉で、空を舞う姿が重なるからこれは全人類が納得する。
問題は日本語だ。
「kite(カイト)は日本語でどういうんだ?」と聞く外国人に「タコですが何か?」と答えると、不思議そうな顔をして「チョット待ってくれ。オクトパスと同じ言葉なのか?」とビックリされることがある。

タコが空を飛ぶのは「ちびまる子ちゃん」的なほんわかファンタジー世界での出来事だから、外国人が驚くのやむなし。
「kite」がなんで日本では「タコ」と呼ばれるになったというと、その理由はイカにあると説明すると外国人の困惑はさらに深まる。
でも事実だ。

 

 

約270年にわたって続いた江戸時代は、世界的に見れば戦乱のない本当に平和な時代だった。
古代ローマで200年ほど続いた平和な時代は、パクス・ロマーナ(ローマによる平和)と呼ばれてるから、それに乗っかってパクス・トクガワーナ(徳川の平和)と言われることもある。
「武器よサラバ」の江戸時代には経済が発達したから、庶民にもお金や時間に余裕がでてきて、木と紙で作ったモノを空に上げる「いかのぼり」に子供も大人も熱中した。
*この物体が空でバランスをとれるように、何本か長い紙をくっつけたから“イカ”になったらしい。
三代将軍の徳川家光もいかのぼりをしたという。

 

江戸時代の凧あげ
現代のものよりはイカっぽい。

 

「火事とケンカは江戸の花」という言葉があるほど、江戸の庶民は熱くなりやすい。
みんなが自由にいかのぼりをしていると、そのうち誰がいちばん高いかを競うあうようになるだけで終わらなかった。
いかのぼりがぶつかったことでケンカが発生したり、それが落ちて死傷者が出たり、さらには火のついたいかのぼりが江戸城に落下したするというテロみたいな出来事まで起こる。
となると幕府が「いかのぼり禁止令」を出すのも当然。
でも、それじゃ江戸の庶民を止められない。
「上に政策あれば、下に対策あり」という中国的な発想から、「これはイカじゃなくてタコでございます」と言い出し、同じ物を空へ上げ始めるようになる。
どうしてもそれで遊びたかった庶民が、幕府の禁令を無効化するために考え出した知恵(へ理屈)から「凧」のワードができたという。
このあと「たこのぼり禁止令」が発令されたが民衆はスルー。
幕府もトラブル回避が目的だったから、一線を超えない範囲なら大目に見たのだろう。
ということでイカの代わりだから、漢字は違っても凧はタコを指す。
外国人が狂喜乱舞するから、浜松まつりの凧あげ会場で「タコパ」をしたらいいのに。

 

参考:朝日新聞「イカ禁止令に「これはタコ」 正月遊びにへ理屈あり?
NHKの「チコちゃんに叱られる! 」

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。