台湾人の友だちが日本へやって来て、日本の家庭料理を食べたいと言うから、手ごろな食堂へ彼女を連れて行った。
店に入ってから、「初めて見る食べ物が多いですねー」と言っていた台湾人がこのメニューを見て思わず立ち止まって、二度見どころかガン見する。
南京は中国にある有名な都市だ、OK。
カボチャは野菜で台湾にもある、よし。
でも、「南瓜」なら分かるけど、なんでカボチャが「南京」なのか?
彼女にはその理由がサッパリ分からないから、「え、ええっ?」と目から送られた情報を脳で処理できないでいる。
むかしの日本では、中国の南京から伝わったかどうかにかかわらず、海外からきたモノに「南京」と付けることがあったから、いまでも「南京錠」「南京豆」「南京袋」「南京玉すだれ」といったアイテムにその名残を見ることができる。
カボチャを南京というのも同じ。
そもそもカボチャはカンボジアに由来すると言われるから、これはいろいろデタラメだ。
ネットで調べるとこの「むかし」の範囲は江戸時代~昭和初期とあるから、この「南京習慣」はかなり長い期間、日本にあったことになる。
そんな歴史を知らない中国人にこの写真を見せると、やっぱり台湾人と同じように一時停止する。
「なんで南京なんですか?」という質問は想定内。
この場合は「舶来の」といった意味で、南京は中国で何度も都になった「古都」だったことは日本人も知っていたから、きっと良いイメージでこのワードを使っていたのだろうと、ネットサイトを見せながら説明する。
すると、彼は画面上にあった「南京虫」を見つけてしまう。
これは5~8ミリほどの茶色いシラミだ。
かまれる(血を吸われる)と死ぬほどかゆくなるから、見つけたら迷わず潰すべき人類の敵だ。
寝ている間に襲われるから、英語では「Bed bug」という。
だから、
「カボチャやマメならいいです。でも、害虫に”南京”を付けるのはヒドイですね。なんか日本人は中国をバカにしているようです」
と彼が気分を悪くするのも、これは殺虫剤で駆除する虫であることを考えたら、まあ当然かなと。
しかも、よりによって南京だ。
ここは日中戦争の時に「南京事件」(中国語:南京大屠殺)があったところで、日本軍に30万人が虐殺されたと中国では考えられている。
中国人にとっては、日本との関係史でこれは最悪の出来事だろう。
だから、カギ・豆・袋はいいとしても、この中国人には南京虫だけは受け入れられない。
ネットを見ると、他にもそんな人はいる。
もし嫌いな虫に「東京虫」という名前がつけられていたら、日本人も気分を害するでしょうと中国人のジャーナリトが怒っていた。
いまは人権意識が高まって表現のチェックも厳しくなったから、メディアが下手な言葉を使うとポリコレ棒ですぐに叩かれる。
でも今のところ、南京虫は「支那」(中国)のような NGワードにはなっていない。が、中国人の気持ちに配慮しているのか、「ナンキンムシ」とカタカナ表記にするメディアも多い。
予言しよう。
これはそのうちトコジラミに統一されて日本語から消える。
おまけ
明清時代の街並みが残る街・鳳凰
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