サファリにジャンボ、日本人の身近にあるスワヒリ語

 

7月7日の「七夕」の翌日、東アフリカからやってきたタンザニア人と話していると、彼が「鯖」という日本語の言葉を知っていると言うから、驚いた。

情報が多くて分かりにくい文だから、順を追って説明しよう。

まず、7月8日にタンザニア人と一緒にガストでご飯を食べた。
その時、彼は「コンニチハ」「アリガト」ぐらいの超簡単な日本語しか言えなくて、「サカナ」という言葉も分からないのに、「鯖」という魚の名前を知っていると言うから、ビックリした。
カツオやマグロやサンマではなくて、なんでサバなのか?
彼に理由を聞くと、タンザニアの国語であるスワヒリ語では「7」をサバ(Saba)と言うからだと。
以前、彼が日本人の友人と飲み屋で飲んでいた時に、誰かが「サバ」と言ったのを聞いて、その意味を尋ねたところ、日本には「鯖」という魚がいることを知って、「マジで!」と嬉しくなってすぐに覚えたという。

ただ、彼は「鯖」という魚の名前を記憶しただけで、実物を見ても絶対に分からないという自信を持っている。
日本人からすると、スワヒリ語の「7」はとても覚えやすいが、その知識をイヤミなく披露する機会を見つけるのはかなりハード。

さて、なんで彼が鯖の話をしたのかというと、7月7日は日本で「七夕」という特別な日だとボクが言ったからだ。
彼はその日に反応し、7月7日はスワヒリ語で「サバサバ」と呼ばれていて、この日はタンザニアの祝日で「スワヒリ語の日」とされていると話す。
その流れから、彼が「鯖」の知識を披露した。
「サバサバ」というと、日本語では物事にこだわらないさっぱりした態度を意味する。
その時かかえていた嫌なことをすべて忘れる「サバサバの日」なら、日本にもあっていい。

ここまで読めば、スワヒリ語の「7(Saba)」はもう覚えただろう。
ついでに、日本人にとって身近なスワヒリ語も確認してみよう。

 

・サファリ

静岡県の「富士サファリパーク」や大分県の「アフリカンサファリ」のように、動物を野生に近い状態で見ることができる施設では、「サファリ」という言葉がよく使われる。
サファリ(Safari)とはスワヒリ語で「旅行」を意味し、さらにそのルーツをたどると同じ意味のアラビア語につながる。
そもそもスワヒリとは「海外」を意味するアラビア語で、スワヒリ語のボキャブラリーの5割はアラビア語に由来すると言われている。

「サファリ」という言葉は、ジープに乗って広大な土地を走り、ライオン、ゾウ、サイ、キリンなどの野生動物をリアル&ライブに見るツアーを指していて、日本人が想像するアフリカの代表的なイメージがこれだ。
タンザニア人の知人の話によると、サファリの料金はかなり高いから、これは主に外国人観光客が楽しむアクティビティで、現地の人にはほとんど縁がない。
ただ、彼がかつて自然保護地域内にある工場で働いていた時、マイクロバスで工場に向かう途中、たまにキリンやサイが走っているのを見かけたと言う。
やっぱりアフリカの朝の出勤風景は、日本人の常識からするとアニメの世界だ。

また、アイフォンにあるウェブブラウザは「Safari」という。
サファリの名称が選ばれた理由は、ユーザーがまだ見ぬ新しい世界に出会ったり、思わぬお宝(情報)を手に入れたりするといった、サファリのようなワクワク感を意識したからだろう。
「Internet Explorer」というブラウザの Explorerとは「探検者、冒険家」のことだから、意味合いは同じだ。

 

・ジャンボ

ジャンボジェット機やジャンボ鶴田(知ってる人だけでいい)で有名な「ジャンボ」も、実はスワヒリ語だ。
日本人が使う「ジャンボ」は、スワヒリ語に由来する英語で「巨大な、ばかでかい」といった意味がある。
でも、本来のスワヒリ語では、ジャンボは伝統的なあいさつの言葉で「こんにちは」の意味になる。
最近のタンザニアの若者は、「やあ、調子はどう?」という意味で「マンボ(Mambo)」と言うことが多いらしい。
「ジャンボ」や「マンボ」は日本人の好きそうな語感だから、タンザニアやケニヤへ行った時だけでなく、友達同士のメールでも使えるかも。

「ジャンボ」が英語で「とんでもなくデカい」という意味になったのは、19世紀後半に欧米で有名になったアフリカゾウの「ジャンボ」の影響だ。
仏領スーダン(現在のマリ共和国)から巨大なゾウがフランスへ運ばれ、パリの動物園で飼育された後、1865年にロンドンの動物園へと移された。
その動物園の飼育係が、スワヒリ語のあいさつ「jambo」と酋長を意味する「Jumbe」を組み合わせ、「ジャンボ(Jumbo)」と名付けたという。
*「a」と「u」が違うから、「こんにちは」のあいさつがそのままゾウの名前になったわけではない。

このゾウは後にサーカスへ売られ、サーカスの宣伝活動によってジャンボには「巨大」の意味が付けられて、人々の間に定着した。
ジャンボは1885年にカナダで機関車に衝突されて、この世を去る。
そんなジャンボの生涯がインスピレーションとなり、ディズニー映画『ダンボ』が制作された。

 

サーカスのポスター

 

象のジャンボ (1882年ごろ)

 

サファリとジャンボの他にも、日本人の身近なところにスワヒリ語はある。
シロアリ駆除で有名な「アサンテ」という会社の名前は、フランス語の「sante(健康)」に「a」を付けたもので、同時にスワヒリ語の「アサンテ(ありがとう)」も兼ねている。
この名前には、お客様には感謝の気持ちで接しようという気持ちが込められているらしい。

もし高校で世界史を学んでいれば、1905年に東アフリカで起きた「マジマジ反乱」を教科書で見て「マジ?」と思っただろう。
スワヒリ語の「Maji」は水を指す。
この反乱では、呪術師から「この水を飲めば、ドイツ軍の弾丸が液体に変わる」という不思議な水(マジ)を与えられ、多くの人々が「ヒャッハー! これで無敵だぜ!」と思って蜂起したら、ドイツ軍に虐殺されたでござる。
また、唐辛子を表す「ピリピリ(piripiri)」も日本人には覚えやすい。

さて、これでどのぐらいのスワヒリ語を覚えただろうか?
タンザニア人やケニヤ人に会ったら、後先考えずに「ジャンボ」や「マンボ」と声をかけてみよう。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。